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Vol.155 じつは、僕も氷水をかぶったんです。

  • 2014年9月25日

 みなさん、こんにちは。全国ツアーがいよいよ始まったゴスペラーズの北山陽一です。

 今回は、他でもないというか、いろんな意味で世間を騒がせた「アイス・バケツ・チャレンジ」の話です。あの運動というか、アイデア、およびそれに参加した人たち、あるいは参加しなかった人たちについては、すでにいろんな意見が交わされていますよね。そもそも、あの運動やアイデア自体についても賛否両論があって、最近の日本では否定的な評価のほうがちょっと優勢になっているような印象も受けます。でも、僕自身は、あの運動を知って以来、一貫して肯定的に捉えています。僕も氷水をかぶりましたし(笑)。

 念のために基本的なことを説明しておくと、「アイス・バケツ・チャレンジ」は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の研究を支援するための運動で、3つのルールがあります。それは指名されたら、24時間以内に氷水をかぶるか、アメリカALS協会に100ドル寄付するか、あるいはその両方をやるかということなんですけど、僕は「ゴスペラーズの北山陽一」から指名を受けて、「AWS代表の北山陽一」として、AWSの仲間と一緒に氷水をかぶりました。「ゴスペラーズの北山陽一」から「AWS代表の北山陽一」、というところでもう「何をフザけたことをやってるんだ!」という声が聞こえてきそうですが(笑)、僕自身はそのアイデアをけっこう気に入っています。

氷 そもそも、僕がなぜ実際に氷水をかぶったのかと言うと、ALS研究支援にぜひ何かの形で協力したいという気持ちがあったことは大前提ですが、実際に氷水をかぶったいちばんの原動力は“楽しそうだから”というごくごく単純な理由です。もちろん、そうした具体的な行動を起こすからには、元々その運動の火を起こした人はどういう思いでやったのか、その起こった火によって何が行われようとしているのか、といったことをいろいろ調べましたし、「そういうことならこういうふうに賛同したい」ということをちゃんと文字化してfacebook上で表明しました。その上で、というか、だからこそ動画では楽しみたいというのが僕のスタンスでした。また、誰を指名するかについては、東北でお世話になっているいろんな方の顔が浮かんだし(その人たちはその後別の人から指名されてやはり氷水をかぶったりしていますが)自分が氷水をかぶった映像を編集していくなかで、普通に3人指名するのがなぜだか悔しくなっちゃったんです(笑)。それで、「僕の動画を見て楽しくなった人は、みんなそれぞれにやってください」ということにしました。ふんわり賛同する人はふんわりつながっていってくださいっていう感じですが、でもまあ、一種の「掟破り」ですよね。ただ、AWSという組織もそういう組織なので、ちょうど良かったかなと思っていますし、僕自身、本当に楽しんでやれたから満足しています。

 「アイス・バケツ・チャレンジ」が世界的な広がりを得て社会現象化していく上で、facebookなどのソーシャルメディアやYouTubeなどの動画共有サイトが大きな役割を果たしたことはすでによく知られていますが、しかし考えてみればそうしたメディアを使って何かの運動や取り組みを広げようとした人はこれまでにもたくさんいたはずです。そのなかで、なぜこの「アイス・バケツ・チャレンジ」だけがこんなに“大ヒット”したんでしょう?

 ここで取り上げたのは、じつはそのことをみんなで考えたかったからです。僕自身が「アイス・バケツ・チャレンジ」の“成功”を見てあらためて思ったのは、“どんなことでも人に何かを伝えようとするなら、やっぱりそこに何らかのギャップが欠かせないんだな”ということでした。なんで?っていうひっかかりがあって初めて、その先に来てもらえるわけです。「指名されたから3人指名して氷水かぶります」って、意味がわからないじゃないですか。楽しそうな「なにこれ?」っていうものの先に真面目な、共感を呼びそうなことを忍ばせておく。うまいな、と思います。あるいは、“どんなことであれ、何かを発信しようとする場合に大切なのは、発信する当事者が発信すること自体を楽しんでいるということ”です。「暑い夏に氷水をかぶる」だったからこそ、難病支援に「たのしそう」というギャップを与えられたんだと思います。(たとえば真冬だと難易度が高すぎです。南半球の人達はかわいそうでしたし)

 例えばこの連載を読んでくれる人、あるいは緑のgooにアクセスしてくる人が何かを発信する場合、そしてその内容がシリアスというか、平たく言えば真面目な内容である場合は特に、発信を楽しんでいるかどうかということがすごく大切になってくると思うし、その楽しんでいる姿がじつは発信している内容の説得力を補強することになったりするんですよね。

 というわけで、今回は自分が取り組んでいる運動について何か発信する場合の、僕なりの考えを書いてみたわけですが、次回は逆に誰かが発信しているものの受け取り方、付き合い方について考えてみたいと思います。どうぞ、お付き合い下さい。

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