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親の「ねば」が子どもを追い詰める!? コロナ禍こそ求められる、待つこと、間引くことの大切さ 小川大介さんインタビュー【後編】

  • 2021年2月7日
  • レタスクラブニュース
外出自粛にリモートワークなど、コロナに翻弄され、へとへとな昨今。その影響は子どもたちにも如実に表れ、生活リズムが乱れたり、学習意欲を失った子も多いとか。そこでレタスクラブWEB連載「子育てよろず相談室」でもおなじみ、2021年1月刊行の新刊『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て 』(KADOKAWA)の著者である小川大介先生に、コロナ時代の子育てについてお伺いしました。
前編に続き後編は、コロナ禍で増えた親の負担やタスクとの向き合い方について。



“学び”を学校任せにしない。学習習慣は家庭で育むもの


―休校期間中は、食事作りや子どもの勉強のフォローなど親の負担が増えました。特に、まだ学校に通ったこともない小学一年生の親御さんは、勉強させるのに苦労したようです。

今まで“学び”を学校任せにしてきたご家庭ほど、コロナ禍で苦労されたように思います。“勉強も学習習慣も学校が教えてくれるもの”という刷り込みが親の側にあり、家の中で“学び”ということに十分に向き合えていなかったのでしょう。そのため、コロナ休校で突然“学び”を家庭に丸投げされて、戸惑ってしまったのです。

“一年生だから大変”という感覚も、“学び”を学校任せにしていることの表れです。“勉強は小学校が始まってから”という間違った思い込みをしている人が意外と多いのですが、“学び”というのは物心ついたときからさせてあげたほうがいいもの。幼児期に学ぶことから遠ざけられていた子が、小学校に入って急に「勉強しろ」と言われても、戸惑ってあたりまえです。そもそも勉強のしかたを教わってないのだから、できるわけがないのです。

―勉強や学びということについての、親側の意識の切り替えが求められているということですね。

そうですね。“学び”を学校に依存するのではなく、家庭内でも“学びの力を育てる”という視点を持つことが重要です。子どもが何か疑問を持ったときに一緒に調べたり、街中で見かけた数字をきっかけに計算の話を展開したりなど、学習に関することを生活の中に組み込むようにして、“学び”の素地をつくってあげましょう。

また、「勉強しなきゃいけない」とか「宿題をこなさなきゃいけない」というように、義務として捉えてしまう人が多いですが、そうではなく、勉強は本来面白いもの。まずは親の意識を変え、子どもにもそのように提示してあげられるようになると、学習習慣も身につきやすくなり、自ら学べる子に育ちます。

「ねば」「べき」発想からの解放が、子どもを伸ばす


―学校が休校になってしまったぶん、「子どもの学びを止めてはいけない」という義務感にかられてしまった人も多かったように思います。

休校中の相談でも、「勉強が遅れちゃうからやらねば」とか「宿題だからやるべき」など、「ねば」「べき」という言葉を多用する親御さんがとても多かったですね。これは全てのカリキュラムを家庭に丸投げした学校側にも問題があったと思います。“学び”には集団で取り組むからこそできるものもあるため、学校のメニュー全てを家でこなすことなど、所詮無理な話なのです。

でも、“学び”を学校任せにしてきたおうちは、「何を間引いて、何を学ばせてあげればいいか」という“この子の勉強スタイル”をつくることに慣れていません。そのため、与えられたメニューと「ねば」に縛られて、余裕が無くなってしまったのだと思います。

―真面目な親御さんほど「ねば」「べき」発想にどうしても陥りやすいですが、そこから抜け出すにはどうしたらいいのでしょう?

まずは、「与えられたタスクを全てこなさないとダメになる」という勘違いをやめることです。例えば、10ある宿題のうち7で止まった時、「3できてないからそのぶんだけ遅れるよ」と言う親と、「とりあえず7までできたね」と言う親がいたら、後者のほうが子どもは絶対に伸びます。7できたという満足感が得られるため、8まで伸ばすのもそんなに難しくないからです。でも、7やった時に「3遅れたよ」と言われた子は、「やっても意味がない」と思い、0になってしまう可能性があります。

10できていなくても、7なら7なりのやった事実はあるのだから、そこを認めてあげること。やれてること、気持ちが向いてることを見つけて、そこを伸ばしたほうが、はるかに芽を出します。

―著書の中にも「見守る子育て」の三原則として、子どもを「認める」「見守る」「待つ」を挙げられていましたが、このスタンスが大切ということですね。

特に「認める」ということがとても大事です。子どもは認められることにより、安心感や自己肯定感が得られ、それが自分軸を育てます。自分軸のある子は、コロナ禍においても崩れずに、自分を保つことができたと思います。

子ども自身を尊重して認めてあげるには、やらせたいメニューを減らすという選択も必要になってきます。SNSなどで子育て情報が溢れている今、教育によさそうなものをあれもこれもと子どもに詰め込もうとする親御さんが増えていますが、やらせたいことが多すぎると待てないし、子どもをよく見てあげる余裕もなくなります。タスクをひとつ減らして、待てるチャンスを増やしたほうが、子どもの成長は大きい。それを知っておくと、「ねば」「べき」発想にも向かわずに済むのではないでしょうか。


自分ひとりで抱え込まず、家族や先生と役割分担を


また、「ねば」の多い人というのは、夫婦や家族の会話が少ない傾向にあります。家族で話し合えていれば、「全部は無理だから、これは後回しでいいんじゃない?」という会話ができたり、「算数はパパが得意だから、よろしくね」など、お互いの持ち味や得意なところを活かして助け合え、思考も柔軟になります。子どもに対しても、「ママがごはん作っている間に、これをやっておいてね」と言えるおうちは、そこまで親の負担が大きくならずに済んだと思います。

でも「自分がやらねば」とひとりで全部しょいこんでしまう人は、できないことがあると自分がマイナスを生んでいるような気がして負い目に感じてしまうため、「これくらいでいいかな」という線引きや、適度に間引くという発想に至りません。だから、まずはその孤独な状態に陥っている自分の置かれた環境を変えること。自分を助けてもらうことを、家の中から始めてみることが大切です。


―間引くという選択はなかなか勇気がいるものだし、何を間引くかを決めるのも難しそうです。

日頃から子どものことをよく観察して、「うちの子はここはできてるけど、このへんはちょっと心配だな」ということをわかっていないと、やはり難しいと思います。でもわからなければ、先生に聞けばいいだけ。“家で起きていることは親が全部やらなきゃ”と抱え込む必要はありません。悩んでいる人の多くは、先生にコンタクトを取ることにも躊躇しがちなのですが、もっと気楽に先生に質問していいと思います。

―新刊『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て 』にも、先生との関わり方のコツが書かれていました。

学校や先生を何か特別な聖域のように捉えていて、気軽に相談できる相手と思っていない人が多いんですよね。これは先程の“勉強は学校でやるもの”という発想とも関係しているのですが、“学校に子どもを預けている”という感覚のため、学校と家庭を全くの別物のように捉えてしまっているのです。

でも本来、先生は自分たち親のパートナー。家庭と学校が連携して子どもを育てていくわけだから、親と先生が連携を取れていないほうがおかしいですよね。“預けている”ではなく“繋がっている”という感覚を持ち、先生と相互に協力し合う関係を築けたら、「自分が全部やらねば」と縛られているところからも、ちょっと抜け出せるような気がします。

“子育ては2勝8敗”、できているところを認めよう


―まだまだ先の見えない世の中ですが、コロナ禍で子育てに奮闘している親御さんたちにメッセージをお願いします。

コロナ禍では、多くの人が我が家のことを考えたり、学校との付き合い方を考えたり、今まで当たり前に過ごしてきた子どもを取り巻く環境を、見つめ直す時期だったように思います。しんどいことも多かったでしょうが、子どもを理解し直すこと、自分自身を理解し直すこと、パートナーや家族と理解し合うことで、自分たちの子育ての軸のようなものを見つけ出す機会になったのなら、このコロナ禍における子育ての苦しさにも意味があったのではないでしょうか。

また、子育てには子どもを「認める」ことが大事と言いましたが、親として成長するためにも、親である自分自身を「認めてあげる」ことが大切です。できていないことに目を向けるのではなく、自分がやれていること、できたことを見つけていくことが、親をやるうえでの自信や安心感につながります。“子育ては2勝8敗”。10回のうち2回でもうまくやれたなら上出来です。できていることに目を向けるようにしましょう。

◇ ◇ ◇

コロナ禍にも負けない自分軸を育てることのできる「見守る子育て」。その第二弾となる新刊『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て 』では、自ら学ぶ子に育つための親としての環境づくりや関わり方が43のコツとして紹介されています。コロナ禍でがんばり過ぎてへとへとになった人も、読めば「ねば」の呪縛から解放されるヒントが見つかるかもしれません。自分ひとりで抱え込まずに家族や学校と協力し合う、という視点を取り入れ、新たな子育て環境の構築への一歩を踏み出してみませんか。



Profile


小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。著書多数。

文=酒詰明子

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