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世の中のほとんどの問題はクリエイティブ×マーケティングで解決できる。PARTY・中村洋基さんの仕事術

  • 2019年12月6日
  • ライフハッカー[日本版]

敏腕クリエイターやビジネスパーソンに仕事術を学ぶ「HOW I WORK」シリーズ。 今回は、クリエイティブディレクターの中村洋基さんにお話を伺います。

電通に入社し、多数のデジタルキャンペーンを手がけたのち、2011年に独立。4人の仲間とクリエイティブエージェンシー「PARTY」を立ち上げました。現在は電通デジタル客員ECD、ヤフー マーケティングソリューションズ統括本部ECD、「VALU」社外取締役、「TINTO COFFEE」オーナー、ラジオ司会など、幅広い活躍をされています。

国内外250以上の広告賞の受賞歴があり、クリエイティブのプロフェッショナルである中村さん。しかし、それだけではビジネスがうまく進まないときもあったそう。それを解決する突破口が「マーケティング」でした。

プロモーションの考え方を「働き方」に応用する

——これまでの経歴を教えてください。

大学3年で、演劇を志すのをやめてから、あらゆるデジタルの制作をやっていました。

器用貧乏な気質と「どんな仕事でも死ぬ気でやれば、新しいことの習得はなんの障壁でもない」と思っていたので、Flashを中心として、Webデザイン、コーディング、PHP、チラシデザイン、3Dソフトでパース制作、VJのモーショングラフィック、BSデータ放送配信、DVDオーサリングなど、なんでもやりました。

前職の電通で、たまたま日本でも屈指の広告プランナーさんたちとご一緒に仕事ができる機会に恵まれ、デジタルの技術に加えて、一流のクリエイティブの思考・仕事の進め方も吸収できた。

この掛け算から人とは違う価値が生まれたのかなと思います。

ただ「PARTY」を立ち上げてからは、少々大変でした。クリエイティブだけやっていればよかった独立前と違って、自分で経営・人事・営業も担当しないといけない。でも、そのおかげで、クリエイティブだけやっていてはわからない視点が持てたと思います。

Photo: Kayoko Yamamoto

——マーケティングを意識したきっかけは?

広告クリエイティブ、特にデジタルが絡んだものとしては、経験・思考量、成功体験量で日本で有数の自信があります。ただ、提案の時点からまったく的外れなことがままありました。いま思うと、自分が勝手に描きたい「作品」のイメージに固執してたんでしょうね。

とある仕事で、P&Gのマーケターと元P&Gのマーケターチームに囲まれたことがきっかけです。「これがマーケティングか」と目からウロコの体験でした。

代理店クリエイティブ時代の「マーケ資料」に見ていた退屈なデータの羅列とは圧倒的に違う、濃い思考の世界がそこにありました。

基本的にクリエイティブの考え方は「水平思考」で、ルールや概念にとらわれず、非連続的にアイデアが落ちてくるものです。良いアイデアというものをあまり分解整理せず、質の良い多量のインプットとアウトプットの鍛錬を繰り返すことで、鍛えられてきます。

対して、マーケティングは「垂直思考」。仮説・調査・検証によって、WhoとWhatを理知的に定義していく地続きの思考です。

例えばライフハッカーの記事を読んでいる人は誰なのか?効率的に生きたい人、ビジネスで成功したい人は誰なのか。その人に一番刺さる話題は何か、頻度は?シェア率は?いつ、どこで読む?仮説と調査で掘り下げ、ターゲットが「こう言われればついライフハッカーの記事読みたくなる」というインサイト(洞察)に到達する、という行為です。

マーケティングの垂直思考でターゲットとインサイトを定義し、それを通常の何倍もの確率で伝達させるクリエイティブ。このふたつを組み合わせたら、アイデアが独りよがりにならず、プレゼンが理解され、目を見張る結果が出続けました。

そして、この考え方は。広告だけでなく、人生のほとんどすべての課題解決に当てはまるなと思いはじめています。

アイデアのタネはコツコツ積み重ねる

——クリエイティブの仕事をする上で、アイデアに困ったときは?

アイデアで行き詰まるということは、あまりありません。 まずアイデアから考えないで、インサイトを考えます。

インサイトは人間や企業の行動に促しているので、そう変わらないし、有限です。

「シェアしたくなる」「おトクだから試してみる」「面白く見える」「友達に勧められたから」などなど、攻め手がまず常にあります。アイデアはその課題が達成できれば、極論面白ければなんでもいいわけで、無数にバリエーションがあるともいえます。

たとえば、ピクサーの映画。主人公が「熱帯魚」とか「おじいちゃん」とか「脳内の感情を擬人化」とか、成功のセオリーから逸脱したニッチに見えるものであっても、語るテーマが「かわいい子には旅をさせよ」とか「自分の才能を信じろ」とか普遍的なメッセージに落ちているから、共感の分母がデカくなり、クリエイティブな内容に見えるのではないかと思っています。

クリエイティブの鍛錬法は、賞を受賞したネタを集めて抽象化するという作業をしています。広告に使われているアイデアのコアな部分や共通点を捉えて、自分が応用できる状態に要素分解するんです。そして、ストックしていく。

Photo: Kayoko Yamamoto

例えばPARTYの事例で「キットカット」の「バレンタインポスト」というものがあります。

Twitter話題ランキング8日連続1位をとった、数多くシェアしていただいたキャンペーンです。自分のSNSアカウントにバレンタインチョコの「ポスト」を設置して、バーチャルでチョコを送りあえるしくみです。

バレンタインにチョコをあげる行為をブーストさせたい、という課題に対して、「本命でも義理でも、チョコを送るコミュニケーションは、元来みんな好き。むしろSNSのおかげでもっとこの気持ちは高まっている。メチャクチャ簡単だったらもっとやるはず」というのがインサイトでした。

ここに「CtoCで自分の軒先をつくる系」という、成功事例のメソッドを掛け合わせたものです。

——仕事に欠かせないツールは?

打ち合わせはいつもビデオカンファレンスなので、「ZOOM」は欠かせません。ほかにもビデカンのためのアプリはいろいろありますが、ZOOMが圧倒的に品質が良いです。

正直「打ち合わせのための移動」って、ほぼ無駄です。だって1時間の打ち合わせをするために片道1時間かけて移動したら、往復合計で3時間かかるんですよ。その移動時間で、2つミーティングできますよ。

4Gになって、YouTubeがスムースに観れるくらいしかみなさん恩恵を感じてないかもしれませんが、地味にビデカンの効率は革命的に上がっています。「やっぱり直接お会いしないと」という方がまだ多いのですが、きちんと用意すると、現実のミーティングを超える体験効率があったりします。

——今回は資料をプロジェクタで共有いただきながら伺っていますが、プレゼンのコツなどを教えてください。

Photo: Kayoko Yamamoto

これも、ZOOMでもやっているリアル版「画面共有」です。話がぶれなくて済むんですよね。画面なら全員が同じページに集中できるのがメリットだと思います。

目的に対して最小限のことしか書きませんし、ミーティング中に変わったことがあればその場で編集する。ミーティングが終わった後、議事録を送りつける人がいますが、あれほとんど誰も見ないと思います。画面共有の内容を再編集したログを共有するだけでいいはずです。

プレゼンのコツは…。私もあまりうまいほうではないですが、誰でも短期間に伸びる方法が2つあります。ひとつは、自分のプレゼンを動画に撮ってレビューすること、もうひとつは、ストップウォッチで時間を決めて虚空に向かってプレゼンしてみることです。2つは似たように見えますが、ちょっと違います。

動画を撮るときは、「自分のクセ」について見ます。何を言っているか判然としない、偉そう、思ったより伝わっていない…。自分を客観視する、舞台役者的なアプローチ。

ストップウォッチを使うときは、「プレゼン資料」について見ます。何かしゃべりづらいときは、そのスライドがうまくない証拠です。たいがいは、ひとつのページで多くのことを言おうとしていることが理由です。

ひとつのページで言いたいことは一つだけ。しゃべるごとにスライドに手を入れていきましょう。3往復くらいすると、スライドと脳内が一致してくるのではないでしょうか。

会社は利用するべき単なる「器」

——最近読んだ本でおすすめは?

マーケティングとクリエイティブで、ほとんどの問題は解決できる。これは僕が本当に思っていることですが、とはいえロジックとアイデアだけでは解決できないこともあります。それは「人の心の機微」です。

実際、ビジネスのほとんどの問題は人間関係にあるなぁと感じます。

その部分について考えるのに、最近読んだ本では『他者と働く─「わかりあえなさ」から始める組織論』(宇田川元一著/NewsPicksパブリッシング)がおもしろかったですね。組織論や、ビジネス上の人間関係に悩む人にはぜひ読んでほしいです。

端的に言うと「人の話を聞け!」ということですが、編集は中島洋一さんで、この人が関わる本や記事は、深い命題を伝えようとする強い熱量を感じるので、とても好きです。

Photo: Kayoko Yamamoto

——組織やチーム作りについて心がけていることを教えてください。

PARTYは、メンバーがみな何かのプロフェッショナルである実力者揃いです。その力を発揮できて、自分で考えて動けるように、思考停止の人が誰もいないように、というのは気をつけています。

人生の多くの時間をはたらくことに割くわけで、組織のために自分があるのではなく、自分が活躍する器として組織がある、と考えています。

30名ほどの少数の組織なので、まだ全員と定期的に面談しますね。60時間くらいかかっちゃいますが、全員大好きなので、楽しくもあります。

——「中村さんはプロジェクトの細かい部分まで見ている」と、PARTYの社員の方から伺っています。

見ますね。細部に魂が宿るので。

ただ、ぼくが「クリエイティブディレクション」という名目で細かく監修することで、社員の失敗体験と学びの瞬間を奪っちゃっているかな、とも思います。

ぼくは若いころから責任も失敗体験も人一倍でした。たとえば、プレゼン中、相手が寝ていたことがあります。すると「悔しい!今度から、絶対寝かせないためにどうするか?」と工夫するわけです。

ぼくが毎回プレゼンしたら、そういった挫折と成長の機会を奪っちゃうわけですよね。結局、責任がないと人は伸びないんだと思います。

個人的には成功に結びつくようにと思ってアドバイスするけど、失敗という「体験」を奪っていることにならないかって。プロとしては失敗は許されないので難しいですけどね。

PARTYだけではなく、どの会社も同じです。法人に人格があるなんてのは、たんなるブランドの幻想です。大事なのは、中にいるあなたです。あなたの大事な人生の時間を、どうワクワクする仕事に従事できるか?毎日楽しいこともつらいことも、誰だってあります。でも、もっともカタルシスがあるのは、自分の仕事を成功できた時です。

テクノロジー、アイデア、デザイン、最高のチームで、毎回本気で、試行錯誤を繰り返し、最高の結果を出して、打ち上げでムチャクチャ酔っ払って、寝る。PARTYはそんな会社で、ぼくもそんな人間です。

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Photo: Kayoko Yamamoto

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