普段使いの食材や調味料で作るいつもの味に飽きてきたら、プロの技を試してみませんか?
「美味しさには理由がある」「なぜ美味しくなるのか?」という考え方に重点を置き、和食の定番料理を中心にプロのコツを紹介してくれるのは、料理人の関斉寛さん。
味に差がつくひと手間を踏まえながら、家庭で極上の料理を作るコツをお送りします。
トマトおでん
中にひき肉を鋳込んだ創作おでん。
冬は温かく、夏は冷やしても
■主な旨味成分
トマト(グルタミン酸)
二番だし(イノシン酸、グルタミン酸)
チーズ(グルタミン酸)
◆材料(1人分)
トマト 1個
鶏ももひき肉 20g
スライスチーズ(溶けるタイプ) 1枚
小麦粉 適量
〈煮汁〉
A
二番だし(作り方は下記参照) 420ml
みりん 30ml
薄口しょうゆ 30ml
混合節(さば、いわしなど/キッチンペーパーに包みラップで縛る) 10g
おぼろ昆布 お好みで
◆作り方
1 トマトはへたの反対側に十文字に切り込みを入れる。鍋に湯を沸かし、トマトをお玉にのせて入れ、皮の端がめくれてきたら氷水に取って皮をむく(湯むき)(一)。
(一)湯むきしてだしがしみ込みやすくする
トマトがグルタミン酸を出しやすく、同時にだしやひき肉の旨味も吸収しやすいよう、皮をむきます。
2 へたの周りに包丁を入れて、スプーンで身を丸くくりぬく。全体の水気を拭き、内側はハケで小麦粉を薄くまぶす。
3 ひき肉をぎゅっと詰め、見えているひき肉の部分にハケで小麦粉を薄くまぶす(二)。
(二)小麦粉をまぶしてひき肉の旨味を閉じ込める
ひき肉のジューシーさをトマトの中にしっかり閉じ込めるよう、小麦粉をのり代わりにして直接詰めます。
4 鍋にAを入れて火にかけ、温まったら混合節を加えて弱めの中火にし、沸騰直前の温度(80℃)で旨味が溶け出るまで3分ほど煮る。
5 3のトマトをへた側を下にして入れ、オーブン用シートで落とし蓋(三)をする。トマトの酸味と旨味が煮汁に溶け出たら弱火にし、さらに10分ほど煮る。
(三)落とし蓋でだしがじっくりと中に浸み込む
煮汁が対流してトマト全体がかぶった状態を保てるように。湯むきして煮崩れやすいので火加減に注意。
6 耐熱の器に盛って煮汁をかけ、チーズをのせる。電子レンジ(800W)でチーズが溶けるまで20秒ほど加熱(四)する。さらに、あればバーナーでチーズを焼くと旨味が増す。
(四)チーズはトマト、だしの旨味と相乗効果がある
昆布、トマト、チーズのグルタミン酸、鶏肉、かつおのイノシン酸。動物性と植物性の旨味成分が融合。
7 お好みでおぼろ昆布を添える。
火入れして糖度が増したトマトはかつおと鶏の旨味との相性が抜群。
美味しいだしの取り方
■昆布だし
湯冷ましした軟水で、旨味を引き出す。
あっさりとした鍋物や煮物に
◆材料(作りやすい分量)
昆布 10cm角
水 1L
◆作り方
鍋で湯を沸かし、火を止めて人肌まで冷ます。ボウルに入れ、表面をさっと拭いた昆布を加え、冷蔵庫で一晩(8〜10時間)浸す。
湯冷ましした軟水に浸しておくと旨味が格段に違う。
■一番だし
澄み切った黄金色。
吸い物など、だし自体を味わう料理に
◆作り方
1 昆布は沸く前に取り出す
昆布だしを鍋に移し火にかける。60℃位で昆布を取り出して香りが飛ぶのを防ぐ。
2 アクをよくすくう
そのまま沸かしてアクをよく取る。雑味がなくなる。火を止め粗熱を取る。
3 温度を測る
温度が下がり、80℃になったら4の工程へ。1℃違うと風味が変わるので測る。
4 かつお節を加える
80℃になったら、かつお節を加え、沸騰しない火加減をキープし1〜 2分煮出す。
5 静かに流し入れてこす
ボウルにザルを重ねてさらしを敷き、 4をこす。かつお節は押さない。
6 冷蔵庫で2日保存可能
5のとき、ボウルに菜箸を渡して、その上にザルをのせるとこしやすい
■二番だし
調味料やうま味成分を補って土台として使用
◆材料(作りやすい分量)
A
昆布(一番だしを取ったもの) 1枚
かつお節(一番だしを取ったもの)全量
B かつお節 10g
水 1L
◆作り方
1 追いがつおをする
鍋にAと水を入れて火にかけ、沸いたら20分ほど煮て、Bを加え、4〜5分ほど煮る。
2 かつお節はしっかり押す
ボウルにザルを重ねて、さらしを敷き、1をこす。冷蔵庫で2日保存可能。
レシピを参考にするときは
・「旨味」とは、「素材が本来持つ美味しさ」の意味、「旨味成分」とは、たんぱく質を構成するアミノ酸(グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸、コハク酸)の意味で記載しています。
・特に記載がない場合は、砂糖は上白糖、塩は自然塩、酢は穀物酢、酒は清酒、みりんは本みりん、小麦粉は薄力粉、梅干しは塩分8%を使用しています。
・液体の5mlは小さじ1、15mlは大さじ1、200mlは1カップで計量できます。
・水溶き片栗粉は、片栗粉と水を1:1の割合で混ぜた分量を記載しています。
・黄ゆず、木の芽、白板昆布以外は、スーパーで購入した食材と調味料を使用しています。
・野菜類、きのこ、豆類、果物は、特に記載がない場合、洗う、皮をむくなどの作業をすませてからの手順です。
・フライパンは鉄、鍋はアルミの雪平鍋を使用しています。
・特に記載のない場合、火加減は中火です。
※本記事は関斉寛著の書籍『プロが教える和食の基本 素材の旨味を引き出せば究極に美味しくなる』から一部抜粋・編集しました
著=関斉寛/『プロが教える和食の基本 素材の旨味を引き出せば究極に美味しくなる』(KADOKAWA)