閉経前後の計10年間を指す更年期には、女性ホルモンが減少してホルモンバランスが乱れ、ほてり、腰痛、しびれ、関節痛、イライラ、睡眠障害など、不快な症状が現われてきます。生活に支障を来すほど症状がひどいときは、迷わず婦人科を受診しましょう。ただ、婦人科って敷居が高い感じがするし、治療の実際がわからないとちょっと気後れしますよね? そこで、婦人科医の清水なほみ先生に、上手な病院の選び方や、更年期障害の治療とはどんなものか、聞いてみました。
教えてくれたのは…
▷清水なほみ先生
婦人科医、女性心療内科医。ポートサイド女性総合クリニック ビバリータ院長。女性という立場から、最新の脳科学や心理学などを総合的に駆使した診療で、心と体の健康を自身の力で取り戻せるようサポートする。『今なら間に合う!妊活生活のススメ 卵子の劣化が心配なあなたへ』(日本文学館)など、著書多数。
病院はどう選べばいいの?検査とは?
更年期治療に積極的な婦人科へ
不調だけどどこへ行けばよいか分からない場合は、まず婦人科に行って検査や治療をしてみると、改善につながる場合もあります。ホルモン量に問題がない、またはホルモン治療をしても改善されない場合は、症状に合わせて内科などその他の診療科へ行くとよいでしょう。
ただし、中には更年期治療が専門ではない婦人科もあります。ホームページ上などで更年期の治療を積極的にやっていることを打ち出している病院や、女性医療ネットワークなど女性の総合診療に理解がある団体に属している病院を選ぶのがおすすめです。
採血で更年期障害かどうかが分かる!
不調の原因が更年期障害かどうか分からない場合も、検査は気軽に受けられます。採血で、脳から卵巣に命令を出すホルモン量と、卵巣から出る女性ホルモン量の検査ができます。結果を基に、治療方針の相談をしましょう。
更年期障害の治療とはどんなもの?
ホルモン治療のがんリスクは最小限
減少したホルモン量を補うには、治療しかありません。気になるのは、ホルモン治療による副作用などのリスク。
ホルモンを補充する場合、子宮体がんと乳がんのリスクを上げる可能性もゼロではありません。「ただし、現在それらのがんを発症していない場合は、安全な薬をきちんと選んで正しく使えば、いずれのリスクも上げずに治療することが可能です。ホルモン治療は、怖いものではない時代なんですよ」と清水先生。担当医師とよく相談して、納得がいくよう薬の種類や治療方針を選びましょう。
治療の焦点は楽な状態をつくること
40代以降の場合、治療のほとんどはホルモン補充です。ただし、検査結果により、相談のうえで漢方やピルを使う場合もあります。1〜2年続けて症状の改善度合いを見ながら、治療の終了時期を見極めます。
治療の最大の目的は、その人にとっていかに楽な状態をつくれるか、です。「更年期障害は、放っておいても命には関わりません。けれど、乗り越えるまでの数年間、仕事を休んだりやりたいことを控えたりしなければならないのは、とてももったいないこと。ひたすら耐えるより、治療で自分らしさを取り戻してほしいですね」(清水先生)
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「不調が女性ホルモンによるものかな?と思ったら気軽に婦人科へ。『治療+生活の見直し』で、症状は改善しますよ!」と清水先生。誰もがきっと楽になれるので、怖がらずにぜひ一度婦人科を受診してみてくださいね。
イラスト/山中玲奈 取材・文/長田由香