いすみ市立中根小学校(いすみ市岬町中滝)で11月7日、地元のオーダー家具店「家具の大丸」(いすみ市岬町押日)による出張授業が行われた。(外房経済新聞)
授業が終わってなお質問攻めにあう大谷さん
講師は、同校卒業生で「家具の大丸」を営む大谷展弘さんと老舗家具メーカー「飛騨産業」の甚田匠平さん。
大谷さんは約3年ほど前から、電力会社が伐採する杉を活用した家具を製作。この杉は道路沿線に植えられていたもので、台風などにより木がなぎ倒されて電線に被害を与える前に電力会社が計画的に伐採している。
従来、杉は樹種によるニーズの低さや、耐久性の問題から切り倒された後に焼却処分されてきた。大谷さんはその杉を有効活用できないものかと思案を重ね、岐阜県高山市にある飛騨産業に相談。圧縮プレスと曲木の技術で木材の硬度を高め、「耐久性に優れた品質を生み出すことに成功した」という。その後、杉の木を伐採して丸太にする作業から製材、運搬までの業務を市内各事業者で分担し、飛騨産業で製作した天板を「家具の大丸」で足を取り付けて製品化している。
1年生と4年生の児童はこの杉を利用して作られた机と椅子を使っている。「製品を引き渡して使ってもらうだけではもったいない」と感じた大谷さんが、「環境学習の一環として開催できたら」と、いすみ市と同市教育委員会に提案し出張授業が実現した。
授業は、アロマオイルを使った杉の匂い当てクイズや、圧縮前と後の端材を見せ、児童たちにプレゼントするなど工夫を凝らした内容で進められた。児童たちからも質問や発言が続き、あっという間の45分が過ぎた。授業が終了した後も児童らは教壇を囲んで興味深く質問していた。
中村賢俊校長は「この授業を通して子どもたちが環境問題を考え、いすみでの『千産千消』を大切にしていってもらえたら」と期待を込める。
大谷さんは「この活動に地域の経済も巻き込んで根付かせていきたい。机椅子の高さが可変する製品ができれば、子どもたちの成長に合わせて6年間使うことができる。卒業時に天板を外してプレゼントしたら新しい板を付けて、また1年生が使い始める。そんな循環を実現できるようにするのが夢」と意気込む。