サイト内
ウェブ

【動画】ブラジルの漁師手伝うイルカ 独自の文化か

  • 2019年4月15日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 ブラジル南部のラグナでは、イルカも漁師も好物が同じだ。どちらも丸々太った銀色のボラを捕まえて食べる。ただし、競い合うのではない。イルカと漁師は、協力関係を結んでいる。

 ハンドウイルカがボラの群れを海岸に追い込む。漁師たちは、網を持って一列に並び、腰まで水に浸かって待ち構えている。水が濁っていて魚が見えないため、漁師たちはイルカの動きを注視する。

 イルカが頭か尾を水面に打ち付けると、漁師たちはそれを合図に網を投げる。すると、ボラの群れがバラバラになり、イルカは群れから外れた魚を捕まえることができる。

 この互恵関係は、科学者たちの間では1980年代から知られていた。約60頭いるイルカのうち、漁師に協力するのは数頭だ。だが、漁の助っ人になるイルカは、他の助っ人イルカと一緒に過ごす傾向があることもわかっていた。

 しかし、それはなぜだろうか。ブラジル、サンタカタリーナ連邦大学の生物学者マウリシオ・カントール氏と同僚たちは、その理由を知りたいと思った。

「みんなで同じレストランに行くのは、そこの料理が好きだからでしょうか? それとも、料理だけでなく、一緒に行く仲間が好きだからでしょうか?」

 2019年4月10日付けで学術誌「Biology Letters」に発表されたカントール氏らの論文は、後者を示唆している。漁師に協力するイルカたちの間には、強い社会的な結びつきがあるというのだ。

同じ行動をする仲間と親しくなる

 カントール氏らはブラジル南部の沿岸にあるラグーン(潟湖:せきこ)を船で回り、遭遇したイルカを写真に撮って、個体を特定した。

次ページ:文化といえる? 道具を使うイルカの動画も

「漁師に協力しているときに限らず、彼らは一緒にいることを好みます」と、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもあるカントール氏は話す。

 例えば、助っ人イルカたちは一緒に移動したり、楽しそうに転げ回ったり、並んで昼寝したりしていた。

文化と呼ぶことはできるか?

 米ワシントンD.C.のジョージタウン大学に所属するイルカの専門家ジャネット・マン氏は、これを一種の文化現象だと考えている。マン氏は今回の研究に参加していない。

 文化の定義には議論もあるが、「人類学者と心理学者が同意する2つの基準があります。まず、その行動が社会的に学習されたものであること。そして、その行動によって他のグループと区別できることです」とマン氏は言う。

 マン氏はオーストラリアのシャーク湾に暮らすハンドウイルカを研究している。そこにいる一部のイルカは、口吻を守るために海綿をくわえて海底で餌を探す。研究の結果、娘イルカは母親の行動を見てそれを学んでいることと、海綿を使うイルカ同士でグループを形成していることがわかった。つまり、そのイルカたちの間では伝統文化になっているということだ。

 それと同じように、カントール氏らの研究も、助っ人イルカ同士が好んで付き合っていることを示している。「彼らが付き合っているのは、行動に共通点があるためです」とマン氏は分析する。これで、文化と呼ぶための条件を1つ満たしたことになる。

 助っ人イルカが行動を仲間から学習しているかどうかはまだわからない。だがカントール氏は、きっとそうではないかと予想している。

「社会的学習によって、この漁の戦術が彼らの間に浸透したというのが、最も広く受け入れられている仮説です」とカントール氏は言う。

「イルカはとても社会的な動物であるだけでなく、学習能力も並外れていますから」

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
(C) 2019 日経ナショナル ジオグラフィック社