だし文化とコナモン(粉食)文化が融合した「きつねうどん」 / K321 / PIXTA(ピクスタ)
日本各地で独自の製法やトッピングがあり、多様なバリエーションを楽しめるうどんは、国民食ともいえる存在です。そんなうどんの中でも、だしが染みわたった油揚げが絶品の「きつねうどん」の発祥の地が大阪府であることは、意外に知られていないかもしれません。
大阪城の作り手たちもうどんを食べていた!?
「天下の台所」と呼ばれ、おいしいものに事欠かない大阪でも特に愛されている料理といえば…きつねうどん! 今や全国の家庭で親しまれるきつねうどんですが、大阪うどんは、だしに馴染む、太すぎないもっちりとした食感が特徴なのだそう。
だしが染みた油揚げが絶品! / 出典:農林水産省ウェブサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/39_17_osaka.html) 画像提供元 : 日本コナモン協会
歴史をさかのぼると、豊臣秀吉が大阪城を築城する際、現在の大阪市西区新町付近の砂場(資材置き場)と呼ばれた場所には、うどん店やそば店が並んでいたそう。その後、江戸中期ごろにうどんが一般に普に普及したんですって。戦国時代からうどんが親しまれていたなんて、ちょっとびっくりですよね。
大阪城の築城の際にもうどんが食べられていた! / tabiphoto / PIXTA(ピクスタ)
古くから商業が盛んだった大阪。北前船(北海道と大阪を結ぶ船)が整備されてからは、北海道の昆布や小麦粉、塩といった食材が手に入れやすくなり、選び抜かれた食材を使ってうどんが作られていたのだとか。
きつねうどんはお客様のアイデアから誕生!
明治初頭には大阪に製麺所が増え、製麺所からうどんを仕入れて提供するお店も多くなったそうです。その一方で、お店や各家庭ではだしやつゆの味にそれぞれ工夫を凝らしていたのだとか。関西のだしやつゆのおいしさは格別ですが、積み上げた歴史に裏打ちされているようです。
ちなみに、きつねうどん発祥の店として有名なのが、明治26年創業のうどん店「松葉家(現・うさみ亭マツバヤ)」。添え物として出した油揚げを客が素うどんにのせて食べたことで、きつねうどんが生まれたそう。「うさみ亭マツバヤ」は心斎橋駅から徒歩5分ほどの場所にあり、大きくてジューシーなきつねうどんは今も大人気。大阪に行ったら、ぜひ一度味わってみたいですね。
出典:農林水産省Webサイト「うちの郷土料理」
本格的な味を少しの工夫で再現!「きつねうどん」レシピ
自宅で簡単に作れる「きつねうどん」のレシピをご紹介。とろみをつけたり、油揚げを焼いたりといったアレンジが寒い冬にぴったりです!
刻みきつねうどん【by 大原千鶴さん】
具は九条ねぎと油揚げだけ!潔さが魅力の「刻みきつねうどん【by 大原千鶴さん】」 / レシピ作成・調理:大原千鶴/撮影:浮田輝雄
材料・2人分
冷凍うどん…2玉
油揚げ…2枚(約60g)
九条ねぎ(または長ねぎ(青い部分))…1本
おろししょうが…適量
うどんつゆ
・削りがつお(粗削りのもの)…20g
・昆布(5×5cm)…1枚
・うす口しょうゆ(またはしょうゆ)…大さじ1
・塩…小さじ1/2
・水…3と1/2カップ
水溶き片栗粉
・片栗粉…大さじ1
・水…大さじ2
作り方
1.うどんつゆを作る。鍋に水、削りがつお、昆布を入れて約30分おく。中火にかけて沸騰したら弱火にし、約10分煮て、ざるでこしてだし汁を作る。鍋をきれいにし、だし汁を戻し入れ、うす口しょうゆ、塩を加えて再び中火にかける。沸騰したら弱火にし、約2分煮る。
2.九条ねぎは斜め薄切りに、油揚げは食べやすい大きさの短冊切りにする。
揚げの油分は除かず、そのまま一緒に煮てコクを出す / レシピ作成・調理:大原千鶴/撮影:浮田輝雄
3.1の鍋に冷凍うどんと2を加えて中火にかけ、うどんがやわらかくなるまで煮る。水溶き片栗粉を加えてさっと煮て、とろみをつける。器に盛り、しょうがをのせる。
きつねおろしうどん
こうばしく焼いた油揚げをのせた「きつねおろしうどん」 / レシピ作成・調理:中島有香/撮影:岡本真直
材料・2人分
ゆでうどん…2玉
油揚げ…1と1/2枚
たれ
・しょうゆ…大さじ2
・みりん…大さじ1
・砂糖…小さじ1
大根おろし…5cm分
万能ねぎの小口切り…3本分
削りがつお…適宜
めんつゆ(市販品をかけ麺用に薄めたもの)…適宜
作り方
1.油揚げはフライパンに並べ、強火で焼いて両面に焼き色をつけ、横2つに切って三角形に切る。たれの材料を耐熱容器に入れて電子レンジで15秒加熱し、油揚げを漬ける。
2.うどんをサッとゆでて器に盛り、油揚げ、大根おろし、万能ねぎ、削りがつおをのせる。
3.油揚げに漬けたたれをかけ、温めためんつゆを添え、食べる直前にかける。
歴史と文化が育んだ味、きつねうどんは、大阪府民のこだわりと愛の結晶でした。そのだし汁は、心も体も温めてくれます。寒い日は特に恋しくなってしまいそうですね。
参考・出典:農林水産省HP「うちの郷土料理」
文=山上由利子