盛岡市所蔵美術品展「和田三造『昭和職業絵尽(えづくし)』から見る盛岡市旧町名と職人文化」が現在、もりおか町家物語館(盛岡市鉈屋町)大正蔵で行われている。(盛岡経済新聞)
魚売りなどの絵が並ぶ肴町のコーナー
大正蔵2階の「時空(とき)の展示室」では、市が所蔵する美術品を定期的に展示している。今回は洋画家・版画家の和田三造による昭和の世相風俗を描写した職業人物画シリーズ「昭和職業絵尽」を基に、市内の旧町名と職人文化を絡めて紹介する。
もりおか町家物語館の村岡初江さんは「盛岡にはその地域にいる職人や商売をしている人たちに由来する町名がたくさん残り、町名が変わっても古い名前で呼ぶ人も多い。昭和の浮世絵とも呼ばれる和田三造の版画と共に盛岡の文化についても触れてもらいたい」と話す。
「時空の展示室」と1階の展示スペースの2カ所で展示。旧町名の由来と、その地域に根付く職人文化や商人にちなんだ絵を紹介する。「町家物語館がある鉈屋(なたや)町は、鉈を売る店が多かったからと思っている人もいるが、実はそうではない」と村岡さん。市が作成した「城下盛岡町名由来記」によると、京都の富豪・鉈屋長清が鉈屋山(しゃおくさん)菩提(ぼだい)院という寺を建立したことが由来とされている。江戸時代から湧き水が豊富な地域で、酒やみそ、しょうゆの製造が盛んだったことや、同館の建物が以前は岩手川酒造の工場だったことから、鉈屋町のコーナーでは酒杜氏(とうじ)の絵を展示する。
鮮魚や乾物を扱う魚商人や荒物商人が住む町だったことに由来する「肴町」のコーナーでは金魚屋や魚売りなどの絵、油商人が住んでいたことに由来する「油町」のコーナーではガソリンサービスの絵などを展示する。
関連資料として、鉈屋町周辺地域にいる職人の技も紹介。石澤和竿毛鈎(ばり)工房の和竿(わざお)や、みちのくあかね会によるホームスパンの製造工程のパネルを展示している。11月30日と12月1日にはみちのくあかね会が展示販売会を開き、1日は糸車体験も行う。
村岡さんは「観光で訪れた皆さんなど盛岡の旧町名になじみのない人や、普段から旧町名を使っている市民の皆さんにも、絵を通じて町名の由来や職人たちについて知ってもらいたい。併せて、市が所蔵する貴重な作品を多くの人に見てもらえれば」と話す。
開館時間は9時~19時(最終入場は18時30分)。入場無料。第4火曜休館。12月15日まで。