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モモンガは紫外線でピンクに光る、目的は不明

  • 2019年2月5日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 脚を広げて木から木へ滑空する不思議な動物モモンガ。このほど新たな研究で、さらなる不思議な性質が見つかった。紫外線を当てると、明るいピンク色に光るのだ。

 これは「生物蛍光」と呼ばれ、紫外線など一定の色(波長)の光を吸収し、別の色(蛍光)でそれを放出する性質。哺乳類ではあまり見つかっていないこの性質を、モモンガが持っていたことがわかった。これにより、何のために光るのかという新たな疑問が生まれると同時に、こうした性質が従来考えられていたよりも哺乳類の間で一般的である可能性も示された。

 学術誌「Journal of Mammalogy」に1月23日付けで掲載された論文の上席著者で、米ノースランド大学の生物学者、ポーラ・スペース・アニック氏は、この発見は全くの偶然だったと言う。

 論文共著者で林学の教授でもあるジョン・マーティン氏は、夜に米国ウィスコンシン州の森を調査していた。紫外線の懐中電灯で木々を照らし、蛍光を発する地衣類やキノコ、植物、カエルなどを探していたのだ。

「ある晩」とアニック氏は話した。「バードフィーダー(野鳥の餌台)からモモンガの甲高い鳴き声が聞こえたそうです。そこを懐中電灯で照らすと、ピンクに光って驚いたと」

モモンガが光った

 マーティン氏は、げっ歯類の研究者であるアニック氏にこの出来事を話した。「正直に言うと、この発見には少々混乱させられました」とアニック氏。「自分が理解できる文脈に落とし込もうとしました。餌によるものなのか、局地的な現象なのか、と」

 この特性がどのくらいの範囲に広がっているのか確かめるため、研究者たちは米ミネソタ科学博物館と、シカゴのフィールド自然史博物館に足を運び、数多くのモモンガの標本を調べた。北米のモモンガ(Glaucomys属)は森に生息する3種からなり、米国北西部からカナダ、米国東部、そして中米まで分布している。研究チームは可視光と紫外線の下で写真を撮り、滑空しないリスと比較。また、蛍光の強さを測った。

 普通のリスは光を発しなかった一方、モモンガでは1つの標本を除く全てで同様のピンク色の蛍光を放つことがわかった。性別や地点による違いは見られなかった。

「蛍光が見られたGlaucomys属は、19世紀〜21世紀にグアテマラからカナダにかけて収集されたもので、オス、メスともに確認されました。標本が採集された季節にも偏りはありませんでした」とアニック氏。

次ページ:ピンク色に光るのは何のため?

 哺乳類以外なら、蛍光を発する動物はいる。例えばパフィン(ニシツノメドリ)のくちばしやカメレオンの骨は、紫外線の下で不気味な青い輝きを放つ。だが、哺乳類で毛が蛍光に光ることがわかっていたのは、20種余りのオポッサムだけだ。この有袋類は南北米大陸の各地に分布しているが、モモンガと近縁関係にはなく、暮らしている生態系も食べるものも異なる。

 しかし、モモンガとオポッサムには共通点が1つある。どちらも夜と夕暮れ時に活動することだ。ほかのリスは、ほとんどが日中に活動する。

 光量が低いときは紫外線が比較的多く、夜行性の動物にとって紫外線視覚は重要だと一般に考えられている。したがって、ピンクの輝きは夜間の知覚とコミュニケーションに関係があるというのがアニック氏の見方だ。

 また、ピンク色は、モモンガが雪の積もった環境の中で動き回るのに役立っているとも考えられる。北米の3種のモモンガの生息地はいずれも、雪の降る地域と重なりがある。

「雪は紫外線の反射率が高いため、この特性がより見えやすい、つまり気づきやすい可能性があります」とアニック氏は言う。「この特性が動物のコミュニケーションに関わっているとすれば、雪がそれを『強化』しているのかもしれません」

異性へのアピールか、身を守るすべか

 それにしても、何のために蛍光に光るのだろうか。米バージニア工科大学の野生生物学者、コリン・ディギンズ氏は、交尾相手になりそうな異性に、健康状態や活発さを伝える手段なのではないかと考える。なおディギンズ氏は、今回の研究には関わっていない。

「オスのモモンガが鮮やかなピンクに輝くお腹を見せると、メスは夢中になるのではないでしょうか」

 しかしアニック氏は、その可能性は低いと考えている。蛍光には季節によってピークが現れることもなければ、オスとメスの差もないからだ。一方、毛が蛍光を発するメカニズムはわかっていない。

 ピンクの輝きには、ほかにどんな用途があるのか。アニック氏らのチームが挙げるのは、カムフラージュまたは擬態だ。木々を覆っている多くの地衣類も蛍光を放っており、モモンガの毛がピンク色に光るのは、周囲に溶け込むための手段である可能性がある。あるいは、フクロウの中には翼の裏側から明るいピンク色の蛍光を発する種がおり、モモンガはこの色を模倣しているとも考えられる。

 米ワシントン大学バーク博物館の哺乳類担当学芸員、ジム・ケネーギー氏は、北米以外のモモンガに蛍光が見られるかどうかに関心を持っている。ケネーギー氏は今回の研究に関わっていない。

「モモンガなどを含むリス亜科について、研究チームが北米以外の代表的な種まで調べなかったのは残念です」とケネーギー氏。

 だが、何よりもこの発見は、私たちの知らないことがいかに多いかを明らかにするものだ。

「この研究は、モモンガどうしのコミュニケーションや生息環境との関係について、まだまだ研究の余地があることを知らしめるものです」とディギンズ氏は言う。

 こうした研究は、モモンガの継続的な保護の観点からも、生息地に何が必要かを十分理解するために欠かせない。また、今回の発見は、人間が全く知らないだけで、実はほかにも多くの哺乳類に紫外線に反応する外皮が備わっている可能性があることを示している。

 アニック氏は言う。「私たちは昼行性の霊長類です。そのために夕暮れ時から夜に起こっている動物のコミュニケーションや知覚の多くの側面に気づいていないのです。この研究で、それを教えられました」

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