ヘビとの出会いはいつも突然です。たいていは私たちが怯んでいる隙に、ヘビの方が先に予想もしない速さで逃げてしまいます。
毒蛇もいるので、多くの人から嫌われがちですが、自然界で共に暮らす一員として決して欠けてはいけない仲間。さあ、皆さんを魅力あるヘビの世界に誘いましょう。
▲アオダイショウ(体長:110~220cm)
背中は青味や緑味を帯びた褐色で、うっすら背中に縞模様が入る。体の側面にクライミングキールと呼ばれるうろこがあり、これを利用し木などをカクカク登り、鳥などの獲物を狙う。昔は家にすみ着くネズミなどを食べてくれるので重宝されていた。大きな獲物も胴体で締め殺して丸のみする大食漢
どんなところにいる?
春になると石垣の隙間や重なる倒木の下からヘビが活動を始めます。真っ先にとる行動は日光浴です。体温を高めないと変温動物であるため動きが鈍くなり敵(主に猛禽類)に襲われる確率が高くなってしまいます。日光浴はさまざまな場所で行われ、シマヘビなどは田んぼの畦、アオダイショウは建物周辺や木の上、ヤマカガシは林道で多く見られます。日光浴はその種類のヘビの生息環境を象徴する場所で行われます。
たいていの種類は好む餌の種類により生息環境を選んでいます。例えば、ヒバカリはカエルが好む水田。シロマダラはトカゲが好む石垣周辺。タカチホヘビはミミズが好む倒木下です。このような場所を徹底的に探すと見つかるかもしれません。ヘビに出会ったら毒蛇かどうかを瞬時に見極めましょう。
知っておきたい毒蛇
代表的な毒蛇2種。対馬やトカラ列島以南には他の毒蛇がいます。
毒蛇には近寄らず、触れないようにしましょう。
▲ニホンマムシ(体長:40~65cm)
分布:北海道、本州、四国、九州など
太くて短いヘビ。頭部が三角形に見える。これは毒をより多く注入するため筋肉が発達してエラが張ったような体つきになっている。背中に銭形模様が入り、地面や草や木などにうまく擬態している。目と鼻の間にピット器官という赤外線感知器官があり獲物の位置が正確に分かるので、人間がゆっくり近づいても意味がない。触ると独特のにおいを発する
▲ヤマカガシの幼蛇(成体の体長:65~150cm)
分布:本州、四国、九州など
毒を使い分けるヘビ。一つは奥歯で傷を付け、アゴの後ろの毒腺から血管に入れる毒(人間の死亡例がある)。もう一つは主食のヒキガエルから摂取する毒で、こちらは首にあたる部分にあり、お辞儀をするような仕草をしても相手が怯まなければ首を打ちつけ毒液を飛ばす。模様は褐色や黄色、緑色、赤と黒色などさまざまで、小さいうちは首の部分に黄色い斑紋が入るが成長とともに薄れていく
どんな行動をしている?
長い体に手も足もないヘビは想像もしない動きをします。泳げないと思われがちなヘビが水面を素早く泳いだり、さすがにここは通れないだろうと想像する狭い隙間を簡単にくぐり抜けたりします。
また、先が二つに分かれた舌をチョロチョロさせていることがあります。口の中の上面に、ヤコブソン器官というにおいを感じる器官があり、左右の舌先が空気中の物質を拾い、左右のヤコブソン器官にそれぞれ運ぶことで、においのする方向も分かるようです。
成長は早く餌をどんどん食べ、脱皮を繰り返し大きくなります。ヘビにはまぶたがないため、冬になると、目を開けたまま、トグロを巻く形で丸まって冬眠します。
人間とは違う能力を持つヘビの魅力は語り尽くせません。ぜひ野外に出てヘビをじっくりと観察してみましょう。
腹のうろこで移動
陸上をヘビが移動する場合、例えば、首のあたりの腹側のうろこ(腹板)を地面の一点に押し付けさらに後ろに押すと斜め前へ体が動きます。その後ろの腹板を順番に同じ場所に押しつけます。この動きを左右にうねうねと体を曲げながら繰り返すことで前に進みます(蛇行運動)。水中を泳ぐ場合も同じように水を押して進みます。
▲シマヘビ(体長:80~200cm)
麦わら色をしていて4本の縞模様と黒目の周りが赤い特徴がある。背中の4本の縞は尻尾の部分から2本になる。中には体色が黒い黒化型もいる。畔でよく見かけ、気性が荒く、怒ると頭を三角にして尻尾を地面に叩き威嚇する
▲シマヘビの幼蛇
ヘビは子どものころ、模様が異なることが多い
脱皮は顔から!
硬いうろこに覆われる体は、成長すると窮屈になった皮を脱ぎます(脱皮)。脱皮の1週間前になると目の表面が白濁。目が元に戻ると脱皮を始めます。口先からめくれ、体を地面や障害物に引っ掛けて、裏返しに靴下を脱ぐように脱皮をします。山道や農道を歩いていると、時折ヘビの抜け殻を見かけます。たいていはアリなどに食べられ、バラバラになっています。抜け殻をよく観察すると、うろこの枚数からヘビの種類を特定できることがあります。
▲脱皮するシマヘビ
食事はあごを上手く使う
獲物を見つけるとかみ付き、相手が暴れる場合は胴で締め付けて弱らせます。左右に分かれた下あごの骨を交互に動かして獲物を口の奥に運び、胴体の筋肉を前から後ろに向かい徐々に絞っていくことで、胃に送り込みます。食事の後、口を開けている姿はあごの骨を元の位置に戻しているからです。
▲カエルを捕食するアオダイショウの幼蛇
関 慎太郎
自然写真家 びわこベース代表
よみきかせしゃしんえほん『うまれたよ! ヘビ』『うまれたよ! ヤモリ』
(発行:岩崎書店)、
日本のいきものビジュアルガイド『はっけん! 田んぼのいきもの』
(写真:関慎太郎 編著:大塚泰介/発行:緑書房)
など多数の書籍を出版。
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