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ピューマの食べ残しに甲虫215種、生態系を構築

  • 2019年3月13日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 ピューマが、大きなエルク(アメリカアカシカ)を仕留めた。そこは「死」の現場であると同時に、多様な生命を育む場にもなる。

 ピューマはおとなでも体重50キロほど。体重300キロにもなるエルクの肉をすべて平らげることなどできない。2018年11月に学術誌「Oecologia」に発表された研究によると、その食べ残しには、驚くほど多様な生物が集まってくるという。

 研究チームは2016年、米国イエローストーンで、ピューマが仕留めた獲物に集まってくる甲虫を調査した。食べ残しとなった18頭の死骸のそばに落とし穴式トラップをしかけ、集まってくる甲虫を採集。そこから20メートルほど離れた場所で集めた虫と比較した。

 わかったのは、驚くべき事実だ。

 死骸がない場所で集まった甲虫が4000匹強だったのに対し、死骸のそばでは合計2万匹を超える甲虫が集まった。その半数以上はシデムシ科の1種(northern carrion beetle)だったが、全部で8つの科にまたがる215種もの甲虫が見つかった。

 今回の論文の共著者であるマーク・エルブロック氏は、「こういった場所で、どれほど複雑なことが起こっているのかがよくわかります。まったく知らなかった種を含め、あらゆる虫が見つかりました」と語る。エルブロック氏は、野生のネコ科動物の保護団体「パンセラ」でピューマの保護を統括しており、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもある。

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意外な生物も

 ピューマの獲物をテーマにした研究では、昆虫より大きい動物が取り上げられることが多い。エルブロック氏による以前の研究も、39種の鳥類や哺乳類が死骸に群れていたことを明らかにしている。その中には、アメリカグマ、シロアシネズミ、ステラーカケスといった動物が含まれていた。

 科学者たちは今回の研究では、甲虫にスポットを当てることにした。小さな世界で何が起こっているのかを知るには、捕まえやすく特定もしやすい甲虫がちょうどいいからだ。

 興味深いのは、主に植物を食べると考えられているゾウムシ科の甲虫が見つかったことだ。エルクやシカの胃の中にあるものをあさるためにやってくるのかもしれない。

 ナメクジやカタツムリばかり食べる甲虫も見つかった。このような虫は、死骸の下から大量に見つかることが多い。それだけではない。エルブロック氏は、「暖かい時期なら、死骸がウジに埋もれていたかもしれません」と言う。

 こういったことはいずれも、死骸がたんなる食料ではないことを物語っている。そこには、無脊椎動物の生態系が丸ごとできているのだ。

「死骸は虫たちのすみかなのです。そこで繁殖相手を見つけたり、子どもを育てたり、捕食者から隠れたりしています」とエルブロック氏は話す。

ピューマは生態系のエンジニア

 ここから、おもしろいことがわかる。

 ピューマの獲物が甲虫のすみかになるなら、ピューマをそろそろ「生態系エンジニア」と考えてもいいかもしれない。通常、生態系エンジニアは、ビーバーやシロアリ、ゾウなど、環境を物理的に変えられる動物を指す。

 米デューク大学の生物学者で、数十年にわたって生態系エンジニアについて研究しているジャスティン・ライト氏は、この研究の結論は妥当だと述べている。ただしライト氏は、どの種が生態系エンジニアでどの種がそうでないかを区別することに、今はさほどこだわっていない。

 それよりも、あまり関係がないと思われる種同士の関係を紐解き続けることの方が重要だと考えている。これはまさに、今回の研究で明らかになったことでもある。

 また、ライト氏は、何らかの理由でピューマが消えてしまったら、甲虫はどうなってしまうのかと気をもんでいる。いずれにしろ、エルクやシカ、そのほかの大型動物はいつか死ぬだろうって?

 だが、甲虫にとってピューマは特別な存在だ。その理由を、エルブロック氏はこう説明する。大型の有蹄類は当然ながら年間を通していつでも死ぬことがあるが、もっとも多いのは冬だ。虫にとってはせっかくの食料なのに、冬は虫がもっとも少ない季節である。それに、ピューマが残す獲物は虫にとって申し分ない。クマのように余すところなく平らげることも、オオカミのようにバラバラにすることもピューマはしないからだ。

 エルブロック氏は、ピューマに関する意識を変えたいと言う。「ピューマはたくさんのシカを殺すので、恐ろしい動物だと言えるかもしれません。しかし、今回の研究結果で明らかになった通り、生物多様性を支えているすばらしい動物だとも言えるのです」

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