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今後80年で海の色が変わる 気候変動から予測

  • 2019年2月7日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 このまま行けば、2100年の海は現在と違った色になるだろう――2019年2月4日、学術誌『Nature Communications』に発表された論文で示された結論だ。

 この研究は、海水温の上昇が現状のまま続いた場合、植物プランクトンの分布にどんな変化があるかを、モデルを用いて調べたものだ。海水温の上昇は、今のペースで温室効果ガスの排出が続くシナリオに基づいたもので、宇宙から見たとき海洋で青色がもっとも濃く見える亜熱帯の海はさらに青さを増し、赤道や極周辺の緑色に見える海はさらに濃くなるという。

 また論文の著者らは、海の色の変化は、温暖化による次の地球規模の大きな変化の前兆になるとも主張している。

海の色を測定

 現在でも海水の色は、季節が変わるたびに定期的に変わることが確認されている。ところが、この研究によれば、海水温が上昇し続けることで、季節によらず宇宙から見える海の色が現在と違うものに固定されてしまうという。

 ここで、おさらいしてみよう。人の目で太陽からの光を認識できるのは、海面から水深およそ200メートルあたりまで。それより深いところは暗闇に見える。太陽光が届く範囲では、水分子が青以外の色を吸収するため、青い光は反射される。こうして私たちの目には、海が青く見えるわけだ。

 海の色は緑に見えることもある。これは、海にとけ込んだ有機物や海面の植物プランクトンのためだ。植物プランクトンは葉緑素をもつ。葉緑素は、植物の仲間が日光を使ってエネルギーを作る光合成に使われる緑色の色素だ。こうして緑色に見えるのだ。

 数千種いる植物プランクトンには、暖かい海水に適応したものだけでなく、冷たい海水に適応して進化してきたものがいる。海が暖まると海流の流れが不規則になり、水中の層が「暖かい層」と「冷たい層」にくっきりと分かれると考えられている(2つの層は、簡単に混ざり合わない)。海水温の上昇が続けば、絶滅する種と大きく繁栄する種が登場したり、生息域をほかの海域へと変えたりする種も出てくるだろう。こうした変化も海の色に影響を与えるだろう。

 温暖化が植物プランクトンに与える変化は、これだけではない。例えば、エルニーニョ(熱帯太平洋東部の海面水温が平年より高くなる現象)やラニーニャ(熱帯太平洋東部の海面水温が平年より低くなる現象)などの自然現象も、植物プランクトンが決まった海域に集中する一因だと考えられるからだ。

 そこで、研究グループは、人工衛星を使って海洋から反射する光をまとめて測ることにした。

次ページ:80年後、海の色が変わる

 論文の筆頭著者であるステファニー・ダットキーウィクツ氏によると、今回の研究では、海水温の上昇が植物プランクトンの分布をどう変えるか観察するために使われてきたモデルを利用したという。このモデルでは、自然に発生する海の変化パターンに、植物プランクトンのライフサイクルと移動を考慮に加える。研究チームはこれと同じモデルを用いて、実際のプランクトン数に基づいて、特定の海域の光の反射を予測したのだ。

 その結果、研究チームは、2100年には、世界の海の半分で、海の色は今よりも濃い青、あるいは濃い緑色になっていくという結論を導き出した。

80年後、海は今より青くなる

「研究の特筆すべき点は、海面の色の変化が、実は地球規模で起きる大きな変化の前兆であることも示している点でしょう」とダットキーウィクツ氏は言う。海の色の変化は、植物プランクトンの分布や種類が大きく変化することを意味する。

「植物プランクトンは海の食物連鎖のいわば基盤です。植物プランクトン無しに、海に生きる生物は命をつないでいけません。ですから海洋の温暖化は、最終的に食物連鎖の頂上にたつ生物まで影響が及ぶことになるでしょう」

 研究の予測は、世界の気温が2100年までに3℃上昇することを前提にしたものだが、2018年11月、国連の世界気象機関は今世紀末までに地球の気温は3℃から5℃上昇するとの予測を発表している。

 ダットキーウィクツ氏も「自分たちのモデルは、今よりもずっと暖かくなった世界」を想定したものだと述べている。今後、適切な対策が講じられれば、海の色は現在と変わらないままになるだろう。

 そのためには、化石燃料を燃やして排出される温室効果ガスを大幅に減らすことが必要だ。

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