「パパ、好きな人いるよ。ママじゃない人」
ある日、娘からそんな言葉を告げられた主人公が、夫とその浮気相手と対決し、娘と一緒に自分なりの答えを見つけ出すまでを描いた漫画「パパ、浮気してるよ?娘と二人でクズ夫を捨てます」。この漫画を手掛けた芸子さんは、二人の女の子の母。現在は漫画家のかたわら、元美容部員の経験を生かして化粧品もプロデュースしています。
精力的に活動する芸子さんは、漫画家と化粧品プロデューサーと母という3足のわらじをどのように成立させているのか、ご本人にインタビューします!
まずは、今年9月に最新刊がリリースされる予定の漫画「パパ、浮気してるよ?」のあらすじをご紹介しましょう。
結婚生活を激震させた娘の言葉
高校時代の初恋を実らせ、クリーニング店の2代目でもある洋介と結婚した香澄。
10年たった今は洋介の実家で、きつい性格だと近所でも有名な姑とともに暮らしています。
娘のゆみも小学校3年生、9歳になり、親をドキリとさせるようなことを聞いてくるようになりました。ある日のこと。ゆみから性的な質問をされた香澄は、動揺しつつも娘に真摯に向き合って説明をするのでした。
幸せな結婚生活の一方で、香澄の悩みは、夫の洋介の友人関係になじめないことでした。地味でまじめな香澄に対し、洋介は派手でにぎやかなタイプ。洋介たちのコミュニティには、結婚して10年たった今も入っていけない疎外感を感じていたのです。
洋介の友人たちからは「いい奥さん」とは言われても、「お似合い」とは言われません。そんなささいな事実に傷つく香澄なのでした。
友人たちの中でも、家族ぐるみの付き合いを続けているのが、洋介の親友である雅也夫妻。雅也の妻である絵美は「絵に描いたように美しい」という名前の通りの容姿端麗な女性です。
しかしある日、雅也は妻の絵美の反対を押し切って転職を決め、東京へと単身引っ越してしまいました。それを機に絵美と洋介は距離を縮め、ただならぬ仲に…。
そして洋介と絵美の不倫関係は、娘のゆみも知るところとなりました。事実を知ったゆみは香澄に対し、なんと離婚をすすめてきたのです。
漫画家・芸子さんインタビュー
――「パパ、浮気してるよ?」では、妻が娘とともに夫の浮気に立ち向かいますね。娘の言動が健気で、涙なくして読めませんでした…。この漫画がこれほどまでに人気を集めたのはなぜだと思いますか?
芸子さん
「まさかこんなに多くの方に読んでいただけるとは思ってもいませんでした。お褒めのメッセージもたくさんいただいているなかで、やはり子ども目線の話がよかった、というお言葉は、自分の意図も伝わっていたんだぁ、とうれしかったです」
――芸子さんは、育児中に描いたお子さんの絵をSNSに投稿したのをきっかけにイラストを手掛けるようになったそうですね。その後、ストーリーのある漫画を描き始めたきっかけは何だったのでしょうか?
芸子さん
「イラストだけで描ききれない子どもの言動などを残すために文字を添えことが、イラストだけを載せるところから漫画に切り替えたきっかけになりました。4コマ漫画が描けたなら次はちょっと続きものの出産レポ漫画を記憶が鮮明なうちに…、それが描けたならもっと長編の漫画を…、と少しずつレベルを上げていった感じです」
――前職では美容部員をなさっていたそうですが、漫画家になることは以前から選択肢としてあったのでしょうか?
芸子さん
「まったくありませんでした。漫画家は、それこそ小さなころのたくさんある将来の夢の一つではありましたが、本気で目指している訳ではなかったです。ただ『ちょっと絵が得意な女の子』という感じでした。
絵を描くことの延長線上で、自分の顔にメイクをすることも誰かにメイクを施すことも得意ではあったので、それを活かし美容部員になりました。それがまさか育児がきっかけで漫画家への道が切り開かれるとは思ってもいませんでした」
――育児に関するものやSNSをテーマとしたものなど、多彩なテーマの漫画を発表されていますね。発想の源泉はどのようなところにありますか?
芸子さん
「日常生活の些細な出来事をドラマチックに表現するとしたらどうやって演出するかな?と常々想像しています。今思い返すと小さな頃から、漫画のコマ割りでこそないですが、好きな音楽を聴きながら『この曲のPVを私が作るとしたらこのシチュエーションでこのアングルで…』と妄想していたので、それらが訓練となっていたのかなと思います」
――コスメのプロデューサーとしても活躍してらっしゃいますね。漫画家との両立は大変ではないですか?どのように乗り切ってらっしゃるのでしょうか?
芸子さん
「もちろん大変ではあるのですが、自分のキャパの狭さは誰よりも知っているので、あらかじめ『自分の負担が極力少なくなるシステム作り』をするようにしています。例えば漫画の仕事だと、連載や書籍用の作品を書く際には、任せられる部分はアシスタントさんにお任せするとか。
化粧品のお仕事は、同じく絶賛子育て中の友人にスタッフとして入ってもらっています。広告の打ち出し方や新商品開発の方向性の決定、取引先との打ち合わせなどは私が主に行なっていますが、もっとも重要なお客様対応や、ECサイトの管理業務はそのスタッフにお願いしているんです。最近では、そのスタッフに他社の打ち合わせの席に同席してもらうなど、商品開発にも積極的に携わってもらうようにしています。
お互いに子供の体調や行事でいつ仕事を休んでも大丈夫なように『あの人がいなきゃできない』という業務を減らすように努力をしています。やはり良いビジネスパートナーがいるというのが、今の私の活動を可能にしている大きな理由だと思っています」
――ご自身も子育て中でらっしゃると思いますが、子育てで大切にしていることは何ですか?
芸子さん
「さきほどもお話しした通り、キャパの狭い人間ですから誰かの見本になるような子育てなんてまったくできていません。上質な教育だったり丁寧な対応はできていないと思いますが、子どもたちに『つむちゃんといとちゃんはママの?』と問いかけると『宝物!!!』と大声で返してくれるのです。それさえ伝わっているのなら満点かな!と自画自賛しています。それが一番伝わっていて欲しいところなので!」
――最後に、読者の方へのメッセージをお願いします!
芸子さん
「今、こうして活動できているのは応援してくださる皆さまのおかげです。皆さまからのメッセージが本当に励みになっております。今後も皆さまに楽しんでいただけたり、感動していただけるような作品、商品作りをしていきたいと思っております」
* * *
芸子さんのインタビューからは、お仕事への情熱はもちろんのこと、なにより娘さんへの愛があふれていました。
本作は不倫を題材にした漫画でありながら、母と娘の成長の物語でもあります。夫婦間に何か問題があったとき、いやがおうでも巻き込まれてしまうのが子どもです。子どもを第一に考えた選択をするとはどういうことなのか、本作を読んで考えてみてください。
取材・文=山上由利子