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【動画】一斉産卵するウミガメ、ジャガーが食べる

  • 2018年12月5日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 中米、コスタリカのサンタ・ロサ国立公園。午後10時半を回る頃、人里離れた全長800メートルほどのナンシテ海岸で、ナショナル ジオグラフィックの撮影チームが神秘的な大移動を待ち受けていた。チームは、フィリペ・デアンドラーデがホスト役をつとめる「ナショジオ・ワイルド」のTV番組「アンテイムド」のクルーたちだ。ヒメウミガメ)が産卵のために群れをなして上陸する「アリバダ」を待っているのだ。

 チームはウミガメを驚かさないよう、動物に優しい赤色のヘッドランプを用い、時々白い光を砂浜に当てて目の前の光景を観察する。これから数時間の間に、体長60センチほどの数千匹ものウミガメが海岸を目指してやって来る。上陸は一斉産卵のためだが、それを待ち構えるジャガーの餌食になるウミガメもいる。

 撮影チームが狙っているのは、毎年この産卵地に一斉に上陸するウミガメを撮影すること、そしてほとんど目撃されたことがない、ジャガーがウミガメを襲って捕食する現場を映像に収めることだった。

「力強く目を引くジャガーだけでなく、ウミガメを好きになってもらいたいのです。そして、自然が大事だと思ってもらうきっかけにしたいと思います」と、デアンドラーデ氏は話す。「自然の大切さに気付いてもらうだけでも十分です」

食べ放題?

 サンタ・ロサ国立公園のナンシテ海岸は、研究者だけが立ち入りを許された場所だ。31歳のブラジル系米国人フィリペ・デアンドラーデ氏が、ジャガーによるウミガメの捕食について知ったのは、10年ほど前に自然ドキュメンタリー番組で簡単に取り上げられていたのを見たときだった。「海岸で大型のネコ科動物が爬虫類を食べる姿を見たら、頭が疑問符だらけになりますよね。私も興味をもった一人です。なぜ、どのようにして、そんなことが起こるのか。周囲の生態系にとって、どんな意味があるのか調べたくなったのです」

 ウミガメは、ジャガーにとっては簡単に殺せる格好の獲物だと言うのは、生物学者のルイス・フォンセカ氏。ナンシテ海岸が特別なのは、ここにジャガーが生息すること、そして1年に数回ウミガメが集団で産卵する場所だということだ。この神秘的なウミガメの大移動は「アリバダ」と呼ばれる。アリバダは産卵シーズンの、新月少し前の暗い夜に起こる。

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「アリバダは、本当に正確に同時に起こります」と話すのは、番組「アンテイムド」に専門家として協力している生物学者のヴァネッサ・ベジー氏だ。「前夜には1つの産卵の後も見当たらなかったところに、突然、すべてのウミガメが一斉に卵を産みに海岸まで上がってくるのです」

 ウミガメはふだんは単独で行動する生き物なので、このような集団行動は異様に映る。これまで研究者らは、風、月の満ち欠け、あるいは雨を合図にアリバダが発生するのではないかとの仮説を立てた。しかし、正確な理由は今もわかっていない。

 撮影が行われた2017年11月は、数千匹どころか5万3932匹のウミガメがナンシテに上陸し、ゆっくりと動く甲羅で海岸を埋め尽くした。ジャガーにはビュッフェ会場に見えたことだろう。

 フォンセカ氏によれば、生息地を海岸にまで広げるジャガーが増えている可能性があるという。かつては、コヨーテやハナグマがウミガメの卵を食べていたが、環境も変わり、かつての捕食者は次第に姿を消しジャガーを見かけるようになった。今後、ウミガメを捕食するジャガーは増えるかもしれない。

「アリバダは、ジャガーにとっては食べ放題のようなものです」とベジー氏は話す。

姿を見せない捕食者

 ウミガメがそこかしこにいる一方で、ジャガーを見つけるのは難しい。南米最大のネコ科動物であるジャガーは、かつては南米大陸のいたるところにいたが、今では人里離れた限られた場所でしか見られないほど個体数が減少しているためだ。

 ジャガーは、ほかのネコ科動物と違って水を恐れない。ウミガメだけでなく、魚、ときにはワニの一種のカイマンを捕食することもある。もちろん、ペッカリー(ヘソイノシシ)、シカ、カピバラ、バクなどの哺乳類も捕食する。ジャガーの名は、アメリカ先住民の言葉で「一跳びで殺す者」という意味の「ヤガー」に由来するが、その名に偽りはない。

「私にとって、ジャガーは、動物というより精霊のようです」と、これまで何種もの大型ネコ科動物を撮影しているデアンドラーデ氏は言う。「なかなか見つけ出せません。ある意味、古老のような生き物を見つけ出すのは困難ですが、やりがいもあります」

 ジャガーを映像に収めるため、番組クルーはサンタ・ロサ中を移動して回った。クルーがナンシテ海外にいるときに、別の1人が20キロ近く離れたナランホ海岸でジャガーを見つけた。そこでクルーは大量の撮影機材をまとめて徒歩でナランホへと向かう。

 その後、ナンシテ海岸でジャガーが1匹目撃されたため、クルーは大急ぎで引き返した。夜中の2時間半の間、クルーは潮の引いた河口をクロコダイルに気をつけながら歩いて渡り、岩場をよじ登り這い降りてナンシテ海岸に到着した。撮影クルーの努力の甲斐もなく、結局この日、ジャガーはクルーの前に姿を現すことはなかった。

 デアンドラーデ氏は言う。「ジャガーはジャガーで、自分がすべきことをしているのでしょう。残念なのは、撮影に協力的ではないことですね」

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