自然の中で虫を見つけたら、まずはそっと観察してみましょう。そしてチャンスがあれば優しく触ってじっくり観察してみましょう。
▲ヤブガラシの花で蜜を吸うアオスジアゲハ。ストローのような口を伸ばし、翅をはばたかせながらお食事中。そのすぐ下でハエを捕まえて食べているハラビロカマキリがいる
まずはそっと近づいて観察
皆さんの身近にはどんな虫たちが暮らしていますか? 公園や学校、神社やお寺、道端の植え込みにある草花や樹木、水田や池、河川敷などの水辺を見てみましょう。蜜や花粉を求めて花にやってくるチョウやハチ、樹液に集まるカナブンやクワガタ、草木の葉を食べる芋虫や毛虫、水面に浮かぶアメンボや空を飛び回るトンボなどが見つかるかもしれません。
虫を見つけたら、網を振ったり捕まえたりする前にそっと近づいて観察しましょう。例えばチョウだったら、どのように口を伸ばし花の蜜を吸うのか? その時に脚や翅はどうしているか? 好みの花はありそうか? 近くでチョウを狙う天敵はいないか? などに注目してみましょう。すぐ捕まえてしまうと見えなくなってしまうものがあります。
昆虫を捕まえる場合には……
飛んだり跳ねたりして逃げる虫は虫捕り網で捕まえます。上手く虫が入ったら手を網の中に入れて虫を取り出します。虫は触り方を間違えると、つぶしてしまったり、翅や脚を傷つけてしまうことがあります。虫の嫌がる持ち方をすれば咬まれたり脚でひっかかれたりして人がケガをすることもあるので注意しましょう。
捕まえ触ってみることで虫の感触、脚や翅など体の動かし方や力強さなど小さな命の息づかいに気付きます。時には虫の出す匂いや音なども体験できます。目で見るだけでなく触れて感じて親しむことでより発見のある自然観察ができるかもしれません。
観察を終えたら虫はもとの場所へ返してやりましょう。また今度来た時にも出会えるように。お家に持ち帰る場合は目的は何か? 飼育して観察するため?(最後までお世話できるかな?)標本にして記録を残すため? しっかり考えてからにしましょう。
▲優しく触ってみよう。
ハラビロカマキリ:つかまずに歩かせるとおとなしくなる。
トホシカメムシ:刺激しなければ匂いは出さない。
▲ヤマキマダラヒカゲ:そっと手を出せばつかまってくれることもあるかも。
ナナフシモドキ:脚をつかむと自切することがあるので注意。
▲スズメガの仲間の幼虫は毒を持っていないので安心して触れる。大きく重量感があり、感触もさまざま。胸にある小さな脚とお腹にある吸盤状の腹脚、尾脚を使って歩く様子、頭を振って口から糸を吐く様子など発見も多いはず。
虫取り網を使うときのコツ
①花や枝先などにとまっている虫は横からさっと網を振る。地面にいるバッタや幹に止まるセミには背後から網をかぶせる。(網の枠で虫や植物を傷つけないように気を付ける)
②虫が入ったら手首をくるっとまわして網をたたむ。(口にふたをする)
③網を地面におく(口は下向き)などして、網の先をつまんで上に引っ張るようにする。(虫が網の奥、上の方にのぼってくる)
④手を網に入れて虫を取り出す。
網で捕まえた後、どうやって持つ? 昆虫を傷つけない持ち方
チョウやトンボはチョキの手で閉じた翅を挟みます。4枚の翅を押さえると暴れません。体の様子をじっくり観察してみましょう。
バッタは後ろ脚と体を、カミキリムシなど甲虫の仲間は脚がついている胸のあたりをしっかりつかみます。
注意したいこと
虫には身を守るために刺したり咬んだり、毒を持っていたりする種類がいます。不用意に近づいたり触ったりすると危険な虫がいることを覚えておきましょう。
虫に夢中で周りが見えなくなりケガをしないように気を付けましょう。場所や種類によって採集が禁止されていることもあります。活動場所の注意看板やホームページなども要チェックです。
▲オオスズメバチ(左)、チャドクガ(右)
野本康太
伊丹市昆虫館学芸員、自然観察指導員兵庫連絡会事務局
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