舞台や映画、CMなどで活躍し、さまざまな美しい表情で見る人を魅了する女優・永 夏子(はる・なつこ)さん。忙しい女優業のかたわら、心理カウンセリングスペシャリスト、eMC(R)/EAPメンタルヘルスカウンセラーの資格を取得し、現在は心理カウンセラーとしても活躍しています。
私生活では2018年に俳優の小池徹平さんと結婚し、現在は一児の母でもある永さんに、モデル・インタビュアー・通訳・占い師として活躍するラヴィー・ヒトミがインタビュー。2人は、2011年に舞台で共演して以来、近況を報告し合う旧知の仲だそう! 俳優を目指すきっかけや心理カウンセラーしての思い、育児や夫婦円満のコツまで、あれこれお話しいただきました。
表現することは私にとってデトックスのようなもの。内に秘めた思いを爆発させています!
ラヴィー 「大学卒業後から女優活動を始めていますけれど、小さい頃から女優志望だったんですか?」
永 「私はもともと自分のことを話すのが得意じゃないんですね。悩みがあっても、『ねぇ、聞いてよ!』というタイプではなくて。結局、自分で熟考して自分の意見を貫かないと納得しないんです。でも、思うことやいろんな感情は心の中にずっとあって、それをどうやって排出したらいいのかな、と思った時に、表現するというお仕事にたどり着きました。昔はバンドのボーカル、チアリーディングなどもやっていたんですよ。声を出したり、体を動かすとスッキリして! それで、大学を卒業してすぐに事務所に所属しました」
ラヴィー「なっちゃん(永さんのことはずっとこう呼んでいます!)の誕生日から、気質をみてみると、抑えつけられることが嫌いで、我が道を行く人なんですよね。協調性はあるけど、マイペースで、『これだ!』と自分が思ったら、人にとやかく言われたくないという」
永 「そういうところ、ありますね~。表現することは、私の中ではデトックスに近い感覚。例えば、何か悲しい事があった時、人に話すのは上手じゃないけど、自分の中の引き出しにしまっておいて、そういう役が来た時にそれを爆発させて、その感情を消化するという感じです」
ラヴィー 「なっちゃんは自分のことを語ることは少ないですが、相手の話を聞くのはすごく好きで、相手にうまく合わせることもできる人。人と接すること、表現することもすごく向いているので、女優業は天職でもあります。人の目につかないところで本領を発揮して成功していくタイプだから、自分に『これでいい』と言い聞かせながら黙々とやっていくと、さらにいい方向にいくと思います」
永 「自分のことを語らない…当たってます! 天職というのはうれしいですね。黙々とがんばります」
心理カウンセラーになったのは、表現者の心を少しでも支えたいとの思いから
ラヴィー 「2018年に心理カウンセラーとして事務所を設立し、俳優業と並行して活動されています。心理カウンセリングスペシャリストと、EAPメンタルヘルスカウンセラーの2つの資格を取ろうと思ったきっかけについて教えていただけますか?」
永 「はい。大学を卒業してから芸能界でいろんな人たちに出会ったことがきっかけです。俳優として芸能の世界に関わってきましたが、表現をしたい、芸能でがんばりたいという純粋で繊細な感性を持っているアーティストや仲間が、人知れず表舞台から遠ざかってしまったり、時には自らを傷つけたり、そんな姿を何度も見てきました。裏では大変な苦労を重ねているのに、そんなことは一切隠してキラキラした姿を見せて、応援されたり、憧れられたり。そんなギャップを感じて、自分に何かできることはないかな、と思ったんです」
ラヴィー 「2018年に起業していますが、これ、最高な時に始めています! これまでの苦労が実る時に起業しているんですよ。チャンスは2017年から来てたので、それをうまく生かせた形です」
永 「本当ですか!? うれしいです。最近、芸能界のメンタルヘルスもすごく重要視されるようになってきているので、周囲の方々にも『絶対にやったほうがいいよ』と応援していただいて。俳優業と並行しているのは、少し欲張りなんですが、自分にはまだ表現の場も必要だし、自分が現場で出ることで、現在の芸能界の様子や悩みに直接ふれる機会も常に持てるだろうな、と思ったからなんです」
ラヴィー 「いまはどんな方をカウンセリングしているんですか?」
永 「過去に共演したことがある方や、ベンチャー企業の方などです。もちろん、その方々に笑顔になってもらえるとうれしいですが、『悩んでいた時に、そういえば、あの人に聞いてもらったなぁ』と、なんとなく思い返してもらうくらいでいいんです」
ラヴィー 「なっちゃんは、人に尽くしたり、必要とされたりする時に喜びややりがいを感じる人。『自分の力でどうにかしたい』というテーマを強く思って生まれてきているので、心理カウンセラーのお仕事はまさに!という感じなんですよ」
偉大な母にどこか引け目を感じていた子供時代。自身を見つめることでようやく自由に
ラヴィー 「心理カウンセリングを学ぶことで、自分も何か変わりました?」
永 「そうですね…人に寄り添うことを学ぶ中で、自分自身にも寄り添うようになりました。セルフカウンセリングみたいなものをやっていくうちに、『自分ってこうなんだな』と納得することもあったり。今まで、怒りや悲しみといった感情のやり場って表現でしかぶつけられなかったんですが、そうしなくても自分を保てるようになった気がします」
ラヴィー 「自分の嫌な部分もみえてきたり?」
永 「もちろん! みえちゃったのは、すごい嫌でしたねぇ(笑)。私は反抗期とかがなくて、『いい子にしてなきゃ』みたいな子だったんですが、母親と関係があったことがわかったし、母親からは愛情もずっともらっていたので、それが本当にありがたいことも再確認しました」
ラヴィー 「お母様はどんな方?」
永 「母は昔フェンシングの選手で、けがでオリンピックを断念したんですけど、今も高校で監督をやっていたり、ものすごいパワフルな人で…。
オリンピックを目指すって、『自分が世界で一番になれる』ってどこかで信じていないとできないと思うんですよね。『金メダルをとりたい』と思うような人と、自分は違うなとずっと思っていました。
母は、自分にとって偉大な人。カリスマ性があって、愛情深くて、自分が世界一になれると信じる力もあって、思想とか信念とか全てに迷いがない人。それってすばらしいことだけど、私にはできないな、って」
ラヴィー 「お母様を誕生日でみてみると、すごく芯の強い方! 普通の人の100倍くらい!(笑) 生命力も強い方ですね」
永 「やっぱり! 自分でいうのもおかしいんですが、私、すごく努力する子だったんですよ。小学校受験の塾の成績もよかったし、絵で賞をとったり。でも、いつもどこか自信がない。『いやいや、私なんか全然』って思ってました、偉大な母が近くにいたから。
母は愛情をたくさん注いでくれて、いつも「本当にすごいよ」って褒めてくれて…。教育方針としては全く間違っていないんですけどね」
ラヴィー 「どこか、お母様の顔色を伺っているような子でしたか?」
永 「そうですね。慎重な人間に育っていたと思います。女優として表現したいと言う勇気もなかなか出なくて。でも、30歳を過ぎて心理カウンセリングの勉強を始めてから、『私が自分らしいことをしても親が悲しむわけじゃない。そう思い込んでいただけだ』と気付けたんです。自由に、楽になれましたね」
第一印象は「楽しそうにお酒を飲む人」(笑)。お互いが冷静に人生を考えて決断した結婚
ラヴィー 「2018年には、俳優の小池徹平さんとご結婚されました。第一印象はどんな感じでしたか?」
永 「私の舞台の稽古後にみんなで食事をしている時に、たまたま知人がそのお店に来ていて、一緒にいたのが夫でした。その時は挨拶程度だったんですけど、『楽しそうにお酒を飲む方だなぁ』という印象でしたね」
ラヴィー 「結婚の決め手ってありましたか?」
永 「人を大事にするところですね。お友達もすごくいい人ばかりで、芸能界以外のお友達が多かったのもいいなと思いました。あとは、私の両親のことも、自分が大事な人と同じように大切に接してくれたところ。彼は、私と出会ってからよりも、大切に仕事をしてきた年月のほうが長いので、『あなたのプラスになるようにがんばるけど、それでもダメなら、運命ではなかったとあきらめましょう』という話はしましたね。
お互いが冷静にそれぞれの人生を考えて、『自分にとって相手が必要か、相手にとって自分が必要か』といったことも考える時間もあって、いまに至っています」
子育てを楽しくできることに幸せを感じたい。そのために必要なことは…!?
ラヴィー 「2019年9月に出産されて、お子さんも1歳ですね! ご夫婦の育児のモットーのようなものはありますか?」
永 「楽しくなくなっちゃうと嫌だよね、ということでしょうか。子供はもちろん大事で、第一優先だけど、楽しく感じるには、自分の心に余裕もないといけないですよね。『楽しくする努力を怠らず、子育てを楽しくできるってことに幸せを感じたいね』と話しています」
ラヴィー 「お二人の間には家事の分担などはあるんですか?」
永 「そうですね…今はできる方が自然にやる流れになっていますね。私が子供のお世話をしている間に、夫が家事をやってくれたり。役割や分担をきちっと決めていない分、そのたびに『ありがとう』『ごめんね』と声をかけ合ったりしていて、そんな関係をいいなと思っているところです」
ラヴィー 「すごく素敵な関係ですね! ステイホーム中もそんなふうに?」
永 「私は日々の生活にそんなに影響はなかったんですが、夫はエンタメ界が今後どうなっていくか…ということも気になっていたと思います。でも、『家族でこんなに一緒にいられることはないから、この期間は、全力で我が家のエンタメ担当になってくれればいいよ』と言っていました。
夫は家事がもともとできる人で、日々忙しいから少ない時間で効率よく済ませる方法を身に着けているんですよね。皿洗いも洗濯もきちんと、そして早いんです。家事もどんどんやってくれようとしてたんですけど、通常の生活に戻った時に私のリズムが変わってしまうので『気にならなければ、のんびりした私の家事のペースに付き合ってね』とお願いしていました」
頭の中で作っている夫の“トリセツ”。夫に「おもろいな」と言われた時はヤバい時!?
ラヴィー 「お2人ともすごく大人で完成されているんですよね。お互いを思い合っていてうらやましい! 旦那さまは努力家だし、頭もすごくいいし、常識もあって、しっかりものごとを考えられる方で。人前に出る仕事も天職ですし」
永 「疲れたとか全然言わないんです。仕事から帰ってきて『おつかれさま』と言っても、『いや全然、ありがたいことだよ』とか言うような人で…。素直に"疲れた"って言える強さもあるよ、って思ったりもするんですけど(笑)」
ラヴィー 「自分くらいには疲れたところを見せてほしかった?」
永 「無理にそうして欲しいとは思わないので、自分のゆるさとかを丸出しにして、『そういう人もいるんだな』と思ってもらえたらいいな、と思って自然にしていました。
いまは夫のトリセツ(取扱説明書)を作っています。文字にしているわけじゃないけど、頭の中で。夫も作っていると思います。私が不機嫌になるスイッチとか、喜ぶポイントとか、私よりも知っているかもしれないです(笑)。
パートナーのトリセツをちゃんと自分が持ってるかどうかって、すごく大事だと思うんです。相手がされたり言われたりして嫌なことは絶対にしちゃいけないと思うし、機嫌の取り方もわかっていたほうがいいですよね。
トリセツって相手に無関心では作れないですよね。だから、相手をよく見て観察して、人としての面白みを感じたり、カッコ悪いところや欠点もきちんと見たりすることが大切なんじゃないかな、と思っています」
ラヴィー 「自分よりも自分のことをわかっている人がいるというのはうれしいし、安心感もありますね」
永 「はい。相手の欠点も『面白いな』と思える気持ちを持てるといいですよね。夫にはよく『そういうところ、おもろいな』と言われます(※編集部注:小池さんは大阪府出身)。ポジティブな指摘を自然にしてくれているんですが、『そういうところ、〇〇だよね』と言われてしまうと『え!?』と思うけれど、『おもろい』と言われると否定されている気がしないんです。改めて意識して『あれ、よくなかったかな、おかしかったかな』と気づけるというか。相手の嫌なところをどう伝えたらいいか迷う時は、こういう言い方はありだと思いますね。責めたいのではなく、意識してくれればいいわけだから。でも、最近『おもろいな』が多くなってきてるから、ちょっとまずいかな…(笑)」
ときどき深呼吸しながらマイペースに準備を進めれば、幸せな40代に!
ラヴィー 「公私ともに順調でとっても幸せそうですが、悩みなんてあります!?」
永 「仕事と育児の両立でしょうか。いまは1日1日が終わることにほっとしてる日々で…」
ラヴィー 「なっちゃんの2020~22年は修業期間。母、妻、女優、心理カウンセラーとして力を付ける時で、いま何か目標を持っておけば、ちょうど40歳になった頃に新しいことができそうですよ。いまきちんと将来のビジョンを持って、この2~3年で温めながら準備していくといいと思います。
タロットでは『疲労』を意味するカードが出ましたが、疲れる時間は自分の成長に必要な時間。人との距離感を考えながら、例え周囲がなんと言おうと、なっちゃんの意思でやりたいことを貫くといいですね。『考えすぎ』『「自分で自分を苦しめる』を意味するカードも出たので、仕事では戦闘モードも大事だけど、自分を少しゆるませて深呼吸をする時間を設けてくださいね」
永 「カウンセリング中は、『意識的に深呼吸してみてくださいね』と声をかけているんですけどね。自分ではなかなかする余裕がなくて…。改めて自分でも意識していきたいです!」
ラヴィー 「ご自身も深呼吸してくださいね。そうすれば、新しい自分のために何が必要かマイペースで見つけていくことができるし、素敵な40代を迎えられると思いますよ!」
ラヴィー・ヒトミより----
オンラインでしたが、久々にお話しできてうれしかったです! 9年ほど前からなっちゃんを知っていますが、昔から美しくてかわいくて優しくて聡明で、欠点が全く見つからない方です。
ほわんと柔らかな雰囲気をまとい、ご自身のことも「ほんとにゆるい人間」と言っていましたが、実はとっても芯の強い方。それは、少しでも仲間の助けになりたいという思いから心理カウンセラーとして起業したり、理想とする夫婦の絆や家族の形に向かって明るく努力していることからも伺えます。
いずれは、「話を聞く側(心理カウンセラー)になりたいと考えている人に情報を発信していきたい」という、将来のビジョンも明確に描いていらっしゃいました。
結婚前は「1人でやりたいことに没頭する人生も幸せかな」と思っていたそうですが、結婚し、妻に母になったいまは「家族や子供は宝物。生活の基盤だし、気持ちのモチベーションにもつながる存在になり、本当に感謝しています」とのこと。
結婚を経て、深い愛情に包まれたなっちゃんはさらに美しく、強くなりましたね。
インタビュアー=ラヴィー・ヒトミ
編集協力=岡田知子(BLOOM)