「ずっと暑かったせいか、だるさやめまいが気になる」このようなお悩みや疑問はありませんか?秋のはじめ、だるさや疲れやすさを感じている人は、もしかすると鉄不足で貧血になっているのかもしれません。そこで今回は、貧血になりやすい原因や、貧血対策におすすめの食材などについて解説します。
貧血とは、からだ中に酸素を運ぶ「ヘモグロビン」が不足している状態のことです。酸素が全身に行き渡らないことで、めまいや立ちくらみ、顔色の悪さなどのさまざまな不調をもたらします。
ここでは、夏は貧血になりやすいといわれている理由について、2つ紹介します。
暑さで大量に汗をかくと、水分や塩分とともに鉄分も排出されることをご存知でしょうか。鉄分は赤血球中のヘモグロビンをつくるために重要な栄養素であるため、鉄分が不足すると、貧血を引き起こしやすくなるのです。
秋の入り口も気をつけたい熱中症防止に、水分や塩分の補給を心がけることはもちろん大切ですが、貧血気味の人は鉄分の補給も意識して行いましょう。
夏は連日の暑さによって食欲が落ち、そうめんやアイスクリームなど、栄養価の低いさっぱりとしたものばかり食べていませんでしたか?
食欲が落ちて栄養が偏ると鉄分不足になりやすく、立ちくらみやめまいなどの貧血症状が出やすいといわれています。
貧血を悪化させないため、食生活を工夫してみましょう。
鉄は「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類に分けられます。
ヘム鉄とはからだに吸収されやすい種類の鉄であり、主に赤身肉やシジミ、アサリなどの動物性食品によく含まれています。
一方、非ヘム鉄とは、豆類やほうれん草といった植物性食品に多く含まれる鉄のことです。
非ヘム鉄はヘム鉄より体内への吸収率は劣るものの、ビタミンCと一緒に摂ることで吸収率が高まります。
仕事や家庭のことで忙しく、なかなか食事に気を使えない人は、飲み物で貧血対策をすることもできます。
一般的な豆乳には、200mlあたりおよそ2.8mgの鉄分が含まれています。成人女性(月経がある)における1日の摂取目安量が約10.5mgなので、200mlの豆乳で1/4程度の鉄分を補える計算です。
豆乳に含まれる鉄は非ヘム鉄であるため、吸収率を高めるためにビタミンCを一緒に摂取するといいでしょう。
コーヒーや紅茶に含まれるカフェインやタンニンは、鉄の吸収を抑える成分です。そのため、なるべく食事と一緒に摂らないようにしましょう。
どうしても食事の際にお茶類を飲みたい場合は、カフェインやタンニンの含有量が比較的少ないほうじ茶やウーロン茶などがおすすめです。
普段の食事やサプリメントに加えて、漢方薬の服用をすることで、より効率的に貧血対策を行うことができます。
貧血になる原因としては、食生活の偏りや食欲の低下による鉄の摂取不足、汗をかきすぎることによる鉄の排出、月経や消化管疾患などによる出血などが考えられます。
貧血の改善には、次のような働きをもつ漢方薬を選びます。
・血液を巡らせて脳に酸素や栄養を運ぶ
・胃腸の働きをよくして血液をつくる機能を回復する
・栄養を全身に運んで疲労を緩和する
西洋薬やサプリメントは、足りない鉄分を補うのが基本です。漢方薬は栄養の吸収を助けつつ、からだの機能を回復させることで貧血の根本原因にアプローチし、貧血になりにくい体質を目指せます。
続いて、貧血対策におすすめの漢方薬を2つ紹介します。
・十全大補湯(じゅうぜんたいほとう):食欲がなく、貧血が気になる方におすすめです。元気と栄養を補って体力低下、疲労倦怠、からだの冷えに働きかけます。
・加味帰脾湯(かみきひとう):胃腸の機能を高めてからだのエネルギーと栄養を補うことで、貧血、不眠、精神不安を改善する漢方薬です。血色の悪い方によく用いられます。
*漢方薬は比較的安全だといわれていますが、きちんと合ったものでないと十分な効果を得られないだけでなく、場合によっては副作用が生じることもあります。どの漢方薬が適切か見極めるには、専門家のアドバイスに従いましょう。
文・監修/稲嶺千春(いなみね・ちはる)●薬剤師。製薬企業や調剤薬局に勤務する中で、根本治療の大切さを広めたいと考え、精度の高い漢方の情報発信を行う。