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【動画】ゾウが死ぬとその巨体はどうなるのか

  • 2018年9月13日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 70年生き、体重は7トンになることもあるアフリカゾウ。ゾウが死ぬと、仲間のゾウたちは集まってきて、数日から数週間、ときには数年間もその死を悼むことがあるという。

 ただし、ゾウにとっての死は、ほかの動物にとっては生存を意味する。ゾウが息絶えると、ハイエナやハゲワシといった腐肉食動物たちが、その死骸を数日で骨だけにしてしまう。数百万カロリーを死骸から得る動物の中には、絶滅危惧種となっているものもいる。大きなゾウは死んでも、そこから別の生命に受け継がれていくのが自然の摂理だ。

 ナショジオ ワイルドのテレビ番組「サファリライブ」(ワイルドアースメディア制作)の撮影クルーは最近、南アフリカで死んだゾウの死骸を動物たちが食べる様子を撮影した。1頭のオスゾウが、別のオスとの戦いに敗れ、そのときに負った傷が原因で死んだ。当初はほかのゾウたちが集まって、仲間の死を悼む様子が見られた。次に何が起こるのか、撮影クルーはカメラを回し続けて貴重な映像をものにした。

 むき出しになったゾウの内臓めがけてハゲワシの集団が折り重なるように群がり、争いを繰り広げる。目を覆いたくなるような光景だ。だが、しばらく観察していると、現場は意外にも秩序だっていることにクルーは気づいた。それぞれの動物に役割があり、ある程度おとなしく自分の順番が来るのを待っている。

 ハゲワシは、動物が死んで数分から数時間のうちに死骸を見つける。ところが、彼らの屈強なくちばしでもゾウの厚い皮を食い破ることはできない。そこで、死んだ動物の上空で円を描きながら飛び、鋭い牙をもつライオンやハイエナが死骸を食い破り、肉を引き出してくれるのを待つのだ。ゾウの専門家で保護団体「エレファントボイス」の共同代表を務めるジョイス・プール氏は、こう説明した。

 この動画には、ブチハイエナがゾウの皮を食い破るのを、コシジロハゲワシが待つ様子が撮影されている。ハイエナがゾウの死肉を引き出すと、ハゲワシが素早く群がる。

 猛禽類の保護団体「ペレグリン基金」のハゲワシ専門家で、ナショナル ジオグラフィックの支援を受けているムニール・ヴィラニ氏は、ゾウ1頭の死骸に数百羽のハゲワシが一度に降り立つこともあり、数日のうちにゾウは骨だけになってしまうと語る。ヴィラニ氏も、過去に何度か似たような現場を実際に見たことがある。

「本当にすごい光景です。耳障りな音をたてて、動物たちが押し合いへし合い、飛び上がったり戦ったり、翼を引っ張り合ったりします」

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死骸がつなぐ生命

 ハゲワシは、人間に生息地を脅かされたり、毒殺されたりして生息数が激減している。ゾウの死はハゲワシにとってごちそうであり、ハゲワシたちの未来を大きく左右するのだ。

 大型動物が死ぬと、ハゲワシは素嚢(食べ物を一時的に貯蔵しておく器官)にできるだけたくさんの肉を詰め込んで、ひなの待つ巣に持ち帰る。ヴィラニ氏によれば、ハゲワシは1年の半分を子育てに費やしているため、大きな獲物をたくさん見つける必要があるという。

 ゾウの肉は、毎日のように転がっているわけではない。しかも、アフリカでは、かつて数百万頭いたゾウが数十万頭に激減している。動物の死肉を食べるハゲワシは、ゾウやヌーといった大型動物の群れのそばで生きてきた。そのため、これらの大型動物が減れば、その影響を直接に受けるのがハゲワシなのだと、ヴィラニ氏は指摘する。

 動物たちがゾウを食べつくすと、今度は死骸の生分解を助ける生物たちが、残りの肉をすっかりきれいに片付ける。

「しばらくするとウジがわき、やがて体は全てウジで覆われてしまいます」と、プール氏。

 死骸の下の土には、腐敗の過程で流れ出たゾウの血液や体液が浸み込み、肥沃な土壌となる。こうして、土に栄養を与える微生物の働きも活発化する。仲間の死を悼みにやってきたゾウが落とすフンも、フンコロガシやそのほか無数の小さな生き物のエサとなる。

 空から小型飛行機でゾウの数を数えるグレート・エレファント・センサス計画は、このような腐敗現場を探し出し、生きているゾウと死んだゾウの数を調査した。ゾウの専門家イアン・ダグラス・ハミルトン氏は、生きているゾウの数に対する死骸の数の割合を「死骸比」として表し、個体数の把握に努めている。気持ちの良い調査ではないが、実態はつかみやすい。

 例えば、2016年の実態調査では、ボツワナでのゾウの死骸比は7%と、比較的少なかった。これに対して、モザンビークの死骸比は32%と高い。死んだゾウが少ないということは、密猟も少ないことを意味する。ちなみに、2018年9月のボツワナでの調査では、象牙のないゾウの死骸が87体確認され、保護団体は衝撃を受けている。

 現在、アフリカゾウは危機的な速さで数が減っているが、いずれこの影響は周囲の環境や他の動物にまで及ぶことになる。

 プール氏は言う。ゾウの死骸はあっという間に消えてなくなってしまうが、「死骸に集まる動物たちは、生態系にとっては非常に重要です。生物の多様性を維持し、命あふれる自然を保つためにも、彼らまで失われるようなことが起きてはいけません」

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