子どもにはさまざまな体験をさせたい、と考えているわが家。スポーツやキャンプなどアクティブなことだけじゃなく、情操面でもプラスになることを…と思うけど、静かに鑑賞すべきもの、とくに美術館なんかは敷居が高い。そんなとき、子どもから大人まで楽しくデザインが学べる、体験型の遊び場「デザインパーク」が開催されるという話を小耳に挟みました。しかも、マヨネーズで知られるキユーピーとコラボ? 面白そう! さっそく発表会に参加してみます。
「誰もがデザイナー」という未来がやってくる!?
デザインなんてプロのデザイナーが考えることだから、私のような美術オンチには関係ない。と思っていましたが、実はそうでもないらしいんです。イベントのゲスト、経済産業省 デザイン政策室 室長補佐の原川 宙(ひろし)さんは、こう言います。
「われわれは今『教養としてのデザイン教育』に力を入れています。というのも、海外の研究では、デザインを重視する企業の成長率は、そうでない企業の約2.1倍となっています。国の経済成長にも約1兆4千億円のプラスになるようです」
さらに今後、デザインは美大などで専門教育を受けた人だけが扱える特殊なものではなくなり、誰もがデザイナーとなって、生活のさまざまな面でデザインを考える時代がやってくるとのこと。
というのも、デザインとは、単にモノの色や形をきれいに整えることではないからです。それはデザインの一部であって、「問題を解決する」「目的を達成するために何かを設計する」というデザインの考え方は、近年、サービスとか地域作り、教育の仕組みなど、さまざまな領域に広がっています。だからこそデザイン教育は、未来を生きる子どもたちにとって大事なのだそうです。
「でも、デザインなんてどうやって教えたらいいの?」ととまどう親のために、デザインパーク実行委員会とショッピングモール「ららぽーと」が連携して始めたのが、楽しくデザインを学べる体験型の遊び場「デザインパーク」です。
ショッピングモールは、日常空間でありながら、洋服や雑貨から店舗ディスプレイまで、多様な企業の多彩なデザインに触れられる場所。ショッピングモールそのものが、楽しくデザインを学べる場でもあるわけです。
そこに設けられるデザインパークが、私たちとなじみ深い企業とコラボレーションすることで、デザインがさらに身近なものとして体感できます。
第一弾のコラボレーション相手は、毎日食卓でお世話になっているマヨネーズの会社、キユーピーです。
100年前からキユーピーはデザインを重視
キユーピー株式会社 取締役 上席執行役員 グループ営業統括 兼 市販用市場統括 濱崎伸也さんによると、創始者の中島董一郎氏は、1910年代に海外留学した際、ポテトサラダに使われたマヨネーズのおいしさと栄養価、欧米人の体格のよさに感銘を受け、1925年に日本で初めてマヨネーズの製造販売を開始したのだそうです。
日本人の体格向上を願い、おいしくて栄養のあるものを、と開発されただけに、海外のマヨネーズは全卵を使うのが一般的なのに対して、キユーピー マヨネーズはもっとも栄養価の高い卵黄だけを使って作られています。
デザイン面では、「誰からも愛される商品になるように」と、発売当時大人気だったキューピー人形を、マヨネーズのマスコットにしたのが特徴的です。今では当たり前のこの手法も、100年前には画期的! 現代の私たちも、キユーピー マヨネーズとマスコットのキユーピーをセットで覚えていますものね。もうひとつ、パッケージの赤い網目模様も、キユーピー マヨネーズのシンボルとなっています。
このほか、マヨネーズ容器を初期のビンから酸素を通さない五層のポリボトルに変えたり、おなじみの星形キャップのほか、お好み焼きなどに使いやすい3穴キャップを作るなど、キユーピーはプロダクトデザインにもさまざまな工夫をしています。
さらに、新聞の同じ場所に毎日広告を掲載したり、一流アーティストにポスターを描いてもらったりと、印象的な広告宣伝にも力を入れているそうです。デザイン教育の場で題材にするには、ぴったりの企業と言えるでしょう。
「あける」「触る」など体験を重視するデザインパーク
では、実際にデザインパークに参加してみましょう!
今回のテーマは「食卓のデザイン」。「ドアをあける」「実物に触れる」といった「体験」を大事にした作りになっています。
まずは、キユーピー マヨネーズの歴史やこだわりが学べるコーナー。とんがり屋根のパネルに、赤い網目のモチーフが効いています。ユニークなのが「のぞき穴」の仕掛け。子どもが見やすいよう低い位置に多く設置されているので、中に何が見えるかのぞいてみましょう!
こちらは、食卓にあるサラダをデザインの視点から解剖するコーナー。野菜が育つ過程を描いたパラパラマンガなどもあって、面白いですよ!
いろいろな色形でできているプロダクト(商品)のデザインを紹介するコーナーもあり、ボトルキャップの形、容器の素材、味の違いを表現する色など、マヨネーズのデザインに隠された秘密を知ることができます。カラフルなとびらの中にはいろいろなものが隠れているので、ぜひあちこちあけてみてくださいね。
最後は、子どもがいちばん喜ぶ、自分でサラダをデザインできるコーナー! 形や色の違う野菜の中から好きなものを選び、器も3種類からチョイスして、「お気に入りのサラダ」を作ります。
デザイナー気分が味わえるだけでなく、作ったサラダをその場で食べることができるので、おいしい体験もできちゃうんです♪もちろん、マヨネーズはかけ放題! マヨネーズのキャップをモチーフにした帽子と、赤い網目柄のエプロンでマヨネーズになりきれば、さらに子どもたちのテンションはアップするはずです。
「デザインパーク」は下記の日時・場所で体験できます。
日時:2024年3月9日(土)~10日(日) 10~18時
場所:ららぽーと富士見(埼玉県富士見市) 屋内広場
参加費は無料で、誰でも入場できますが、「サラダのデザイン体験」は小学生以下のみ参加可能(保護者の同伴必須)です。また、参加希望者多数の場合は、人数制限や整理券配布(先着順)をすることもあります。
近くに住んでいる人、お買い物がてら「ららぽーと富士見」に行ってみたい人は、ぜひぜひデザインパークにも参加してみてください! 子どもはもちろん、大人も「へえ~」という気づきがたくさんあり、身近な商品を見る目がちょっと変わってくると思いますよ。
(c)デザインパーク発表会
文=高梨奈々