「わたしが悪いのかな」…そう思ったときに読みたい、人生に寄り添う法律集。
何かトラブルにあったとき、「自分が悪かったからだ」と思い込み、一方的に自分を責めてしまう人がたくさんいます。しかし、本当にあなたが悪かったのか。相手の行いのほうが正しかったのか…。
そういった「万が一のそのとき」に何をどうすればいいのかを、弁護士である著者・上谷さくらさんが教えてくれる『おとめ六法』から、人生の悩みに寄り添い、毎日を守る大切な法律を5回連載でご紹介します。今回は第2回です。
※本記事は上谷さくらほか著の書籍『おとめ六法』から一部抜粋・編集した連載です
結婚しているのにほかの人とお付き合い
■甘い夢はいずれ溶けてなくなるだけ
あなたを守る法律
民法
第770条 裁判上の離婚
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
①配偶者に不貞な行為があったとき。
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
解説
■不倫のボーダーラインはどこ?
次のうち、法的に不倫と認められるのはどれだと思いますか?
①仕事の打ち合わせで、夫が職場の女性と食事に行った
②夫が性交渉までOKの風俗に通っている
③夫が交際相手と「キスをした」ことが発覚した
④ 夫が同僚の女性社員に片思い。ただ、女性社員からは相手にされていない様子
一般的に、不倫の定義は一律に定まっているわけではありませんが、離婚理由になる不倫は、いわゆる「不貞行為」があった場合です。不貞行為とは、性交渉があった場合を指します。つまり法律上は、②だけが「不貞行為」となります。
③は「不貞類似行為」として、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にあたる可能性があります。不貞類似行為とは、性交渉に類似する行為を行うことです。性交渉を最後まで行わなかったとしても、ホテルなどで裸や下着姿で抱き合ったりするだけでも不貞類似行為にあたることがあります。
①・④は、不貞行為にあたることはありませんが、妻が嫌だと感じるのであれば、いわゆる「性格の不一致」として離婚に至ることもありえます。1回きりでも不貞行為です。1回きりでも、夫婦関係が破綻して離婚に至ることはあります。
ポイント
■CASE
相手が結婚しているのを知っていたのにお付き合い。相手の配偶者にバレたら慰謝料を請求される?
■ANSWER
相手が既婚者と知りながら関係を持った場合、法律上の不貞行為となり、不法行為となります。ゆえに、相手の配偶者から慰謝料を請求される可能性があります。不貞行為により、「平和な結婚生活を送る権利」が侵害されると考えられるからです。
不倫相手が「もうすぐ離婚する」「別居していて夫婦関係は破綻している」と言っている場合、本当に夫婦関係が破綻していれば、「平和な結婚生活を送る権利」はすでに存在しないので、不法行為にはなりません。
ただし、実際に夫婦関係が破綻していたと判断されるかは微妙です。夫婦関係が破綻しているかどうかは、別居の有無、別居期間の長さ、夫婦間の連絡の有無、離婚協議の有無など、総合的に判断されるためです。不倫相手の言葉は鵜呑みにしないようにしましょう。
著=上谷さくら、岸本学 イラスト=Caho/『おとめ六法』(KADOKAWA)
【著者プロフィール】
上谷 さくら
弁護士(第一東京弁護士会所属)。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。元・青山学院大学法科大学院実務家教員。福岡県出身。青山学院大学法学部卒。毎日新聞記者を経て、2007年弁護士登録。保護司。