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翼竜の新種を発見、名前はフェロドラコ(鉄の竜)

  • 2019年10月7日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 2017年のある秋の日、オーストラリア北東部の牧場で、泥の中から異様なものが突き出しているのが見つかった。まだら模様の数個の茶色い骨だった。

 この牧場では、以前にも竜脚類という、首の長い大型恐竜の化石が出土していた。それに比べると、今回見つかった化石はだいぶ小さかった。

「発見者のボブ・エリオット氏はすぐに、これが以前と違う、まったく新しいものだと気づきました」と、オーストラリア恐竜時代自然史博物館のアデル・ペントランド研究員は言う。

 ペントランド氏のチームはさらに研究を進め、エリオット氏が発見した化石が翼竜のものであることを立証、10月3日付けで科学誌『Scientific Reports』に論文を発表した。この化石は、オーストラリアで発見された翼竜の化石の中では最もよく揃っているものだった。

アイアン・ドラゴン

 とはいえ、翼竜の骨格のうち、今回見つかったのは上顎と下顎の一部、頸椎の一部の骨が5点、両方の翼の一部、多数の歯だけで、全身骨格にはほど遠い。

 しかし、オーストラリアで翼竜が発見されるのは非常にまれで、これらの化石の保存状態は例外的なほど良好だ。今回の翼竜はフェロドラコ・レントーニ(Ferrodraco lentoni)と名付けられた。フェロドラコという名は、鉄と竜を意味するラテン語の単語を組み合わせたものだ。

「翼竜の空間的・時間的な分布に関する私たちの知識の穴を埋める大発見です」と、英レスター大学の古生物学者デビッド・アンウィン氏は語る。

 論文によると、今回の翼竜が見つかった地層の年代は、以前の研究からおよそ9600万年前という。今回の翼竜や近縁の仲間を含むアンハングエリア(Anhangueria)類は、9400万年前までに絶滅したと考えられている。

 オーストラリアでは近年、オパール化した恐竜化石をはじめ、興味深い化石の発見が相次いでいる。詳しい年代はまだわかっていないものの、今回のフェロドラコもそうした発見に連なる成果だ。

「今後、オーストラリアから面白い化石がどんどん出土すると思います。すでに恐竜は出はじめています。翼竜もそれに続くでしょう」と、英ロンドン大学クイーン・メアリー校の古生物学者デイブ・ホーン氏は言う。

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「鉄の竜」になった理由

 空飛ぶ爬虫類である翼竜は、2億2800万〜6600万年前に地球上の多くの地域の空を飛んでいた。その体はかなり大きくなり、翼を広げると9mほどになるものもいた。フェロドラコはやや控えめな大きさで、翼開長は4mほどだったようだ。

 翼竜の骨は、空にとどまるために軽量で中空になっており、化石になっても、圧力がかかるとたやすく崩れたり砕けたりしてしまう。そのため、これまでに発見された翼竜の化石は驚くほど少なく、特にオーストラリアではほとんど見つかっていなかった。

「全部合わせてもハンドバッグ1つに入るくらいだったのです」とアンウィン氏は言う。

 今回のフェロドラコの化石は、鉄分を多く含む岩石の中から見つかり、このことが良好な保存状態につながった。「鉄の竜」を意味するフェロドラコという属名もこれに由来する。

 ペントランド氏は、翼竜の死後、鉄分を多く含む液体が死骸に染み込み、のちにそれが硬い鉱物となったおかげで、立体的な形状が保存されたのだろうと説明する。アンウィン氏は、保存状態が良いので翼竜の飛び方などを解明するのに役立つだろうと期待している。

意外なところからやってきた?

 フェロドラコは、歯の大きさのパターンによって、近縁のアンハングエリア類の翼竜と区別できる。小さな差異に思われるかもしれないが、アンハングエリア類の翼竜は互いによく似ていて、数少ない違いの1つが「歯」なのだとホーン氏は言う。

 骨格が似ているのは、空を飛ぶのに必要な生体力学的な条件によるものかもしれない。「空を飛ぼうと思ったら、その方法は非常に限られているのです」と、ホーン氏は語る。

 ほかの翼竜と同じく、フェロドラコは飛行能力に優れていたと思われる。その根拠は類縁関係にあると、ペントランド氏は言う。この時代のオーストラリアにいた竜脚類をはじめとする陸上動物たちは、多くが南米で発見された動物たちと近縁である。しかしフェロドラコは、現在の英国で発見された翼竜により近いのだ。

「太古の英国の大地をのし歩いていた大型の恐竜がオーストラリアに行くのは困難です」とホーン氏は言う。「けれども半日で数百kmも飛べるような動物だったら、数十万年の間に英国からオーストラリアまで広がったとしても不思議はありません」

 もしかすると、フェロドラコは最も遅くまで生き残った翼竜だったかもしれない。過去の研究から、この化石が発見された地層の上には、約9400万年前以降の動物の化石を大量に含む層がのっている。翼竜がこの層の中に包まれていたとしたら、9000万年前まで生き残っていた可能性があるとペントランド氏は言う。

 ほかのアンハングエリア類は、環境が不安定になった時期に衰退し、9400万年前には絶滅していたと考えられている。彼らが姿を消した理由ははっきりしないが、食物に関わる問題があったのかもしれない。アンハングエリア類は魚を主食にしていたが、ちょうどその頃、海水温が上昇して酸素濃度が低下し、多くの魚種が絶滅しているのだ。

「海で大きな異変が起きていたのです」とアンウィン氏。

 フェロドラコはアンハングエリア類の中では新しい時代に出現した翼竜だったかもしれないが、絶滅への運命から逃れられたわけではなかったと、アンウィン氏は強調する。一方、ペントランド氏は、結論を出すのはまだ早く、まずはフェロドラコの骨が出土した場所の年代測定を行いたいとしている。

 ペントランド氏にとって、フェロドラコの発見にはさらに大きい意味がある。標本が展示されることになるオーストラリア恐竜時代自然史博物館は、世界中の人々をウィントンの町に引き付けている。今回の発見で、訪れる人の数はさらに増えるだろう。

「この町に人を呼べること、自分なりのやり方でコミュニティーの役に立てることは、本当に光栄です」

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