サイト内
ウェブ

トラ寺院から救出のトラ86頭、政府の保護下で死亡

  • 2019年9月18日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 タイの悪名高い「タイガー・テンプル(トラ寺院)」から147頭のトラが保護されて3年、すでに86頭が死亡していることが明らかになった。タイ政府が発表した公式な死因はウイルス疾患。近親交配も遠因になっているという。

 ワットパールアンダブアヤンナサンパヌー仏教寺院という正式名称を持つタイガー・テンプルはかつて人気の観光スポットで、トラと一緒に写真を撮ったり、トラの子供にミルクを飲ませたりできた。しかし、ナショナル ジオグラフィックの独占報道やオーストラリアの自然保護NPO「Cee4Life」の調査によって、動物虐待、違法取引を目的とした「スピード繁殖」などが明るみに出た。」)

 東南アジアには、トラを育てて売るいわゆる「トラ牧場」が何百もあったが、これらの報告をきっかけに、タイガー・テンプルを閉鎖すべきだという世論の圧力が高まった。そして2016年、バンコクの約160キロ西にあるこの寺院から147頭のトラが押収され、政府の保護下に置かれた。

苦しみながら死んだトラたち

 Cee4Lifeの創設者の一人であるシベル・フォックスクロフト氏は修士論文を書くため、2007年にタイガー・テンプルの調査を開始。その後、ナショナル ジオグラフィックと連携し、2016年に報告書を発表した。

 フォックスクロフト氏は、86頭ものトラが命を落としたと知って落胆したが、驚きはしなかったと述べている。フォックスクロフト氏はタイガー・テンプルを訪れたとき、何らかの病気による重度の神経障害の兆候をじかに確認していた。そのため、トラたちが病気になったのは政府の施設ではなくタイガー・テンプルだと考えている。

 フォックスクロフト氏はCee4Lifeのウェブサイトに発表した声明の中で、「メク・ジュニアというトラは2015年、すでに重い症状でした。壁に向かって歩いているとき、後ろ脚の力が弱く、時折、方向感覚を失っていました」と振り返っている。

次ページ:保護下の飼育環境が劣悪だった?

「私はメク・ジュニアの状況を公にして、彼を助けてほしいとタイガー・テンプルに懇願しましたが、彼らは取り合わず、彼は元気だと言いました。しかし、元気とは程遠い状況で、結局、苦しみながら死んでいきました」

「もしタイガー・テンプルが存続していたら、トラたちは押収されることなく、やはり同じ病気で命を落としたでしょう。彼らは死体の皮をはぎ、販売していたはずです」」)

劣悪な環境?

 タイガー・テンプルのトラたちは2016年に押収されてから、タイ政府の管轄下にある2カ所の野生生物保護区で暮らしている。タイ国立公園野生動植物保全局はメディア向けに発表した声明の中で、トラたちの死因はウイルス性の呼吸器疾患である咽頭まひで、近親交配による免疫機能の低下が病気を重症化させた可能性が高いと述べている。また、犬ジステンパーの合併症が見られる個体もいた。犬ジステンパーはイヌだけでなくトラにも感染する。

 しかし、タイガー・テンプルの飼育係アティタット・スリマニー氏はロイターの取材に対し、トラたちの死因は近親交配でも寺院での感染でもなく、おりが小さすぎるなど、現在の劣悪な飼育環境が原因だと主張している。

 ボーン・フリー財団の代表ウィル・トラバース氏は「タイガー・テンプルから救出されたトラの半分以上がわずか数年で死亡したという事実は、率直に言うと、スキャンダラス以外の何ものでもありません」と批判する。ボーン・フリー財団はすべての野生動物を自然に帰すべきだという立場を取っている。「首相の監督下で、第三者による徹底的な調査を実施し、調査結果を公表すべきだと思います」

 タイ政府は声明を発表し、今後も残された61頭の飼育を継続すると述べている。さらに、トラたちはストレス軽減の工夫を施した安全な環境で暮らしており、獣医師による定期検診も行っていると強調している。トラたちをほかの施設に移す予定があるかどうかについての言及はなかった。

あわせて読みたい

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
(C) 2019 日経ナショナル ジオグラフィック社