今年の正月に能登半島を襲った震度7の大地震では、石川県を中心に非常に大きな被害が出ました。今もなお元の生活に戻れないまま避難生活を送っている被災者の方もいらっしゃいます。
この時の経験を漫画にしたのが、能登半島に住むまえだ永吉さん(@eikiccy)です。
地震直後の状況や避難の様子、ライフラインが復旧するまでの実体験を詳細に綴ったコミックエッセイは、地震や台風などの自然災害に備えるために多くの学びがあります。この漫画はX(Twitter)でも3.6万いいねを集め話題となり、このたび電子書籍『令和6年能登半島地震体験記』として発売されることになりました。
さっそく、その内容をご紹介しましょう。
『令和6年能登半島地震体験記』 のあらすじ
数年前からやや大きめの地震が頻発していた能登地方。余震の時点で家から飛び出していたまえださん一家ですが、本震は「明らかにいつもと違う揺れが来た」とのこと。「異様な音がそこら中に鳴り響く」「洗濯機の中にいるような回転が混じった激しい横揺れ」「車と川が左右に大きく揺さぶられていた」と、地震当時の様子を描写しています。
海が近く津波の恐れもあったまえださん一家は、高齢の祖父母を連れて高台に避難するためすぐに行動を起こしました。阿吽の呼吸で「祖父母の安否確認」「防災グッズの持ち出し」「車の準備」をそれぞれ分担して避難先を目指します。
津波の恐れがなくなった夜遅くに家に戻ると、家の倒壊こそ免れたものの、家全体にヒビが入っていたとのことです。物は散乱、転倒防止策をとっていた本棚も倒れていました。また電気は付くものの水道は止まっています。たびたび余震も起こるため家の中も安全ではなく、寒い屋外で車中泊をすることなりました…。
その後も度重なる余震への不安、SNSのデマ情報や被災地を狙う犯罪集団、風呂のない生活や復旧作業がなかなか進まない様子など、当時の状況が克明に描かれています。
大変な経験をしながらも、当時の体験を伝えるコミックエッセイを書き上げたまえだ永吉さんにお話を伺いました。
私の経験も誰かの役に立つかもしれない
──この作品を描こうと思ったきっかけを教えてください。
まえだ永吉さん:私自身も東日本大震災関係の漫画を読んでいて、そこから当時の状況や防災の知識を得ていました。私の今回の経験もどこかの誰かの役に立つかもしれないと思い、描こうと思いました。
また、一度X(Twitter)で「体験記描きたい」と投稿したところ、「読みたい」というコメントやいいねの数が多かったのでそれも背中を押してくれました。
──今作の元になった投稿はXで3.6万いいね、1000万以上のインプレッションがありました。読者の方からはどんな感想がありましたか?
まえだ永吉さん:同じ地域の方や被害のあった地域の方、東日本大震災で被災した方々からのコメントが多かったです。寄り添うコメントや励ましの言葉、本当にどれも泣きながら読みました。それ以外にも「読んでおくべき」「勉強になる」「我が家の防災グッズにトイレとポリタンク関係がない事に気づいた」など、この漫画が役に立ったというコメントも嬉しかったです。
──非常に大変な被災の様子がたくさん描かれていますが、中でも一番大変だったのはどんなことでしたか?
まえだ永吉さん:やはり断水です。普段当たり前のように使っている水が使えなくなると、こんなに不便になるんだなと痛感しました。当たり前のことができなくなるストレスがすごかったです。
──今回、ご自身の体験したエッセイ漫画を執筆されましたが、今後挑戦したいジャンルやテーマはありますか?
まえだ永吉さん:これからも体験したエッセイ漫画を描いていきたいです。全然自慢できることではないのですが無駄に色々なお仕事経験があるので何か役に立たないかな~と思っています。特に一番やりたかった絵を描く系の仕事は何回も挫折しているのでこの挫折経験が誰かの心に刺さればいいなと思っています。あとは、体重を気にしなければ、食べることも大好きなのでグルメ系も興味があります。なんて色々言いましたが、どんなジャンルでも挑戦していきたいです!
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読みやすいマンガで綴られた体験記からは、多くの学びがあります。報道では見ることができない現地の被害状況や被災者のリアルな声、水の出ない状況での過ごし方や災害への心構えなど、読めば読むほど考えさせられることばかり。実際に自分の住む地域が大きな災害に遭ったらどう行動するべきか、このマンガを読みながら考えてみませんか?
取材=レタスユウ/文=レタスユキ