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最古の巨大恐竜類の化石を発見、進化の定説覆す

  • 2018年7月26日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 地上を歩いた動物で史上最大なのは、竜脚類と呼ばれる首の長い恐竜のグループだ。動く大聖堂とさえ言われる草食の巨人たちは、頭から尾の先までの長さは最大で35メートルを超え、体重はなんと70トン近いものもいた。

 7月24日付けの学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された最新の論文が、長く語られてきたこの竜脚類の起源の物語に一石を投じた。中国で発見され、「霊武(リンウー)の驚くべき竜」を意味するリンウーロン・シェンキ(Lingwulong shenqi)と命名された新種の恐竜が、竜脚類の主要なグループである新竜脚類で最古のものであり、彼らの出現がこれまで考えられていたより少なくとも1500万年も早かったことが示されたのだ。

 この発表のわずか数週間前には、別の画期的な論文が学術誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション」に掲載されていた。それによると、インゲンティア・プリマ(Ingentia prima、「最初の巨人」の意)と名付けられた2億800年前の恐竜が、竜脚類が出現する以前から、竜脚類の巨大化につながる体の基本構造をすでに備えていたという。

「どちらの論文にもとても魅かれます。いずれも、流れを大きく変えるものですから」と話すのは、英エジンバラ大学の古生物学者スティーブ・ブルサット氏だ。『The Rise and Fall of the Dinosaurs(恐竜の栄枯盛衰)』の著者で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもある。「竜脚類に関する私たちの知識が誤りだったということではありません。その進化の鍵を握る出来事が、従来の認識より何千万年も早く起こっていたと分かったのです」

 恐竜時代の大部分にわたり、竜脚類は地上の生態系を支配していた。2億年以上前の三畳紀後期から、約9000万年前の白亜紀後期までという長さだ。しかし、最初から巨体だったわけではない。最初の竜脚類は2足歩行するちっぽけな存在だった。

 古生物学者たちは、典型的な竜脚類が「草食の超高層ビル」になるために必要な適応をなしとげたのはジュラ紀中期の1億8000万年前以降だと考えていた。このグループの恐竜はおおむね生まれてからずっと成長し続ける。進化するにしたがって大小さまざまなものが現れたが、頭骨は小さくなり、首の骨には空洞が増え、一方で脚はずんぐりした柱のようになった。

 しかし、進化上重要なこれらの特徴をいつ、どこで獲得したのだろうか。最新の成果によれば、ジュラ紀中期よりもずっと前だという。

次ページ:アジア初、しかも最古の化石

巨大化をもたらす特徴が先行

 アルゼンチンにあるサンフアン大学の古生物学者、セシリア・アパルデッティ氏が率いる研究チームは、比較的首が長い恐竜の不思議な化石をパタゴニアで発見した。年代はおよそ2億800万年前で、竜脚類の古い親類だった。インゲンティア・プリマと正式に命名されたその恐竜は、体長は10メートル余り。体重は10トンほどで、竜脚類が「巨大化セット」を獲得する前に現れた動物としては驚異的な大きさだった。

 典型的な竜脚類よりも古い親類たちは、巨大化への独自の方法を偶然見出していた。ただし、時代が下ったジュラ紀中期の竜脚類と違って、彼らの骨は一定の速さでスムーズに成長せず、成長がゆるやかな時期と爆発的な時期を交互に繰り返していた。しかも、後の竜脚類の柱のような脚と違って折れ曲がっていたが、それでも自分の体重をうまく支えていた。首の骨も空洞はなく、竜脚類ほど長くはなかった。

 この発見で、三畳紀後期にはすでに大型の草食動物という地位を恐竜が占め始めていたことが確認された。それを可能にしていたのは、さまざまな特徴の寄せ集めだ。

「恐竜は進化の初期段階から、解剖学的な革新を起こす独自の能力を持っていました」とアパルデッティ氏は話す。「これにより、彼らは非常に長い期間にわたって、ほとんどの場所で地上の生態系を支配し、他を圧倒できました。この『解剖学的多用途性』はおそらく、地球史上最も成功した脊椎動物の1つとなる上で決定的だったはずです」

アジア初、しかも最古の化石

 インゲンティアの発表からわずか数週間後、中国で調査していた別の古生物学者チームが、リンウーロン・シェンキの論文を発表した。1億7400万年前のディプロドクス上科と呼ばれる竜脚類の一種だ。この発見も驚きだ。場所も年代も、全く予期しないものだったからだ。

 2005年、中国科学院の古生物学者でナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーである徐星氏は、同僚とともに中国北西部の霊武で発掘を開始した。前年に地元の農家が見つけた場所だった。以来、8〜10体の恐竜が見つかっており、アジアでは前例のなかった恐竜であるリンウーロンもその1つだ。

「この発見で、空白を埋められるかもしれないと気付きました」と、論文の主著者である徐氏は話している。

次ページ:超大陸が分裂したせいではなかった

 リンウーロンでひときわ目を引くのは、太古の超大陸パンゲアの分裂が、竜脚類の進化にどう関係したかの手掛かりになる点だ。地球規模で起きた超大陸の分裂は、恐竜時代の地上の生物の進化に重大な影響を与えた。ひとつながりだった地域が海によって隔てられると、陸上の動物たちは昔のように大陸じゅうに分布できなくなり、孤立した地域で独自の進化をたどるようになる。

 リンウーロンが見つかる前、東アジアでディプロドクス上科の恐竜は見つかっておらず、古生物学者たちはそれが当時の生物学的現実とみなしていた。この種の恐竜がいないことの説明として、約1億8000万年前以降、東アジアに内海ができてパンゲアから切り離されたという説が科学者から提唱された。巨大な堀のせいで、ディプロドクス上科やその仲間、いわゆる新竜脚類が東アジアに到達できなかったというわけだ。

 しかしリンウーロンが見つかった以上、新竜脚類はパンゲアが分裂する前に大陸の広い範囲にいたと考えなければならない。だとすると、竜脚類の中心的なグループは、これまで考えられていたより少なくとも1500万年は早く分岐していたことになるという。

「新たな動物の発見は……隔離説がいくぶん弱まったか、もっと言えばとても疑わしくなったことを意味します」と話すのは、論文の共著者のポール・アップチャーチ氏だ。同氏は英ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(UCL)の古生物学者で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもある。「中国にはいなかったとされているグループの多くはおそらく存在していたはずだと私たちは提唱しています。本当にいなかったのではなく、化石の試料採取が不十分で、まだ見つかっていないだけなのです」

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