Amazonでも好評価の書籍「頭のいい子の親がやっている『見守る』子育て」の著者、小川大介先生が、悩める親たちにアドバイス。「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」など、子育てに関するありとあらゆる悩みにお答えします。連載第36回目のお悩みはこちら。
【お悩み】
この春に小学校に入学した息子がいます。将来的には中学受験もさせたいと考えており、勉強習慣をつけるためにも、自宅学習の時間をとり始めました。最初は5分くらいから始めて、少しずつ時間を伸ばしていき、今は10分くらいのタームでやっています。
でも、私がちょっと目を離した隙に、遊んでしまっていることが多々。10分ほどの短い時間なのに、気分のムラがあったりして、なかなか続きません。そもそも「勉強しようか?」と声をかけてもやりたがらないことが多く、こんな感じでこの先大丈夫なんだろうかと不安です。
私もとにかくやらせたい気持ちから、「早いとこやっちゃおうよ」と、“嫌なことは先にやっとこう”的な言い方に、うっかりなってしまうことも。もっと楽しんでできるようになって欲しいと思っているのですが、どうすればいいでしょうか?(まめいぬさん・32歳)
【小川先生の回答】
■“10分は短いけど、いろいろできる”という時間の感覚を身につけさせる
「10分がんばろう」と言われても、おそらくお子さんはその10分がどのくらいなのか、わかっていないのだと思います。子どもが時計の読み方を本格的に習うのは、小学2年生の「時間と時計」という授業が最初。1分は60秒で1時間は60分という時間の概念を理解するのは、まだ1年生のお子さんには難しいでしょう。そのため「10分」と言われてもピンとこないのが正直なところだと思います。
今はまだ時間の概念を理解させる必要はありませんが、早いうちから時間の“感覚”を身につけさせてあげるとよいでしょう。例えば、本人が遊んでいるときに時間を計り、「今何分遊んでたでしょう?」とクイズにします。正解か不正解かはどうでもよくて、“自分の時間というものが思ったものと違うものだな”とか、“時間って意外と早く経つな”というのを感じることが大切です。そのうえで、「じゃあ10分勉強してみようか。10分ってちょっとだけどね」とやってみてください。そして終わったら、「10分って疲れる度合いでいうと、たいしたことない時間だね」、「10分あると結構文字数書けるね」など、体の感覚や成果を意識させる声かけをします。
“10分や20分続けることは苦でもなんでもない”という体の感覚と、“限られた時間の中でもできることはいっぱいある”という教え、この2つを育ててあげると、隙間時間の勉強も上手になりますよ。
■“できたら褒める”で子どものテンションを上げる
お母さんも自覚されているようですが、“勉強=嫌なこと、しんどいもの”のように扱ってしまうのは、やはりよくありません。そういった間違った刷り込みは、勉強へのハードルを上げてしまいます。“10分勉強することなんて、たいしたことない”ということがわかれば、もっと気軽に勉強に取り組めるようになると思います。
事実、勉強するのは普通のことだし、わかったらとても面白いものです。だから、子どもがわかったときはしっかり褒めてあげることも大切です。褒め方のコツは、「すごい!そんなことまで知ってるんだ!!」、「やるねー、早いね!」など、“自分の子どものときに比べてあなたはすごいね”というメッセージを伝えること。私も息子が小さい頃、「お父さんの子どものときより絶対賢い!」とよく言っていましたが、息子はすごく喜んでいました。そして、がぜん張り切り出すのです。
普段から意識的にそういう表現を使っていくと、褒め言葉が自然と口をついて出てくるようになり、楽しく学べる素地が作られていきます。
回答者Profile
小川大介
教育専門家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』(https://www.e-juken.jp)主任相談員。
京都大学法学部卒業後、中学受験専門のプロ個別指導教室SS-1を創設。教科指導スキルに、子育てコーチング、学習タイプ別の指導術を組み合わせ、短期間の成績向上ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。著書多数。
文=酒詰明子