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南極で巨大首長竜の化石を発見、グループ最重量

  • 2019年6月12日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 南極半島に近い小さな島で、巨大な首長竜の化石が発掘された。エラスモサウルスの仲間で、このグループで史上最重量という。

 何十年も悪天候と格闘したすえに、ようやく掘り出された今回のエラスモサウルスは、生きていたときには15トン近くの体重があったと見られる。しかも、南極で発見された古代の爬虫類では、最も完全な形に近いものの1つだ。5月17日付けの学術誌「Cretaceous Research」に研究成果が発表された。

 エラスモサウルス科は首長竜の1グループ。首長竜は恐竜時代の海に暮らした爬虫類で、一般に、キリンのような首とヘビのような頭、体には4つのヒレをもつ。

 調査チームは、今回新しく発見された化石はアリストネクテス属ではないかと考えている。この属は、エラスモサウルス科の中でもかなりの変わり者として扱われてきた。というのも、米国で発見されているエラスモサウルスとあまりに異なるからだ。アリストネクテス属は南半球で発見されており、短めの首と、大きめの頭骨が特徴だ。

「アリストネクテスがエラスモサウルスなのかそうでないのか……長年、謎でした」と話すのは、今回の論文の著者で、アルゼンチン国立科学技術研究会議(CONICET)の古生物学者、ホセ・オゴルマン氏だ。同氏はブエノスアイレス近郊のラプラタ博物館を拠点としている。「誰にもわからない、変わった首長竜だったんです」

 その答えを知るためには、もっと完全な標本が必要だった。米国パデュー大学のウィリアム・ジンスマイスター氏は、その候補となる化石を1989年に発見していた。南極半島北端のやや南に位置するシーモア島に遠征したときのことだ。だが彼には当時、その化石を発掘するための資金がなかった。そこで、アルゼンチンの研究者たちに発見を知らせたのだ。

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南極での発掘作業は難航

 知らせを受けたアルゼンチン南極研究所は、毎夏行っている遠征調査の一環として発掘を開始した。しかし、天候や物資調達の困難ゆえに、作業は遅々として進まなかった。

 化石発見当時5歳だったオゴルマン氏は、2012年に初めてこの遠征に参加した。作業は1月から2月上旬の数週間しか行うことができず、しかも気象状況や資金不足のせいで発掘がまったく行われない年もあった。作業ができたとしても、発掘するには凍った土が太陽の熱で解けるまで待たなければならず、なんとか掘り出した化石はすべて、数キロ離れたアルゼンチンの観測基地であるマランビオ基地までヘリコプターで運ぶ必要があった。

「問題の1つは天候です。天候はすべてに影響します。ある日作業が可能だったとしても、翌日には吹雪でまったくできなかったりします」とオゴルマン氏は話す。

「通常よりも多くの努力と物資輸送が必要ですし、そもそもこのような化石を発見するのには運も必要です」と同意するのは、オランダ、ユトレヒト大学の古脊椎生物学者、アンヌ・シュルプ氏だ。同氏は今回の調査には関わっていない。

15トン、12メートルの巨大さ

 発掘は2017年にようやく完了し、全身の大部分の骨が得られた。「頭骨はないのですが、多くのパーツを得ることができました」とオゴルマン氏は話す。

 オゴルマン氏らの論文によると、まだ名前のないこのエラスモサウルスは、重さが11.8〜14.8トンほど、頭から尾の先までの長さが12メートルほどあったと推定されている。これまでにも推定11トンのアリストネクテス化石は見つかっていたが、他のエラスモサウルスの多くは5トン程度だ。

「これは巨大ですね!」と、骨の写真を見ながらシュルプ氏が言う。

 この研究を高く評価しているシュルプ氏は、著者たちが拙速な結論を下さなかった点もよかったと考えている。オゴルマン氏は、この種が確実にアリストネクテス属のものであると言うことすら躊躇している。今後出てくる証拠によっては、完全に異なる属に分類される可能性もあるからだ。

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大量絶滅寸前まで繁栄していた

 シュルプ氏はオランダで発見された首長竜の調査をしたことがあるが、同氏によると、南半球の首長竜は相当変わっているのだという。今回の新しい標本でもう一つ興味深い点は、この個体が生きていたのが白亜紀の終わり近くだったということだ。およそ6600万年前に鳥類以外の恐竜たちが大量絶滅を迎えたその時から、ほんの3万年前にあたる。

 これほど大きな生き物の腹を満たすには、たくさんの海生生物が必要だったはずだ。つまり、彼らが白亜紀の終わり頃まで栄えていたということは、突然の大絶滅が起きるまで、少なくとも海の中では多くの生き物たちが繁栄していたということを示している。

「南極にも、たくさんのエラスモサウルスが幸せに暮らしていたわけです」とシュルプ氏は言う。今回の種が独特な形をしていることは、首長竜が存在していた時代の終わり近くまで、特殊化が起こっていたことを示している。「白亜紀の終盤にかけて、首長竜が食物レパートリーを広げていっていたことが強く示唆されます」とシュルプ氏は話す。

 この生物が具体的に何を食べていたのかは、胃の内容物の化石などが見つからない限りはわからない。だがオゴルマン氏が言うには、歯の小ささからして、甲殻類や小型の魚を食べていた可能性が高い。数十年かけて掘り出された骨の調査は、まだ始まったばかりだ。博物館に収められた今、この古代生物の標本を使ってできる研究はたくさんある、とオゴルマン氏は意気込む。

 シュルプ氏は、今回の研究が首長竜に関する知見を前に進めたと賞賛し、アルゼンチンの研究者たちがまた南極で新しい化石を発見するのを期待している。「南半球は、あるいは少なくとも南半球の首長竜は、もっと注目を集めてもいいと思います」

 当のオゴルマン氏は、一連の経験を興奮気味に振り返る。「とても寒かったですが、とてもクールでもありました。冒険でしたね」

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