東大阪市民美術センター(東大阪市吉田6、TEL 072-964-1313)の特別展「バンクシー展 −分離壁に、アート界に、そして社会に風穴を−」が11月1日、始まった。(東大阪経済新聞)
バンクシーさんのシルクスクリーン作品が並ぶ
イギリスを拠点に活動する正体不明の覆面アーティスト・バンクシーさんの作品を紹介する同展。梶原浩喜財団(北九州市)が所蔵するバンクシーさんのシルクスクリーン作品35点を展示し、「バンクシーがアートを通して何をしようとしているのか」を探る。
バンクシーさんは1974年ごろイギリスのブリストル近郊で生まれ、ブリストルのストリートでグラフィティ活動を始めたとされる。同センター学芸員の田中由紀子さんは「ブリストルは奴隷貿易の歴史がある街で、権力に立ち向かってきた街。それを自然に享受して育ち、バンクシーの反骨精神は育まれていったのでは」と解説する。
同展のポスターなどに使っている「Love is in the Air」(2003年)は、イスラエルによる軍事占領と攻撃に対して投石で対抗するパレスチナの若者をモチーフに描いたもので、作品では、石ではなく花束を持たせている。田中さんは「実際は武力によって平和を勝ち取ろうとしている訳だが、バンクシーはそれ以外の方法があるのでは、と提案しているのでは」と解説する。会場には、コンクリート壁の写真をベースに同作品をデザインし、壁に作品が描かれている様子を再現した幅10メートル以上の展示物もある。
1987年、ロンドンのオークション会場でゴッホの「ひまわり」が当時最高額で落札された際の画像を基に制作された作品「モランス」は、「『愚か者たち』という意味のタイトルが付けられており、投資目的や、自身の絵画も含めて高額で絵画が売られるアートマーケットの仕組みに批判的なバンクシーが、皮肉を込めた作品」という。
会場では、世界の紛争や社会、法律などをテーマにした作品を紹介すると共に、ステンシルを使ったストリートアート技法やサザビーズでのシュレッダー事件、社会貢献活動、メディア戦略など、さまざまな側面からバンクシーさんを紹介する。
田中さんは「アート・テロリストと言われることもあるが、バンクシーがやろうとしていることは危険な社会を作ろうとすることではなく、愛があり、平等で公平で幸せな社会を武力やお金によって作るのではなく、別の方法でできるのではないかということを、作品を通じて伝えているのではないか」と話す。
11月16日と12月8日は、学芸員によるギャラリートーク(14時~15時)を行う。
開催時間は10時~17時。月曜休館。観覧料は=500円(高校生以下、障害者手帳所持者・介助者1人含む、東大阪市内在住65歳以上は無料、住所・生年月日記載があるものの提示が必要)。12月26日まで。