琉球王国時代から神様の飲み物として、御神事や豊年祭などの祭事に作られ、ささげられてきた 「お神酒(ミキ)」を手作りするワークショップが11月3日・4日の2日間、徳之島・伊仙町の前里屋敷(阿権)で開催された。(奄美群島南三島経済新聞)
全員で持ち寄った米から作ったかゆをかき混ぜる様子
15世紀半ばに成立した琉球王国の時代から、琉球・奄美の地では神話や自然、祖先を崇拝してきた。異界や他界からの神々に五穀豊穣や子孫繁栄の祈りをささげてきたこの地域では、祭政一致のため、神々と交信する巫女(みこ)組織が設立され、女神官として王国各地に配置された「ノロ(祝女)」により神と人をつなぐ飲み物であるミキが作られてきた。
現在、奄美群島、沖縄諸島で見られるミキは、米、サツマイモ、砂糖などを原料とした甘い発酵飲料のこと。アルコールは含まず、特別な機会ではなく、スーパーなどで日常的に手に取ることができる。この日講師を務めた野崎久美さんは、大分市出身で現在奄美大島瀬戸内町の地域おこしとして活躍中。10月に開催された「島づくり人材養成大学」での徳之島来島をきっかけに、この日のワークショップ開催へこぎ着けた。
1日目は11人、2日目は24人が参加し、ミキの歴史、日本人にとっての米の意味、日々家事の一環として米を洗う際にも一工程ずつを大切にすることなどの解説でワークショップは始まった。
参加者は米を洗い、かゆを作り、ある程度熱が冷めた後に徳之島産のサツマイモをすりおろし、再度木べらでかき回す工程を一人一人体験した。この工程の間に、それぞれが持ち寄った白菜、ニンジン、リンゴ、ショウガ、青パパイアなどの野菜を千切りにし、地元産の塩と発酵済みのミキを合わせて水キムチも作った。全員交代で塩もみする中、「既においしい」と味見をしながら歓声が上がった。
1ccに1億個以上の乳酸菌が含まれるというミキには、腸内環境を整え、胃腸の働きを助け、夏場や離乳食、母乳を与える母親の滋養食としての役割があり、長い間、先人の知恵がこもった地元発酵食として親しまれている。
参加者の一人、松本ひとみさんは「昔ながらの伝統を受け継いできたミキ。米とサツマイモだけで作れるシンプルなミキは奥深く、飲むだけかと思っていたが水キムチにも使えて目からうろこ。良いものは長年受け継がれていくことを実感した」と話していた。
野崎さんは「30人を超える参加者の皆さんの、発酵飲料ミキへの関心の高さを実感した。発酵自体は目に見えない菌の働きでつながっていくので、奄美と徳之島がミキを通じてつながれたことに感謝したい」と振り返る。