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インドの風向きが変わった、性的暴行事件とは

  • 2019年11月1日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 インドの国家犯罪統計局によると、2011年に発生した女性の犯罪被害は、殺人、レイプ、誘拐、性的嫌がらせなどを含め22万8650件にのぼった。同年行われた国際的な調査では、インドはアフガニスタン、コンゴ民主共和国、パキスタンに次いで、世界で4番目に女性にとって危険な国と評価された。

 公共の場における女性たちへの対応は、長年の懸案となっていた。しかし、インドで女性たちがさらされる危険を容認する考えが崩れるきっかけが訪れた。それは、ジョティ・シン(通称ニルバヤー)の事件だ。

 当時大学生だった彼女の名が世界に知れ渡ったのは2012年。民営バスの車内で酒に酔った男6人に集団レイプされた揚げ句、鉄の棒で性的暴行を受けて車外に放り出され、後に死亡した。逮捕された成人の加害者は有罪となり、死刑判決を受けた。レイプ事件の4分の1しか有罪判決に至らないこの国にあって、異例の判決だった。インド社会の反応も大きかった。女性たちが連日、路上で抗議活動を行い、「恐怖のない自由を!」と叫んだ。おそらくそれは、変化が始まった瞬間だった。

 地方や国の機関が、女性向けの新たな安全対策に予算をつぎ込むようになった。2013年には、安全対策を推進するため、当時の政権が約160億円を確保。現政権はその3倍近い金額を投じ、デリーを含む8都市を、より明るく、安全で、女性にやさしい場所に変えようとしている。

 すでに始動している対策もある。現在、デリーの警察は女性向けに10日間の護身術講座を無料で開講し、受講者が大勢いる場合は市内各地に出向く。南部のケーララ州では女性警官のみの部隊が編成され、街をパトロールしたり、女性たちからの緊急通報に対応したりしている。

インドにもある女性専用車両

 都市の公共交通機関において、ピンクがさまざまな女性専用サービスを示す色となった。ピンクの三輪タクシーは女性客専用だし、地下鉄には女性専用車が設けられた。駅の保安検査場には女性用の列があり、故意に体を押しつけてくるような男性に悩まされることもない。

 正直なところ、こうした状況に違和感があることも確かだ。政府に男女を分離してもらわなければ、女性は公共の場で男性と同じように快適に過ごすことができないのだろうか?

 だが一方で、インド女性がSNSでハッシュタグを使った社会運動を展開している姿に元気づけられもする。#TakeBackTheNight(夜を取り返せ)では、勇気ある女性たちが連携し、夜道を歩いた。#MeetToSleep(一緒に眠ろう)では2018年、安全に野宿をしようと、インド各地の女性600人が団結した(インドの男性は夜、戸外で寝ることを好むのだ)。

※ナショナル ジオグラフィック11月号「インド 安全に暮らす権利」では、2012年に起きた凄惨な暴行事件を機に多くの女性たちが声を上げ、変化を起こしてきた実情に迫ります。

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