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ライオン11頭が謎の死、報復のため毒殺か

  • 2018年4月17日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 4月10日、アフリカのウガンダ南西部にあるクイーン・エリザベス国立公園で、ライオン11頭が死んでいるのが見つかった。毒殺された可能性がある、と保護当局が明らかにした。死んだのは子どものライオン8頭とおとなのメス3頭。オス3頭とともに、ひとつのプライド(群れ)を形成していた。

 このプライドは、公園内の他のライオンとともにテレビの動物保護のドキュメンタリー番組に登場したことがある。木に登って枝の上でくつろぐ様子が紹介されたところ、この珍しい行動が注目を集め、公園には多くの観光客がやって来た。木に登るライオンは珍しいが、同公園にはほかにも木に登る群れはいるし、南アフリカ共和国でも木に登るライオンが目撃されている。

 木登りをするウガンダのライオンを撮影してきたナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー、アレックス・ブラズコウスキ氏はアシスタントからの電話でこの知らせを受けた。「ショックのあまり、泣き出してしまいました」と、南アフリカ在住のブラズコウスキ氏は言う。「大好きだったんです。撮影しているときは、毎日のように車に乗って後を追っていましたからね」

 死骸の一部を発見したのは、ウガンダ野生生物局(UWA)のレンジャー、ジミー・キセムボ氏が率いるチーム。いくつかの死骸はハイエナに食い荒らされ、骨だけになっていたという。「愕然としました」とキセムボ氏は言う。「現場にいた全員が泣きました。本当にがっかりしました」。だが、今では残ったライオンを守るにはどうすれば良いか、その方法を懸命に考えている、と彼はつけ加えた。

 ブラズコウスキ氏によると、近くにあるハムクングという漁村で発見されたライオンの死骸と骨は、解剖のため同公園内の町ムウェヤに送られたという。

 ブラズコウスキ氏は、ライオンの死因はアルジカルブ中毒ではないかと考えている。「テミック」という名で知られているこの殺虫剤は、安価で、簡単に手に入る。アルジカルブは神経伝達物質を分解する酵素の働きを妨げる物質で、嘔吐、胸部の圧迫感、呼吸困難を引き起こし、死に至らしめる。多くの場合が窒息死だ。

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人間と野生動物の衝突

 ライオンが毒殺されたのは、村の牛が殺されたことへの報復ではないかとウガンダ野生生物局は考えている。だが、公園当局と連絡を取り合っているブラズコウスキ氏によると、今のところまだ容疑者は挙がっていないという。

 アルジカルブは、野生動物や家畜の毒殺に使用される。過去にも南アフリカの泥棒が犬に吠えられるのを避けるため、これを用いて毒殺しているし、ライオンの他にもサイやハゲワシ、ヒョウがこれで毒殺されたとの報告もある。

 野生動物が故意に毒殺される例はアフリカ東部の各地で起こっており、決して珍しくはない。牛の放牧者をはじめとする人間の居住地と、ライオンのような大型肉食動物の生息地が重なるケースが増えているからだ。2015年には英BBCのテレビ番組で有名になったケニアの野生ライオンの群れ「マーシュ・プライド」のうちの3頭が、農薬をまぶされた牛の死肉を食べて死んだ。放牧者が家畜の牛を殺された報復にライオンを毒殺したものと思われる。11羽のハゲワシも、同じ牛の死骸を食べて死んでいる。

国立公園内での放牧

 クイーン・エリザベス国立公園内には、いくつかの漁村がある。そのひとつ、ハンジュングの牛の放牧者は村の境界を越えて、より牧草の豊かな公園の敷地内で放牧することがある。ライオンにしてみれば自分の縄張りに、簡単に捕まえられる獲物が入ってくるのだから、襲わないわけがない。

 2008年に行われた直近の調査によると、公園内のライオンの数は120頭ほどだったが、新たな調査結果が近いうちに明らかになるだろう、とブラズコウスキ氏は話す。同氏もライオンの個体数を調査している。

 ハムクングの村では、獣医のラドウィッグ・サイファート氏が率いる「Uganda Large Carnivore Program(ウガンダ大型肉食動物プログラム)」が実施されており、野生動物の調査、監視が行われている。同プログラムでは、地域住民による動物の保全プログラムも行っており、牛が捕食された場合には放牧者に対して市場価格で補償金を支払っている。

 ブラズコウスキ氏の話では、2017年にクイーン・エリザベス国立公園内で毒殺されたライオンは4頭。このペースで個体数が減っていけば、5年後には公園内のライオンはゼロになってしまう、と懸念している。

 公園当局は今後、公園内での牛の放牧に対して、より厳しい措置を取ることにしており、別のプライドからメスのライオンを連れてきて繁殖させ、個体数を増やすことも検討している。

 ナショナル ジオグラフィック協会の大型ネコ科動物保護プロジェクト「ビッグキャッツ・イニシアティブ」の調べによると、アフリカのライオンの個体数は、生息地の消失や人間との接触増加により、過去75年間で90%減少した。

 ライオンの繁殖ペースは速いため、クイーン・エリザベス国立公園の生態系もそれを支えることができるとブラズコウスキ氏は言う。「生息地はまだ健全です。捕食動物もまだいます。希望はあります」

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