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【動画】こんにちは キノボリカンガルーの赤ちゃん

  • 2018年9月20日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 2016年初め、オーストラリアのビクトリア州にあるヒールズビル自然動物園の飼育係が、絶滅の危機に瀕するキノボリカンガルーを増やすため、その一種であるセスジキノボリカンガルーのマニという雌とバガムという雄を引き合わせた。

 そして2年後、マニのお腹の袋の定期検診で、豆粒ほどの大きさの赤ちゃんがいることがわかった。それから6カ月間、赤ちゃんはお母さんの袋の中ですくすくと育ち、9月上旬には、そこから顔をのぞかせるようになった。

 ヒールズビル自然動物園でセスジキノボリカンガルーの出産が成功したのは、今回が初めて。赤ちゃんの名前はまだ決まっていないが、子が産まれたことは非常に喜ばしい出来事だ。

樹上が得意、でも絶滅の危機

 キノボリカンガルーの仲間は、パプアニューギニア、インドネシア、オーストラリアに生息しているが、なかでもセスジキノボリカンガルーは個体数が減っており、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは絶滅危惧種(Endangered)に指定されている。

 ヒールズビル自然動物園のほかに2つの動物園を管理している動物保護団体「ズーズ・ビクトリア」は、世界中の同様の団体と協力して、野生動物の絶滅を回避する活動や、繁殖プログラムを通して飼育環境下の種を守る活動を行っている。キノボリカンガルーについても、動物園での繁殖とは別に、この動物の生息地を守るコーヒー農家たちが収益を得られるようにするプログラムを実施中だ。

 セスジキノボリカンガルーは、地上を跳ねるワラビーやカンガルーよりも後ろ脚が短く、前脚が太い。この特徴のおかげで、樹上ではすばやく動けるが、地上に降りるとそれほどでもない。

 ズーズ・ビクトリアで自然保護パートナーを管理するクリス・バンクス氏によると、野生のセスジキノボリカンガルーの最大の脅威はハンターによる狩猟だという。

コーヒー農園化で生息地の熱帯雨林を守る

 生息地となる熱帯雨林が失われていることも大きな問題だと、バンクス氏は語る。ズーズ・ビクトリアは、保護プログラムを通して、パプアニューギニアのキノボリカンガルーの保護活動も行っている。このプログラムは、野生環境だけでなく、地元で暮らす人々の助けにもなるような戦略に基づいていて、主役となるのが地域の特産品であるコーヒーだ。

 この地域の土地は、先住民たちが90%以上を所有している。「彼らが豊かになり、コーヒー農家が増えれば、キノボリカンガルー、ヒクイドリ、クスクス(樹上に暮らす有袋類)などが暮らせる保護地域が増えることになります」とバンクス氏。

 これが、地元の人々への農業支援を通して、野生動物の生息地と農家の生計の両方を守ろうという「自然保護コーヒー・プロジェクト」を支える理念だ。「維持可能な収入が生まれることで、食料の確保だけでなく、医療や教育サービスなども充実しつつあります」とバンクス氏は語った。

 このプロジェクトで、18万ヘクタール以上の土地が保護区となった。自然保護コーヒー協同組合も設立され、600人以上の農業従事者が参加するようになった。バンクス氏によれば、2011年以降、取り組みによって約90トンのコーヒー豆が輸出され、ズーズ・ビクトリアの動物園の売店でも販売されている。

 今回産まれたキノボリカンガルーの赤ちゃんを野生に返す予定はないという。バンクス氏は、「当面の間、セスジキノボリカンガルーの未来を考えると、今のところの最善策はカンガルーを厳しい野生環境に置かないことです」と話す。

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