サイト内
ウェブ

恐竜時代のサメ、餌がいなくなり絶滅か、研究

  • 2018年8月7日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 6600万年前に小惑星が地球に落ちたとき、絶滅の危機にさらされたのは恐竜、鳥類、翼竜だけではない。白亜紀を通じて支配的だった海の捕食者たちも、大半が姿を消してしまった。

 恐竜が地上に君臨していた間、海でにらみを利かせていたのは大型の海生爬虫類と多様性に富んだサメだった。このうち、一部のサメが絶滅した原因が、餌となる生物がいなくなったからかもしれないとする研究結果が、8月2日付けの学術誌「カレントバイオロジー」に発表された。

 そのサメは、ネズミザメ目のアナコラックス科というグループだ。彼らはアンモナイトや海の大型爬虫類を食べていた。いずれも白亜紀末に絶滅した生きものだ。

「かすかだけれども重要な変化によって、後にメジロザメ目が優勢になる土台が作られたのかもしれません。メジロザメ目は現在、サメのなかで最も多様性に富んでいます」。論文の共著者で、オーストラリア、ニューイングランド大学の古生物学者、ニコラス・カンピオーネ氏はこう話す。「アナコラックスが絶滅した後、メジロザメ目が増えました。我々は、入手可能な食料が変わったことが重要な役割を果たしたという仮説を立てています」

 サメの骨格は大部分が軟骨であり、ほとんど化石として残らないため、太古のサメの研究は容易ではない。そこで、今回の論文を著した国際研究チームは、もっと丈夫な物に目を向けた。彼らは大量絶滅前後の地層から出たサメの歯を数百本分析し、その数と形が時間とともにどう変わったかを分析した。

「この論文は、白亜紀末期の絶滅の一端としてサメとその化石を研究し、説得力のある主張をしています」と話すのは、米コーネル大学脊椎動物博物館で魚類学を担当する学芸員、ウィリアム・E・ベミス氏だ。同氏は今回の研究には関与していない。

「サメは海洋システムに起こった変化を垣間見せてくれる生き物です。特に、大型の海生爬虫類のグループが絶滅し、一部はやがて海生哺乳類に取って代わられ、同時に硬骨魚類が爆発的に広がっていった過程を知る手掛かりになります」

次ページ:「ショーが続くが、キャストは入れ替わる」

 今日、獲物を捕食するサメの主要なグループは、メジロザメ目とネズミザメ目の2つだ。オオメジロザメ、イタチザメ、シュモクザメを含むメジロザメ目は最も数が多く、250を超す種がいる。一方、ホホジロザメ、アオザメ、シロワニなどのネズミザメ目は、現在15種ほどしかいない。

 しかし、白亜紀の勢力図はこれとは逆だった。ネズミザメ目、なかでもホホジロザメに似た種を擁するアナコラックス科というグループは、メジロザメ目よりはるかに数が多かった。スクアリコラックスという種はとりわけ頑丈で恐ろしく、大きいもので体長5メートル近くに達し、大型の海生爬虫類を主な餌にしていた可能性がある。

 比較的小型の首長竜や、海のトカゲの仲間であるプリオプラテカルプス、プログナトドンなどモササウルス科の仲間は、スクアリコラックスのようなサメにとってはくみしやすい相手だっただろう。しかし、白亜紀末期に最も一般的な海生爬虫類だったモササウルスは体長17メートルにもなり、それだけの大きさなら、スクアリコラックスに脅かされることはなかっただろう。実際、この頂点捕食者の方がサメを食べていた可能性がある。

 カンピオーネ氏は、スクアリコラックスはモササウルス科の死骸を食べたり、体格が自分と同じくらいか、自分よりも小さな幼体を狩ったりしていたのではないかと話す。このほか、アンモナイトも食べていたかもしれない。

 ところが、これらアナコラックス科が食べていた大型の獲物が小惑星衝突で急に姿を消すと、それを餌にしていたサメも滅ぶことになった。当時生きていたサメのうち、実に30%前後の種が死に絶えたと考えられている。彼らに取って替わったサメの多くは小さくて動きの速い魚を食べる種であり、それが現在の海で大部分を占めるサメの祖先となったという。

「白亜紀末期の絶滅で、海生爬虫類やアンモナイトが大量に失われました。スクアリコラックスなど、アナコラックス科のサメにとって重要な食料源だったはずの生物です」とカンピオーネ氏。「しかし絶滅後の世界では、硬骨魚類が増加しました。すると、餌を大型の海洋生物に頼っていたアナコラックス科のサメは変化に対応できず、対して、体の小さなドチザメ科など、魚を主に食べるサメはうまくやれたのです」

 一部のサメは入れ替わったものの、白亜紀末期の絶滅前とそこからの回復後で、歯の形の全体的な多様性があまり変わっていないのは興味深いと米シカゴ大学で魚類の進化を専門に研究するマイケル・コーツ氏はコメントする。「大ざっぱに例えるなら、同じショーが続くが、キャストは入れ替わるということです。絶滅後に取って替わったグループは、絶滅事件で犠牲になった種がかつて占めていたのとほぼ同じ生態系の地位に移ったとみられます」

「白亜紀末期の大量絶滅で脊椎動物の主要なグループがどのような状況に陥り、どう回復したかについて全体像が描かれ始めていますが、そこに詳細を加える優れた研究です」とコーツ氏は続けた。「サメの体の化石は極めてまれなので、この研究は必然的に抜け落ちた歯の記録に限定されています。しかし、どんな種が存在し、生き延びたのかについて、歯は有用な標識となります」

 歯の研究を通じて、研究者たちは「絶滅したサメの生活について手がかりを得ることができました」とカンピオーネ氏は話す。現生のサメの種の少なくとも50%が、絶滅が危惧されるか数を減らしていることから、過去にどのような原因でサメが絶滅したのかを解明すれば、今のサメが同じ運命に見舞われるのを防ぐヒントを見いだせるかもしれないと、カンピオーネ氏は考えている。

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
(C) 2018 日経ナショナル ジオグラフィック社