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【解説】木星の衛星エウロパに間欠泉、ほぼ確実

  • 2018年5月16日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 1995〜2003年まで木星の観測を行っていたNASAのガリレオ探査機のデータから、氷に覆われた衛星エウロパが、宇宙空間に向けて水を噴出していることを示す強力な証拠が見つかり、5月14日付けの学術誌「Nature Astronomy」にその詳細が発表された。

 長年の間、太陽系内で地球外生命体が見つかりそうな場所の最有力候補と考えられてきたエウロパには、表面の氷の下に、地球よりもはるかに多くの水をたたえた海があることが知られている。間欠泉があるなら、宇宙船にその中を通過させるだけで、エウロパの海水から生命の兆候を探せる可能性がある。

 それだけでもけっして簡単なこととは言えないが、探査機をエウロパまで飛ばして安全に着地させ、厚さ1.6キロの硬い氷に穴を開けてからようやく海を探索させるよりは、話はよほど単純だ。

 一方で、エウロパの間欠泉が、厚い氷の中にある湖など、海以外の場所から噴き出している可能性も考えられる。それでも、2020年代に打ち上げが予定されている「エウロパ・クリッパー」など、この先の探査ミッションにおいて間欠泉の水を採取すれば、赤い筋が走るエウロパの「皮」の下に眠っているものの正体を垣間見ることはできるだろう。

「こうした間欠泉から魚が飛び出して、エウロパ・クリッパーに衝突するといったことは起こらないでしょう」と、NASAジェット推進研究所のシンシア・フィリップス氏は言う。「おそらく間欠泉は、もっと浅い水域から発生しているものと思われます。そうなると正確には、採取できるのは海からのサンプルではなく、表面近くにある水のサンプルということになります」

土星の衛星には存在

 惑星科学者たちは長年の間、エウロパが土星の衛星エンケラドスと同じように、宇宙に水を噴き上げている可能性について議論してきた。

 2013年末にハッブル宇宙望遠鏡が捉えた画像には、エウロパの南半球で、高さ200キロまで噴き上がる間欠泉のようなものが映っていた。当時はしかし、科学者らは懐疑的だった。この画像はハッブルの解像能力を限界まで使って撮影されたものであり、確認の観測をしても何も見つからなかったからだ。

次ページ:変則的な数値の急変が3分間

 しかし2016年と2017年には、間欠泉の存在を示すハッブルの画像がさらに数多く公開された。エウロパの間欠泉は、エンケラドスほどの勢いはないものの、密度は同程度に濃く、容易に視認できた。

 2017年5月、SETI協会のメリッサ・マクグラス氏が、エウロパ・クリッパーの科学者チーム会議において発表を行い、20年ほど前にガリレオ探査機がとらえた興味深いデータを含め、エウロパから噴き出す間欠泉の存在を示唆する証拠すべてについておさらいした。

 米ミシガン大学のシャンジェ・ジャ氏のチームが保存されている過去のデータを見直すことに決めたのは、このときだった。

「わたしは、なぜもっと早くやらなかったのだろうと自問していました。データは20年近く前から、誰でも入手できたのですから」とジャ氏は言う。

変則的な数値の急変が3分間

 エウロパの重力は、噴き上げられた水蒸気を惑星のすぐ近くに留めておくぐらいには強い。ガリレオがそうした噴出物を捉えられるほど低空を飛んだのは、わずか2回だけだった。そのうちの1回が1997年12月の飛行であり、このときガリレオは5分間かけてエウロパの表面を横切った。

 ジャ氏らが精査したのは、ガリレオの磁力計と荷電粒子の密度を測る装置のデータだ。その数値を調べると、すぐに奇妙なものが見つかった。ガリレオのエウロパへの最接近前後で、変則的な数値の急変が3分間ほど続いていたのだ。

 もしこのとき間欠泉が噴き上がっていたなら、水蒸気と塵の粒子がエウロパの磁場の影響を受けたはずで、ガリレオはそれを探知したのだろうとジャ氏は言う。またガリレオが間欠泉に突入し、中を通り抜けて外に出る際には、探査機周辺の荷電粒子密度が変化する。

次ページ:間欠泉はたくさんある?

「磁気信号には非常に特異な変化が認められました」とジャ氏は言う。「われわれはこのほか、ガリレオからプラズマ波のデータも引き出しましたが、驚いたことにちょうど同じ頃、プラズマ波も異常な放出を見せていました。これらふたつの事実を合わせると、この時間に何か極めて特別なことが起こっていたと推測されます」

 その特別なこととは具体的には、ガリレオがエウロパの赤道付近で、幅約1キロほどの間欠泉の中を通り過ぎたということだ。ジャ氏のチームはこの推測の確からしさを高めるため、ハッブルが捉えたものとおなじ大きさと密度を持つ間欠泉を探査機が通り抜けた場合にどんなデータが得られるか、シミュレーションを行った。すると得られたデータは、ガリレオの観測結果とほぼ完全に一致した。

「ひとつの証拠だけを見てもあまり確実とは言えませんが、互いに完全に独立した観測結果を合わせて検証し、すべてが同じことを示していたなら、それはかなりの説得力があります」

間欠泉はたくさんある?

 ガリレオのデータの分析結果がすばらしいものであることは確かだが、これは必ずしも間欠泉がずっと噴きだしていることを証明するものではない。フィリップス氏はこれについて、エウロパが宇宙空間に、少なくとも時々は水を噴き出していることを示す証拠がまたひとつ増えたということだと述べている。

 マクグラス氏は言う。「わたしはこの観測結果は、現在見えているものよりも多くの間欠泉があることを示していると考えます。ひとつしか存在しない間欠泉の中を偶然通り抜けるというのは、かなり確率の低いことですから」

 今回の発見は、エウロパ・クリッパーにどのような影響を与えるだろうか。実のところ、クリッパーを設計したチームはすでに、観測機が間欠泉を通り抜けた場合に観測を行える機器一式を用意する計画を立てている。これで何が見つかるかは、まだ誰にもわからない。

「いくら想像をたくましくしようとも、いつもまったく考えてもいなかったことが起こるものです」とマクグラス氏は言う。「エウロパでもきっと、完全に予想外のことに出会えることでしょう」

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