「子どもには少しでもいい人生を歩んでほしい」と、親であれば誰しも願うもの。
先の見えない時代を切り拓く子どもたちが、幸せを掴むために必要なのは、自分への理解に基づいた判断基準、すなわち自分軸です。
30年間教育に携わる教育家であり、「見守る子育て研究所」所長の小川大介氏による2021年1月刊行の新刊『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て』から、自分軸を伸ばす子育てのコツをピックアップしてご紹介します。
※本作品は小川 大介著の書籍『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て』から一部抜粋・編集した連載です
母親がガミガミ言いがちな理由を知る
本書を通して、「当たり前のことをほめること」、その大切さに繰り返し触れてきました。
ほめることの大切さをお話しすると、「もっとほめてあげたいのに、叱ってばかりです」「叱ってばかりいる私は、本当はこの子のことが嫌いなのでしょうか」という反応をいただくこともあります。
ですが、叱るのもほめるのも、実は同じことなのです。この子が大事、この子によりよく生きてほしいという思いが、違う形で表れているだけです。
叱るのは、お子さんが大事だからです。ものすごく叱るのは、お子さんがものすごく大事だからです。ものすごく心配でものすごく大事にしてあげたいから、叱りすぎてしまうのです。こういうことを知っておくとよいですね。
不安や心配は、度が過ぎると怒りに変わります。際限なく叱ってしまうのは、親が不安を抱えていたり、忙しすぎたりして、いっぱいいっぱいになっている証拠です。
ふと我に返って、毎日毎日ガミガミ言っている自分に嫌気がさしたときは、まず「自分はこんなにも子どものことが大事なんだ」ということに気づきましょう。
それと同時に、「余裕のなさが叱りすぎという表れ方をしているのだから、人に助けてもらったほうがいいタイミングだな」ということにさえ気づければ大丈夫です。
■なぜ母親は子どもを叱りすぎるのか
こんなふうに叱りすぎてしまうのは、総じてお母さんのほうです。その理由は、子どもを授かったときからの数年間にあります。
母親は、子どもを授かったときから命がけで子育てをしてきたということがその理由です。
私はいつも「お母さんたちが叱りすぎてしまうのは、命がけで子育てをしてきた勲章です」とお伝えするのですが、子どもが3歳くらいになるまで、母親がどれだけ子育てに力を尽くしてきたかを考えれば、命がけという言葉は決して大げさなものではありません。
生まれたばかりの赤ちゃんに、数時間おきに授乳します。まとまった睡眠時間が取れない日が数カ月、あるいは1年以上続くこともあります。
乳児は言葉でコミュニケーションがとれませんから、お腹が空いていないか、具合が悪くないかと、子どもの表情や泣き声に日々神経を使います。
口には出さずとも、「ちょっとでも私が目を離したり、泣き声に気づいてあげられなかったりしたら、病気になってしまうかもしれない、死んでしまうかもしれない」、そのくらいの気持ちで、お母さんたちは頑張っているのです。
常に最悪の状態を考え、問題点を素早く見つけることでわが子を守り続けているのが、小さな子どもを抱えている母親です。母親というのは、言うなれば「問題点を見つけるプロフェッショナル」なのです。それを3年も続けていたら、「子どものいいところを見ましょう」と言われても、そう簡単にはいかないのはもうおわかりでしょう。
ガミガミ言うのは命がけでやってきた証拠です。それは勲章として受け止めたうえで、次はその愛情を少しずつ意識して「見守る力」へと変えていきましょう。
ここまで必死に子育てしてきたのですから、そのエネルギーは必ず、「見守る」方向に変えていけます。
著=小川 大介「自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て」(KADOKAWA)