みなさん、あけましておめでとうございます。ゴスペラーズの北山陽一です。
さて、この連載もアッという間に半年が過ぎてしまったわけですが、僕としてはけっこういい感じなんじゃないかなと思ってるんです(笑)。
そもそも、連載を始めるにあたっての僕の最初のモチベーションは、日本人ってムーブメントになるとけっこう腰が軽いというか、それに乗っていく力は強いし、流されやすいところもあるんだけど、なぜそうなのか?という理由を考えたり、それをやることを本当に納得しているかどうかの自問自答があまり行われていないんじゃないか?というところから始まってるんですね。そのことをこの半年の間にちゃんと言えたというのがまず1点。で、そのことを言おうとすると2行くらいで終わってしまうんじゃないかという不安もあったし、さらに言えば自分が考えていることや言いたいことにどれくらい深みがあるのかまだわからなかったから、その最初のモチベーションについて話すと自分のなかでは言いたいことがなくなってしまうんじゃないか?という不安もあったんですが、そういうこともなく楽しく続けられたし、反響もずいぶんいただきました。自分の身の周りはもちろん、こういう話題に関係なさそうな現場に行ったときに「そう言えば、連載やってるね」と言われたりして。“そういうことを言うということは、あなたは環境gooに行ってるということですよね”という話だから(笑)、そこから人間関係の再構築みたいなことができたというのも僕にとっては大きかったです。
ゴスペラーズのファンの人たちの反応を見ると、ネットの書き込みを見る限りでは「何を言ってるのか、わからん」という人たちと「普通のことを言ってるだけじゃん。もっと突っ込んだ話をしてよ」という人たちとにパックリ分かれている印象です。わからんという人たちに対しては、“ぼんやり学会と言いながら説明もぼんやりしてたのかなあ”という反省をしつつ、もっと突っ込んだ話をという人に対しては“ぼんやり学会というくらいなんで…”という感じなんですけど(笑)。それに、ここで書いてることの全部を全員がわかる必要もないんじゃないかというふうにも思っていて、本でも“わからないなあ…”と思いながら読んでる間にわかってくる、みたいなことがあるじゃないですか。だから、誰にでもわかる内容にしようとして無理するんじゃなくて、今の僕が持っている内容を素直に出していくというスタンスが、自分のなかでこの半年の間にかなりしっかりしてきたという感触はあるんです。というようなわけで、けっこういい感じなんじゃないか、と(笑)。
ところで、去年の暮れに印象的な経験をしました。都内にある絵本や洋書がいっぱいおいてある本屋さんに行ったんですけど、案の定(笑)、絵本とかをドカ買いしてしまったわけです。そこで「袋、いりますか?」と聞かれて、欲しいといったら紙袋を出してくれました。で、「5円です」と言うので、払ったら、その渡した5円玉を目の前で募金箱に入れて、「これで木を育てます」という説明をしてくれたんです。その本屋さんの人の「こういうふうにやるのが普通ですよ」という感じが、うれしい驚きだったというか、気持ち良かったんですよね。サービスとして提供したことに対する対価はもらって、それを環境のために使うっていう。それってCSR(企業の社会的責任)のひとつの形だと思うんですが、そこで本屋さん自体がやっていることをアピールするのではなくて、お客さんに対して「あなたにやってもらっています」という形になっているところがポイントで、それは幸せになれる人が最も多い形のひとつだと思うんです。関わった人みんなが“自分がやったんだ”と思えるっていう。こういうやり方をみんなで考えられたらいいですよね。やっていることは同じでも、受け取らせ方ひとつで広がり方はずいぶん違いますから。僕自身、まだちゃんと整理はできていないですが、こういう発想が僕の身の周りやこれからやろうとしていることにも絶対生かせるはずだと思ってるんです。それに、ぼんやり学会の一員としての僕は、みんなにこれをやってほしいというよりは、こういうふうになるべく幸せの形というものに敏感になって、その形を自分で見て解釈したうえで、“じゃあ、オレはどういうふうに幸せになろうかな”と考えるときのヒントにできる人間になりたいですね。でも、それは1年じゃ厳しいかな。3年計画くらいで(笑)。
最後に、前回の連載で2009年はよりアクティブに展開したいと書きましたが、今年はゴスペラーズのツアーで全都道府県をまわったりもするので、得意の妄想に加えて(笑)実際にいろいろと体験する機会も増やしていきたいと思っています。どうぞ、今年もよろしくお願いします。