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嵐が引き起こす地震「ストームクエイク」を発見

  • 2019年10月18日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 未知の地震現象「ストームクエイク(stormquake)」が発見された。直訳すれば「嵐地震」だ。10月14日付けで地球物理学の専門誌「Geophysical Research Letters」に掲載された論文によると、巨大な嵐の猛烈なエネルギーから地震波のパルスが生じ、それが数千kmにわたって大陸中に伝わる可能性があるという。

「彼らの発見には驚きました」と、今回の研究に関わっていない米コロンビア大学の地震学者ヨーラン・エクストローム氏は言う。今回、研究チームは個々のストームクエイクが発する「爆発的な揺れ」を個別に特定したほか、それらを遡って沖合の発生源を突き止めることにも成功した。

 世界の地震計ネットワークは成長を続けており、近年は、新しい手法でとらえられた振動を分類する研究が進められている。今回の研究も、そうした試みの1つである。得られた情報は、地球の内部構造の解明から海洋や氷の変動、ひいては気候変動の監視まで、科学者たちが地球の理解を深めるのに役立つはずだ。

 米フロリダ州立大学の地震学者で今回の研究チームを率いたウェンユァン・ファン氏は、従来、この情報の多くは地震記録のノイズとして捨てられていたが、科学者たちは今、こうした「ノイズ」が役立つのではないかと考えている。

「これまでは、どこで何を探せばよいのか、わかっていなかったのです」と彼は言う。

異常な振動が現れてきた

 ストームクエイクが発見されたのは偶然だった。2018年の夏、ファン氏らは超低周波地震を研究する手法を開発していた。超低周波地震は、ふつう地震と聞いて想像するような、地球の表面を引き裂く突然の激しい揺れとは違う、揺れの周期が非常に長い地震である。人間は超低周波地震の揺れには気づかないが、地震学者は高感度の地震計を使って、その地震波を特定できる。

「地震計は地面にくっつけた小さな耳のようなものです」と、米国の大学間地震学研究連合の地震地質学者ウェンディー・ボーホン氏は説明する。同氏は今回の研究には関与していない。地震計は、熱狂したスポーツファンがスタジアムで飛び跳ねたときの揺れや、頭上を通過する航空機が引き起こす振動から、遠くの地震の揺れまで、あらゆる振動を記録できる。

 しかし、超低周波地震は長距離にわたって追跡するのが難しいため、ファン氏のチームは、狭い地域からのシグナルをパズルのように繋ぎ合わせて、こうした地震を追跡する手法を開発した。ところがこの作業中に、彼らが追跡している地震に似ているが厳密には異なる、異常な振動が現れてきた。

次ページ:謎の振動には季節性があった

 驚いたことに、この振動には季節性があり、5月から8月にかけては一度も発生していなかった。しかし、地殻変動で発生する地震は、通常は季節の移り変わりとは無関係だ。さらに、奇妙な振動は北米大陸の東西の海岸線から広がっていた。通常の地震は、西海岸にクモの巣状に走る断層に沿って発生するが、東海岸には震源になるような断層はほとんどない。

 不思議に思ったファン氏らは、モデルを使って何が起きているかを探ったところ、ある関連に気が付いた。こうした振動の多くは、大型の嵐やハリケーンと同時に発生していたのだ。研究チームは、北米大陸の地震観測プログラムEarthScopeの一環として米国全土に数百台の地震計を設置しているUSArrayのデータを分析したところ、2006年から2015年までの間に1万4077回のストームクエイクを発見した。

ストームクエイクはどうやって起きるのか

 しかし、大きくて強烈な嵐が必ずしもストームクエイクを引き起こすわけではない。例えば、一部の地域で秒速約40mの風を記録したハリケーン「サンディー」の際にはシグナルは記録されなかった。ストームクエイクを引き起こすには、特定の地形が関係しているようだ。

 例えば、ストームクエイクは大陸棚(大陸周辺の浅い海底)の幅の広いところで発生している。ファン氏は、この地形が波を変化させるのだろうと説明する。風が作り出す海の波は、ストームクエイクの20〜50ヘルツより高い周波数のシグナルを生成する。けれども幅の広い大陸棚と波との相互作用によって、より波長が長く、周波数の低い波ができるのだ。

 ストームクエイクは、海底が小さく隆起した堆(たい)の周辺でしか発生しないようだ。堆はエネルギーの集中を引き起こし、波からの圧力が海底に伝わると、爆発的な揺れが生じるのだ。ファン氏はこれを、ハンマーで海を叩くようなものだと説明する。

 しかし、この論文の査読に携わったエクストローム氏は、不連続なエネルギーのパルスが生じるしくみを詳細に解明するには、さらなる研究が必要だと言う。

その先にあるもの

 ファン氏らは、今後も奇妙な振動の背景にある機構を追いかけるつもりだ。研究が世に出た今、ボーホン氏は、ほかの分野の科学者がこの発見をさらに発展させてくれることを期待している。

「この論文は、地球の成り立ちに関する新しい情報を積み上げるための基礎になります」と彼女は言う。

 ファン氏らは、ストームクエイクが海洋力学や地球構造の理解に役立つことを願っている。科学者はすでに地球の内部を伝わる地震波を追跡して「地球のX線検査」を行っている。

 米スクリプス海洋研究所の地球物理学者ジョナサン・バーガー氏は、ストームクエイクで見られるような低周波の波は、地球内部にはっきりしたシグナルを生じさせることはないとしながらも、ほとんど地震が起こらないため記録がないニューイングランドなどの地域のデータの穴を埋めるのには役立つだろうと言う。

 ほかの応用の方法もあるだろう。「科学者はクリエイティブです」とボーホン氏は言う。「どこかの若い学生が、この研究をどのように利用してみせるか、誰にも想像できません」

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