「わたしが悪いのかな」…そう思ったときに読みたい、人生に寄り添う法律集。
何かトラブルにあったとき、「自分が悪かったからだ」と思い込み、一方的に自分を責めてしまう人がたくさんいます。しかし、本当にあなたが悪かったのか。相手の行いのほうが正しかったのか…。
そういった「万が一のそのとき」に何をどうすればいいのかを、弁護士である著者・上谷さくらさんが教えてくれる『おとめ六法』から、人生の悩みに寄り添い、毎日を守る大切な法律を5回連載でご紹介します。今回は第1回です。
※本記事は上谷さくらほか著の書籍『おとめ六法』から一部抜粋・編集した連載です
育休の基本ルールが知りたい
■夫婦二人で子育てしたい
あなたを守る法律
育児・介護休業法
第5条 育児休業の申出(一部抜粋)
3 労働者は、その養育する1歳から1歳6カ月に達するまでの子について、次の各号のいずれにも該当する場合に限り、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。
育児・介護休業法
第6条 育児休業申出があった場合における事業主の義務等
1 事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業申出を拒むことができない。
解説
育児休業(育休)を取得しなかった労働者に対し、なぜ取得しなかったかを調査したところ、「職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった」という回答が一定数あるようです。
育休は、性別を問わずに取得できます。
育休の期間は「子が1歳に達するまでの間」と定められていますが、夫婦で取得する場合は1歳2カ月まで取得できます(パパ・ママ育休プラス)。妻が専業主婦でも、休業できます。
また通常、育児休業の取得は原則1回までですが、特別な事情がなくても、再度、育児休業が取得できる制度があります(パパ休暇)。これは、①子の出生後8週間以内に育児休業を取得していること、②子の出生後8週間以内に育児休業が終了していることが条件です。
雇用保険に加入している人が、育児休業をした場合、原則として休業開始時の賃金の67%(6カ月経過後は50%)の給付を受けることができます(育児休業給付)。
今後は、さらに80%まで引き上げることが検討されています。また、育児休業等をしている間の社会保険料が被保険者本人負担分および事業主負担分ともに免除されます。そのほか、経済的支援の制度が複数あります。
改正育児・介護休業法では、男性の育児参加を促すことを目的に、事業主に対し、小学校就学前の子どもを養育する労働者が、育児に関する目的で利用できる休暇制度などを設けるよう努力することを義務づけました。入園式や運動会などの行事参加を促すためです。
ポイント
■男性の育児参加は夫婦の絆の要
産後2~3年以内に夫婦関係が悪化する「産後クライシス」の原因の一つに「夫が育児をしないこと」が挙げられています。夫が育休を取得しても、家事や育児に十分な時間を割いていない「とるだけ育休」が、妻を精神的にいっそう追い詰めます。産後クライシスは離婚に直結しやすく、赤ちゃんを抱いて弁護士に相談に来るお母さんは少なくありません。
母親は妊娠・出産で体に大きな負担がかかっているうえ、出産後は授乳のこともあり、十分に睡眠を取ることもできません。
赤ちゃんが産まれたら夫婦でどのように家事や育児を分担するのか、できれば出産前から十分話し合っておきましょう。
著=上谷さくら、岸本学 イラスト=Caho/『おとめ六法』(KADOKAWA)
【著者プロフィール】
上谷 さくら
弁護士(第一東京弁護士会所属)。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。元・青山学院大学法科大学院実務家教員。福岡県出身。青山学院大学法学部卒。毎日新聞記者を経て、2007年弁護士登録。保護司。