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夙川の一軒家洋菓子店「エルベラン」、リニューアルから10年

  • 2021年7月21日
  • みんなの経済新聞ネットワーク

 添加物を一切使わない夙川の洋菓子店「エルベラン」(西宮市相生町、TEL 0120-440-380)が7月、リニューアルから10年目を迎える。(西宮経済新聞)

 阪急夙川駅北側からほど近い場所に構える同店は1964(昭和39)年、オーナーシェフ柿田衛二さんの父・衛さんが西宮市常磐町で開業したのが始まり。6年後の1970(昭和45)年、現在の地に移転し、2011(平成23)年に柿田さんの手によってリニューアルオープンした。

 徳島から出てきて神戸の大手洋菓子メーカーで修業した衛さんは25歳で独立し、エルベランの前身「北欧の銘菓エルベ」を開業。職人肌でおいしいものを知る衛さんは「舌が駄目になっては駄目」と、家ではもちろん外食先のレストランでも「お金を払うから人工甘味料や化学調味料を使わないで料理を作ってほしい」と注文するほどで、自身が作るお菓子にも「うま味をいかに引き出すかが料理の基本」と、食材を生かすことにこだわったという。

 経営にも長(た)けていた衛さんの「自営はいいぞ」と話す言葉を聞いて育った柿田さんは、幼稚園のころから社長になりたいという夢を持っていた。「ケーキに憧れがあったわけではなく、いつも目の前にケーキがあったから」という理由で大学卒業後に「奈良学園前ドイツ菓子ゲベック」へ入社して洋菓子を学び、父の店に戻ってからフランスへ修業にも出た。

 そこで気付いたのが「フランスと日本ではお菓子の位置付けが違う」ことだった。フランスではお菓子の値段が高くて当たり前で、故郷の味など土地を表していた。街のお菓子店は3代4代と継承され最新とクラッシックの品が並ぶが、どれもはやりに左右されず文化になっていた。「日本のお菓子もはやりのファッションではなく文化にならなければと思った。そして何より、お菓子作りが面白かった」と振り返る。

 菓子職人の父の姿を見て育った柿田さんだが、父のやり方そのままの店を継ぐのではなく自分の店を持ちたかった。「自分のスタイルを守ってほしい」と願う衛さんと幾度も言い合いになった。「ドイツとフランスというお菓子のスタイルの違いも含め、自分がやったことに後悔や言い訳をしたくなる環境を作っては駄目」と、店の設計から造作・調度品に至るまでを自分の考える形にし、人力でしていたことをエレベーター導入で効率化を図るなど一気に全てやり変えた。

 建物は夙川の街並みに合うよう、一軒家でフランス風の店舗を表現。コンセプトは「店は街のもの、店内はお客さまのリビング、厨房はスタッフのもの」とし、「ショーウインドーは赤いレザー張りのソファをイメージし、お客さまの家でも生かせるようにと雑貨や小物のディスプレーにまで注意を払い喜んでもらえるように工夫した」。しかし、5年間は売れなかった。好みが衛さんと柿田さんの味に分かれたからだった。「おいしいだけでは売れない」と感じた。来店客が「これはおいしい。これは前の方がいい」と言ってくれるようになり自信がつくまでに10年掛かった。

店には57年たっても変わらぬ人気のレモンパイや、ノンホモ生クリームで仕立てたケーキを求めて親子3世代にわたるファンが訪れる。「同じものを提供し続けていることは大切な思い出を預かっているということ。本当においしい材料を使ってケーキというジャンルを作っているという意識を持ち、日々、一つ一つ丁寧に手掛けている」と柿田さん。

「夙川にはいい店がたくさんあるが伝わり切れていない。街が沈んでいる気がして、明るい話題があればと、先日も苦楽園のラットレースと異業種コラボをしてみた。この街がバスクのサン・セバスチャンのような美食とアートの街になり、文化になれば。そしてこの街の人と共に80周年を迎えたい」と笑顔を見せる。

 営業時間は10時~12時、13時~18時(売り切れ次第閉店)。火曜定休。月曜はギフト商品のみを販売するクッキーデーで、営業時間は10時~12時、13時~16時。

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