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トラウマは予防できる。災害直後にやるべきこと、やってはいけないこと

  • 2018年11月9日
  • ライフハッカー[日本版]

台風や豪雨、猛暑、地震…と、例年以上に北から南まで各地で自然界が大暴れしていた今年の日本列島。もはや日本のどこにいようとも、「いつ、何が起きてもおかしくない」と、物質的な備えを強化した方も多いのではないかと思います。

また、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など、災害が人の心に与える継続的な影響の大きさにも、改めて注目が集まっています。

被災の当事者でも、そうでなくても、もはや誰もが人ごとではないのがこうした急性のストレスによる「心身への影響=トラウマ」です。

災害がきっかけのトラウマは予防できる

トラウマは、「災害直後に意識してやるべきこと、意識してやらないようにした方が良いこと」を知っておくと、予防することが可能です。

今回は「トラウマ」を理解し、非常時における「心身の防災頭巾」になる情報を、トラウマケアの専門家である藤原ちえこさんにお伺いしました。

起きてほしくない事態が起きてしまった、その時のために。心身のセーフティーネットを用意しておきましょう。

トラウマは怖くない。自然な身体の反応のひとつ

「トラウマ」というと、とても重苦しい印象があるかもしれません。しかし、トラウマが全くない人など、この世には存在しません。

もちろんその大きさや深刻度が高い場合は、長い間トラウマ症状に悩まされてしまいますが、小さなレベルのトラウマというのは、日々私たちの中に生まれていきます。

がん細胞も毎日のように私たちの内側に生まれていますが、ある程度健康な状態であれば、新陳代謝の中でそれを処理して健康を保つことができます。

それと同様に、小さなトラウマは日常生活の中で生まれても、周囲にいる大切な人々との暖かい関わりや、自身が時間を忘れて没頭できるような楽しい時間を過ごすことで、解消していることがあるのです。

トラウマセラピストの藤原ちえこさんによれば、トラウマとは「(急性の)ストレスに対する人間の身体の自然な反応が、解消されずに心身にとどまっている状態」。

そう、あくまでも人間が生きていく中での「自然な反応」なのです。

この文章中で「心」ではなく「心身」と表現していることにもご注目ください。

トラウマは「心の傷」になるよりも前に「身体反応」として起きるものだということを知っておきましょう。

トラウマは、きっかけとなる出来事の大小には無関係

トラウマとストレスとなった出来事の大きさは、無関係です。小さな出来事でも大きなストレスとなる人もいれば、誰もがストレスと感じるようなことでもトラウマどころか、へっちゃらな顔で武勇伝にしてしまう人もいます。

逆に繊細な人は、そうした武勇伝を聞いただけでトラウマになってしまう場合も。

被災した当人でなくても、ニュースを見ているだけで深刻なトラウマ症状に陥ってしまうのは、こうしたケースでしょう。このように、トラウマとは出来事の大小に関わらず、その影響は個人差が大きなものでもあります。

アメリカで注目の野生動物から学んだトラウマケア

911や帰還兵のトラウマが社会問題にもなっているアメリカでは、「心の記憶」ではなく「身体の記憶」を調整していくアプローチが最新のトラウマケアとして注目を浴びています。

それが、神経生理学者のピーター・A・リヴァインが開発した治療法「ソマティックエクスペリエンシング®︎(以下SE)」です。

リヴァイン博士は命に関わる事態に陥ったときの野生動物の反応から、動物の一種である人間に応用できるトラウマの対策を開発しました。

野生動物のトラウマ解消法とは?

野生動物がより強い動物に襲われた時には、まず「逃げる」「闘う」という反応をします。また、もう一つの選択肢として「フリーズ(固まる)」という行動をとる場合もあります。「死んだフリ」で敵から逃げるは、最終手段と言ってもいいでしょう。

これらは自律神経系の反応ですから、自分で意識せずに起こるものです。

3つの選択肢はいずれにしても極度の緊張状態になります。

野生動物は危険が去ったとき、それを「ブルブルっと体を震わせる」など、身体反応を起こして処理し、リセットします。このリセットがあることで、神経系にトラウマが後残りしないというのです。

人間、特に大人はその知性によって「なんのこれしき!」と、「恐怖による震え」を抑制しまうことが多いもの。

実はこんな風に、動物としての自然な身体反応を制御してしまうことで、「危機的な状況下のストレス」が神経系に封じ込められてしまいます。

先ほどお伝えした通り、ストレスに対応する神経系の反応には個人差があります。

竹のように上手にしなって元に戻る弾力性(レジリエンス)がある神経系の持ち主であれば良いのですが、繊細な神経系の持ち主は安らぎのモードに戻る自己調整がしにくいことも。

そして、もともと弾力性がある人でも、ストレスが長きにわたれば、気づかない間にトラウマを溜め込んでしまうことになるのです。

逆に「メンタルが強い」と自分で信じ込んでいる人ほど気づかない間にその影響が強くなっている可能性も。

災害のようなトラウマ的な出来事が起こった時は、誰でも動物レベルの反応として、心も身体も不安定になるのは正常なこと。ちゃんと自分の恐怖に気づき、その身体反応を完了させてあげたほうが良いのです。

だからこそ、深いトラウマを受けてしまう前に、「自分の心身に何が起きるか」「どういう対応をすべきか」を事前に知っておく必要があります。

緊急事態で起こる心身の反応とは

Image: Photographee.eu/Shutterstock.com

どんなに心身が丈夫な人でも、いざことが起きた時に影響が全く起きないということはありません。

「いつもの自分」でいるつもりでいても、実際に心身がそれらの影響を処理し、受容するにはそれなりに時間が必要であることを知っておきましょう。

■災害直後:心の反応は?

災害直後は多くの人がショックを受け、呆然としてしまいます。「解離」といわれるような「心ここに在らず」の状態です。

麻痺してしまったかのように恐怖や痛みから切り離され、ぼんやりとした感覚がする 時間や場所の感覚、人との関係が曖昧になる 普段の自分ならちゃちゃっと対処できるようなことが、上手にできなくなる 混乱して集中できず思考が働かない 恐れや深い悲しみ、無力感や疲労感 休んでも休んだような気がしない どこかへ消えてしまいたいような気持ち など

これらの心の反応は、長く続かないのであれば正常なことです。

時には、動揺や不安が高じて過度な警戒心を抱いたり、イライラして感情がコントロールできず、疑心暗鬼になったり、被害妄想に陥る、激しい怒りを感じ、批判的になる、など自分の心に嵐が吹き荒れている感じがする人もいるでしょう。

むやみに誰彼ともなく責めたい気持ちになるかもしれません。

■災害直後:身体に起こる反応は?

心だけではなく、身体にも以下のような反応ができるのは極めて自然な状態です。

こうした反応を怖がらず、「身体反応が活性化している」のを認めることから始めましょう。

心拍が速くなる 呼吸困難 血圧の上昇 胃が縮む、喉がつかえる 筋肉のふるえ 皮膚が冷たくなり、思考がぐるぐるする

上記の反応は、抵抗をしなければやがて消えていきます。 また、他にもいつもの自分と違う行動に気づくかもしれません。

睡眠困難 過食、塩辛いもの、甘いものを食べたくなる アルコールや薬剤を過剰に摂取したくなる

こうした衝動が起きた時は「自分は深く動揺しているのだな」という事実をまず受け入れてみましょう。それによってこうした感覚も徐々に落ち着いていくはずです。

■過去のトラウマが呼び起こされることもある

緊急事態の当事者でも、そうでなくても、人によっては内側では未解決だった古いトラウマが再度呼び起こされることがあります。

安心感や信頼感が揺るぎ、パニックになっているような場合は、まず「自分の名前」「年齢」「今日の日付」「今いる場所」を思い出してもらうと、少しずつ落ち着いてくると思います。

心身に起きうる様々な可能性を列挙しましたが、どんな症状が出るかは、人それぞれです。

もちろん不安定な状態が長引いたり、繰り返し現れたりする場合は、トラウマ治療の専門家の力を借りたほうが良いでしょう。

トラウマ予防:災害直後にやるべきこと、やってはいけないこと

Image: Photographee.eu/Shutterstock.com

今回の記事は、トラウマ治療に関わるリヴァイン博士や、その同僚のジーナ・ロスがSEやその他のメソッドに基づいて書き、藤原ちえこさんが翻訳した災害直後のトラウマ予防ケアを参考に執筆しています。

その文章の中から「災害直後にやるべきことと、やってはいけないこと」について、以下にそのままご紹介したいと思います。

◎身近な人の安否をできるだけ早く確認するようにしましょう。

必要な情報を得るため、ニュースを一定の時間だけ視聴し、それからテレビやラジオをしばらくの間消しましょう。さらに情報を得るために、2時間ごとにテレビをつけてもいいですが、そこで繰り返し流されるトラウマ的な映像には引き込まれないようにしましょう。

こうした映像は、我々を取り込む並はずれた力を持ち、後で気分が悪くなることが分かっていてもスクリーンの前から動けなくしてしまいます。テレビを見続けたいという誘惑に抵抗しましょう。

◎孤立してはいけません。

家族や友人で集まり、お互いをサポートしましょう。身近な人の理解やサポートによって、私たちははるかに早く悲劇に対応できるようになります。

たとえ私たちが他の人よりもうまく対処できているとしても、他の人の恐怖と無力感を認めることは何よりも大切なことです。

ショックな出来事に対する人の反応はそれぞれ異なります。正しい反応、間違った反応があるわけではありません。

◎あなたの反応が自分だけ、あるいは友人の助けだけでは対処しきれないほど強いと感じる場合は、専門家の助けを求めましょう。

これはあなたがおかしかったり、弱かったりするということではありません。

◎何もやることがないという時間を持たないようにし、なるべく計画的なスケジュールを立てましょう。

◎近所のYMCAや教会などの集会所でグループを組織し、集まりましょう。

◎自分の持つリソース(資源)、つまり自分を落ち着かせたり、強く感じさせたり、より地に足がつくように感じさせる助けになるようなものに何でも注意を向け直すことが重要です。

人、活動、場所といった自分のサポートシステム全般に注意を向け直しましょう。

映画や編み物、庭いじり、料理、子どもやペットと遊ぶ、自然の中に行くなど、自分が没頭できることをやってみましょう。

◎自分の感覚、感情、考えを書き出しましょう。

書くことで不安を解放し、コントロールを取り戻すのに役立ちます。

◎十分に休息しましょう。

非常時はアドレナリンに 突き動かされ、身体を疲労困憊させがちになるので、意識的に休みましょう。

◎他の人や自分に、トラウマを深めることになるような反復的な方法で自分の体験を語らせないようにしましょう。

代わりに、この悲劇/大惨事についてお互いに聴き合うサポートをしつつも、始めから終わりまでを全部一度に話さないようにします。

自分が感じている感情を、たとえ嫌なものであっても感じるようにしてみましょう。怒り、激怒、復讐心は人災の後に起こる非常に自然な反応です。

自分の感情を感じ、それを理性的な枠組みの中で表現しましょう。これによって、自分を圧倒することなく感情を感じることができ、強迫的思考にとらわれないですむようになります。

◎感情は行動ではありません。

生産的な行動を取るようにしましょう。

◎活動を続け、病院でのボランティアや、献血をしましょう。

お金を寄付したり、被災者のヘルプラインで援助することもできます。トラウマを受けた友人や家族の話に、もし彼らが怒っていたり、責めたりしても批判することなく耳を傾けてみましょう。彼らが一人になれるよう、彼らの子どもを預かったり、家事を手伝ったりしてみましょう。

バランスを取り戻すためにできること

Image: Supawadee56/Shutterstock.com

神経系が過剰に刺激された時に、そのエネルギーを解放し、バランスを取りもどす時にも様々な反応が起こります。これらは回復に向かっている証拠であり、良きものです。

震え、発汗 身体の温かさ お腹が鳴る 深い呼吸 泣く、笑う

こうした反応が身体に起きてきた時は、「自分が感じていること」をただ観察します。そうやって、身体が反応したいだけ思う存分反応をさせてあげるのです。

生物は自らのバランスを取り戻す能力を持ち合わせています。起こるべきことが起こる、その時間を十分に身体に与えてあげましょう。

また「グラウンディング=地に足をつける」を意識すること。「身体にいる自分を感じる」のも、とても大事です。

災害直後のトラウマを予防するエクササイズ2つ

Image: Photographee.eu/Shutterstock.com

「災害直後のトラウマ予防ケア」に書かれている2つのエクササイズをご紹介しますので、心身が不安定な感覚がする時にやってみてください。

また、スポーツやエアロビクス、ウェイトトレーニングなども「うつ」や攻撃的な気持ちを解消するのに役立つそうです。

エクササイズ1: グラウンディング

椅子に座り、地に足がついているのを感じます。 太ももを押し、座面に触れるお尻を感じ、背中が椅子に支えられているのを感じます。 周りを見回し、赤か青の色がついているものを6つ選びます。 これにより今この瞬間にいること、より身体が地についていることを感じられるようになります。呼吸がゆっくりと穏やかになっていくのに気づきましょう。 外に出て草の上に静かに座りたくなるかもしれません。地面に座りながら、大地にお尻が支えられているのを感じてください。

エクササイズ2:感情の入れ物としての「身体」を感じる

身体の各部分を手でやさしくぱたぱたとたたいてみます。手首に力を入れないように楽な状態で行いましょう。 あなたの身体がよりちくちくしたり、生き生きしたり、はっきりと感じられるかもしれません。感情によりつながりやすく感じられるかもしれません。

ショックで心ここにあらずな状態にある時、フワフワとして自分の存在を希薄に感じる時、こうしたワークを行うことはとても有効です。

自分と外の世界の境界線がはっきりして、心身のバランスを取り戻す助けになります。

何が起こってもおかしくない時代だからこそ。心と身体の仕組みと反応を知り、なるべく健やかに荒波を乗り越えていく備えをしておきたいですね。

小松ゆり子/パーソナル・セラピスト

音楽、カルチャー、リラクゼーションを融合する「relacle」「CHILL SPACE」スーパーバイジング・ディレクター。南青山のプライベート・アトリエ「corpo e alma」を中心にセラピー・セッションやセミナー活動を行う。

東洋的な押圧とロングストロークやストレッチングを多用し、植物や鉱物の力をフュージョンさせたオリジナルメソッド「VITAL touch therapy」を提唱し、密度の濃い「パーソナル」なスタンスでオーダーメイドの施術を行っている。

約12万人以上を動員する音楽フェスティバルSUMMER SONICで10年連続セラピーブースを展開するほか、新宿のシェアオフィス「HAPON」でのオフィスリラクゼーション、アパレルブランド「かぐれ」でのセラピーや講座など他業種とのコラボレーションも多数。現代人が都会でバランスを保ちながら生き抜く知恵やプリミティブな五感を取り戻す方法をさまざまな角度からナビゲートする。

連載「今を生き抜くためのセルフケア術」をもっと読む>>

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