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Vol.173 プラスチック油化の技術について見学してきました。その2

  • 2015年6月18日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 今回も、株式会社ブレストを見学させていただいたレポートの続きです。というか、この会社の取り組みの核心に触れる話になっていくわけですが、その前に改めて前回の最後にご紹介した、国連大学の紹介ビデオの反響に対する同社の対応についての伊東社長の説明を読み直してみてください。

Be-h(投入)
伊東昭典社長・環境授業(国内)
 まず、真ん中あたりに「こんなにていねいにゴミを分別することができるはずない」という発言がありますが、同社の油化装置はプラスチックのなかでもポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)という3種が対象なので、それを分別し、必要に応じて洗浄し、乾燥させる、という行程が必要になります。(PET樹脂やアクリル樹脂、塩化ビニルやABS樹脂などは除かないといけません)そこで、この会社の取り組みが素晴らしいのは、小学生たちに、自分の身の周りで発生するプラスチック・ゴミの中からその3種のプラを分別し洗浄、乾燥を経て持ち寄ってもらい、その“戦利品”を目の前で同社の装置を使って油化してみせる、という体験授業を行っていることです。僕は、この連載で「蛇口をひねれば、普通に水が出てくるけれど、どうしてそうなっているのか、考えてみるといいんじゃないか」ということをしばしば書きますが、この体験授業は「キミたちが、ああやって、こうやってくれたものが、こうなるんだよ」と、石油とはなにか、エネルギー資源とはなにかということを身近な体験とともに考えさせてくれるわけです。しかも、子どもたちに向けては、そうしたゴミ処理に必要な手間とその成果を実感させる一方で、大人に向けては、というか広く社会に対しては、「その3種のプラかどうかを確認しなくても、とにかくプラ・ゴミなら油化できる」という環境づくりのために、容器や包装に使用されるプラスチックを油化に適した素材に統一する活動を様々な企業と連携して進めています。

 再び、国連大学の紹介ビデオの反響に対する同社の対応についての伊東社長の説明に戻ります。「その画期的な装置を売ってくれ」という世界中からのメールに対して、伊東社長は「まずは、この装置を使って石油に戻す作業を、自分たちが事業としてやれるかどうか確認してください」と言って、対応したそうです。そこには、「目の前のお金欲しさに、彼らの言う通りに」していたら会社が駄目になるという、経営者としての冷静な判断ももちろんはたらいていたと思いますが、それと同時に、あるいはそれ以上に、自分たちの技術を使って世界のゴミ問題に解決の道筋をつけるということに対する月並みでない強い意志があったのだと思います。

 その上で、そうした理想に燃える人たちがしばしば感じさせる押し付けがましさや上から目線を伊東社長はまったく感じさせなかった、ということもぜひお伝えしておきたいです。「正しいから、やるんだ!」とか「こうするべき!」といった押し出しを、意図的に弱めている感じには、すごく共感できました。どんなことを説明するときにも、例えば“子どもの気持ちを惹くには?”みたいな、素朴なところから発想しているんじゃないかなあというふうに感じました。様々な逆風や逆境、障害を乗り越えて来られたであろう伊東社長にとって、子どもたちとのふれあいが原点になっている部分が少なからずあるのかもしれない、と思いました。

 というわけで、僕なりに株式会社ブレストの取り組みを整理すると、基本として企業がやっていることですから「お金儲けは度外視して」というようなことではないわけですが、それにしても一定の収益をあげるその先に、ゴミ問題の解決という社会的な意義を見定め、そこに向かってグローバルな、そして長期的なスケールでこの問題に取り組んでいる、というふうに言っていいように思います。特に、社会全体の価値観を変えていくためには子どものときからの意識付けが大切という問題意識を持って、社長自身が積極的に小学校の現場に出かけていって、ゴミ問題に対する啓蒙活動を楽しく展開していることに心から敬意を表したいと思います。

 伊東社長のお話は、まだまだ紹介したいことがあるので、次回に続きます。どうぞ、お楽しみに。

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