「わたしが悪いのかな」…そう思ったときに読みたい、人生に寄り添う法律集。
何かトラブルにあったとき、「自分が悪かったからだ」と思い込み、一方的に自分を責めてしまう人がたくさんいます。しかし、本当にあなたが悪かったのか。相手の行いのほうが正しかったのか…。
そういった「万が一のそのとき」に何をどうすればいいのかを、弁護士である著者・上谷さくらさんが教えてくれる『おとめ六法』から、人生の悩みに寄り添い、毎日を守る大切な法律を5回連載でご紹介します。今回は第3回です。
※本記事は上谷さくらほか著の書籍『おとめ六法』から一部抜粋・編集した連載です
別居、家庭内別居で夫婦といえない
■同じ屋根の下にいても心はバラバラ
解説
■夫婦といえない間柄
別居は、夫婦が別々に住んでいることを指します。離婚で争いになる場合、裁判所が離婚を認める基準の一つに「別居期間の長さ」がありますが、家庭内別居では別々に住んでいないので、別居とみなされないのが原則です。
そのため、「長年、家庭内別居の状態」といくら主張しても、それだけで「夫婦関係が破綻している」という判断はされません。「まったく会話がない」「お互い顔を合わせないように、生活の時間帯をズラしている」などの事情があれば、夫婦関係が悪化していたこと自体は認定される可能性があります。
事例
■CASE
家庭内別居中に相手が不倫をした。慰謝料請求は行いたい。
■ANSWER
家庭内別居は、「夫婦関係の破綻」とみなされない可能性が高いため、慰謝料請求が可能です。
ポイント
■単身赴任は別居扱いになる?
単身赴任は基本的に別居ではありません。状況によっては頻繁に自宅に帰るのが難しいこともあるからです。別居と認定することは困難な場合がほとんどだと考えられます。
事例
■CASE
配偶者の不倫。関係を見直すために別居することに。離婚も見据えて準備しておくべきことは?
■ANSWER
夫婦の共有財産の確認をすることが大事です。名義にかかわらず、預貯金の口座を把握する、生命保険の有無、生命保険のタイプ(学資保険は忘れがちなので注意!)、会社で財形貯蓄がないか、有価証券の有無、車両の有無、などを確認しましょう。
子どもがいる場合は、転校するのか、生活費はどうするのか、働いている間に預ける場所はあるかどうかを確認します。別居した親と子どもの関わり方についても、約束事を決めておきましょう。浮気が原因で別居する場合は、浮気の証拠も確保しておきましょう。浮気について相手が認めてそれで別居する、ということがわかる証拠(会話の録音、録画など)を作っておくのがよいでしょう。
事例
■CASE
専業主婦だった自分にはすぐ十分な収入が見込めない。別居中は夫に生活費を頼める?
■ANSWER
「婚姻費用」を支払うべき法律上の義務があります。任意で渡してくれないようであれば、家裁に調停を申し立てるべきです。支払義務者が拒否しても、裁判所が「いくら払うように」と決めてくれます。支払われない場合、給与の差し押さえができます。
著=上谷さくら、岸本学 イラスト=Caho/『おとめ六法』(KADOKAWA)
【著者プロフィール】
上谷 さくら
弁護士(第一東京弁護士会所属)。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。元・青山学院大学法科大学院実務家教員。福岡県出身。青山学院大学法学部卒。毎日新聞記者を経て、2007年弁護士登録。保護司。