北海道白糠町を舞台にアイヌ民族と和人との歴史を描く映画「シサム」(ムは小書き)が9月13日から全国公開される。企画・制作は高田馬場でクリエーター専門に法務コンサルティングを行うプロテカ(新宿区高田馬場1)。(高田馬場経済新聞)
映画「シサム」完成披露上映会 出演者あいさつ
同作は、江戸時代前期の北海道を舞台に松前藩とアイヌとの間で行われた貿易や争いなどの史実を背景に、一人の青年の異文化との出合いと葛藤を描く。「シサム」はアイヌ語で「よき隣人」の意味。監督は中尾浩之さん、脚本は尾崎将也さん、主演は寛一郎さん。主題歌は中島みゆきさんの「一期一会」。
プロテカ代表で同作品のエグゼクティブプロデューサーを務める嘉山健一さんは、出版社の編集者として漫画家との契約に関わる中で、漫画家側に法律の専門家がいないことに疑問を持ち創業した。映画制作の経緯を「20代の頃から通う居酒屋『鳥もと本店』(杉並区)の店主が白糠町の隣町出身で、白糠町から魚介類を仕入れていた。店に置いてあった白糠町のふるさと納税のパンフレットが目に留まり『漫画のキャラクターを使うと良くなりますよ』と伝えたことがきっかけ」と振り返る。その後、担当する漫画家と共に同町を訪れ、棚野孝夫町長やアイヌ文化保存会の磯部恵津子会長に会い、アイヌをテーマにした映画作りを担うことになった。
「私もそうだがアイヌのことを知らない人は多い。北海道で独自の文化を築き暮らしてきたアイヌの人々のことを知ってほしいと思った。特に白糠町が立地する道東のアイヌに関する資料は少なく資料探しや時代考証にも時間をかけた。そういう意味ではアイヌを知る入門映画」と嘉山さん。
アイヌ文化保存会などのメンバーが料理の監修協力、踊りや演奏の指導を行い、同町で昨年6月から7月にかけて行われた撮影には町民約50人がエキストラで出演するなどの協力を得て完成にこぎ着けた。
嘉山さんは「誰もが国や組織に属して生きている。どこに属していようと人には百人百様の考えや生き方がある。主人公の選択はその一つ。それが正解かどうかは分からない。アイヌと和人の間に起こった出来事の中で変化する一人の人間の姿が、世界中で終わりの見えない争い事が続く今、自分自身の生き方を考えるきっかけになれば」と期待を込める。