『ウヒョッ! 東京都北区赤羽』『その「おこだわり」、俺にもくれよ!』などの作品を発表し続ける漫画家・清野とおるさんが、友人知人他人から直接聞いた恐るべき「怪談」の数々。その怪奇現場に実際に足を運んで「酒」を飲んじゃおう!という体験を描いた『東京怪奇酒』。
2月19日には、なんと、本作を原作としたドラマがスタート!
2月17日は待望の2巻「ゾクッ 東京怪奇酒」が発売した清野とおるさんに、「怪奇酒」を始めたきっかけやエピソードについてうかがいました。果たしてオバケには会えたのでしょうか…!?
◆オカルトブーム世代。隙あらば自分で心霊モノを描きたかった
--「東京怪奇酒」第1話目の「恐怖の303号室」では、オバケが気になって仕方ない清野さんが描かれていました。そもそも「オバケ」や「心霊モノ」に興味があったのでしょうか。
清野「僕が幼少期を過ごした1980年代は、1970年代から続くオカルトブームの名残がまだ色濃くあったんです。書店やらオモチャ屋や児童館やらテレビやら、身近なところにオカルトじみたモノが氾濫していましたね…。そんなものに囲まれて育ったこともあって、興味自体は子どものころから強かったと思います」
--「怪奇スポットでお酒を飲む」というテーマが斬新すぎます。
清野「長いこと主戦場としていた居酒屋やスナックにいまいち刺激を感じられなくなっている自分がいることに気づいちゃったんですよね。その上、人と密に関わるスタイルの作風にも若干疲れちゃいまして。そんな時、『東京ウォーカー』から連載の依頼が来たんです。
昔から心霊モノが好きで、隙あらば自分でも描いてみたいと漠然と思っていたので『じゃあいっそ、怪奇スポットに酒を持って飲みに行っちゃえばいいんじゃない?』と思ったんです。ついでにグルメ要素まで入れてみちゃったり」
◆ボツエピソードは「全裸の老婆の霊が出る定食屋」!?
--「怪奇酒」はどのくらいの頻度で行っているのでしょうか?
清野「連載を始めるようになってから、だいたい月1回くらいのペースですね。怪奇情報を耳にして意気揚々と現場に行ってみたものの、何も感じなかったり、特に何も起こらなかったりした場合はボツにしちゃいますね。あくまで、怪奇現場で僕自身がどう感じたか、を重視して描いているので。ボツにしたエピソードは、『全裸の老婆の霊が出る定食屋』。怪奇要素が全くない、普通においしい定食屋だったんです(笑)」
--「怪奇酒」は基本的にお1人で行かれているのでしょうか?
清野「最初なるべく1人で臨んでいたのですが、最近は誰かしらと一緒に怪奇酒する機会が多いですね。得られる『恐怖』や『刺激』は減りますが、1人では気づけないことに気づけたり、お互いが持っている怪談を怪奇現場で披露しあったりと、『楽しさ』に関しては倍増するんです。
1人でいる時に『今のは怪異?』と思うような事象があっても、気のせいだと思ったり、スルーしてしまいがちなのですが、自分以外の誰かがいてその事象を共有できれば、怪異への信憑性や現実味も高まります。
それでもやっぱり、『一人怪奇酒』も率先してヤっていきたいとは思っています。『まんがか』として、『にんげん』として、レベルアップするためにです」
◆一番印象に残っているNO.1スポットとは…!?そしてオバケは存在する…!?
--著書の中で特に印象に残っている「怪奇酒スポット」ベスト1はどこですか?
清野「どのスポットもたいへん印象深いのですが、強いてひとつ挙げるとすれば…『東京ウォーカー』編集長・加藤さんの『幻の大仏』でしょうか。連載開始前までは『自分には怪奇じみたエピソードは一切ない』と言っていた加藤さんが、ある日一緒に飲んでいる時に『あ、そういえば…』と言って、唐突にすごい怪奇体験を話し始めたんです。
怪奇現象に懐疑的な加藤さんでさえこんなエピソードを持っているってことは、そのへんにいる人たちもみんな全員、何かしらの怪奇エピソード持っているんじゃないの? と、希望を持たせてもくれました。大仏が出現した公園の歴史を探る作業や、現場での飲酒など、いま振り返ってもワクワクします」
ーー怪奇酒を体験する中で、結果、オバケの存在は信じられるようになりましたか?
清野「信じたい気持ちはあるのですが、明確にオバケを見た経験がないので、実は、いまだに半信半疑です。100%信じるためにも、やはり一度はオバケを目撃する必要があるんですよね。
もし会えたら、死んじゃった経緯とか、そこからオバケになってしまった経緯とか。はたまた、オバケの日々ってどんな感じなのかとか、生前のプライベートな話とか、もういろいろ、たくさん聞いてみたいです」
--「怪奇酒」をしに行く場所の情報は、知り合いの方から入手されているそうですが、フォロワーさんやファンの方から情報が寄せられることもありますか?
清野「たまにメールで長文の情報をいただくことはありますね。その場合、メールの段階で気になったことやディテールなどを突かせていただき、僕の中での現実味が高まってきたら、ご本人に直接お会いして、さらにディテールをツンツンとほじくらせていただきます。それから実際に現地へと足を運びます。あ、もちろん、お酒片手に、です」
--「怪奇酒」をしてみたい、という方も出てきそうですよね。今後の野望も教えてください!
清野「『怪奇酒』を提唱するつもりは毛頭ありませんが、もし真似する方がいらっしゃるなら、近隣住民の方の迷惑にだけはならないように心掛けてほしいです。
今後の野望はただ1つ、『オバケを見ること』だけです!『怪奇酒』中にオバケを見られたらうれしいですね」
【レタスクラブWEB編集部】