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Vol.7 凛〜心の音色@ピアノ調律

  • 2015年9月1日

 今日はピアノの調律Dayでした。物の内側を観察するのが好きな私ですが、楽器の内部には花のメカニズムのごとく、とろけそうな甘美な世界があり、その最たる物がピアノ、と私は勝手に思っています。

 ピアノを弦楽器と思っているかたもいますが正確には、鍵盤につながるハンマーが、弦を叩いて鳴らす打弦楽器です。

 黒光りした蓋を開けると、数えきれぬ金銀の線が張り巡らされ、貴金属のような輝き。これをピアニストは何食わぬ顔でハンマーで鉄線を叩き続け、うっとりする音楽に化けさせるのですから、まるで聖女と悪女が一体化した、本当に一筋縄ではいかないやっかいな楽器…あ、褒めてませんね私(笑)。

ピアノ内部

 そんなピアノと5才の頃から向き合ってきましたが、自分のピアノを持ったのは実はデビューして約10年後の1998年。その後ずっと同じ調律師さんが年に一度調律を担当してくださっています。

調律の『カルテ』みたいなもの
調律の『カルテ』みたいなもの

調律師さんの神田さん。15年以上のおつきあい
調律師さんの神田さん。15年以上のおつきあい

 調律とは、楽器を分解・調整し、不具合のあるパーツを補正し、滑らかで響きの良い音色に蘇らせるという、音のお医者さん又は整体師さんのような仕事です。

 我が家では毎回、調律師の神田さんと一緒にピアノを拭く共同作業から始まります。本来の調律の仕事外の作業ですが、拭き方・状態の見方など快く教えてくださいます。

意外と力仕事
意外と力仕事

 その後部品を外し、今度は弦の下に布をくぐらせて板の埃をさらに拭きとります。

ここからは調律師さんお一人の作業。徐々に表情が真剣に
ここからは調律師さんお一人の作業。徐々に表情が真剣に
次に鍵盤を慎重に外し
次に鍵盤を慎重に外し
鍵盤やハンマーの溝に掃除機をかけます
鍵盤やハンマーの溝に掃除機をかけます

 1時間半を掃除に費やし、やっと本編の調律へ。

 ここから約4時間、音の緻密な『診察』が始まります。

ハンマーのねじれやすり減った箇所を点検
ハンマーのねじれや
すり減った箇所を点検
均等に鉄弦に力が加わるよう、ハンマーのフェルトをやすりでわずかに削ります
均等に鉄弦に力が加わるよう、
ハンマーのフェルトをやすりでわずかに削ります

 神田さんの仕事バッグはこちら。重くてとても私には持てません。

体重計に乗せたら15.1kgありました
体重計に乗せたら15.1kgありました
30年使い続けているドライバーや隅々を照らすライトなど、様々な職人道具の数々
30年使い続けているドライバーや隅々を照らす
ライトなど、様々な職人道具の数々

 神田さんはこの道30年のベテランですが、毎日15kgもあるバッグを左肩にかけ、様々な場所のピアノの往診をされています。腰を痛める調律師さんも多いですが、「私は足腰が丈夫なようです」と60才になられた現在も、ピシッと背筋を伸ばし、6時間弱の往診を終え帰っていかれました。紛れもなくうちのピアノの主治医です。

 楽器もペットと同じで、巡り会った人によって運命が決まるのだと思います。私のピアノは、日頃練習をサボってばかりで、そのくせコンサート直前だけいつもヒィヒィ泣きながらピアノを叩き続けるという、波のありすぎる困った買い主にあたってしまいました。

 私にとってもピアノは決してやさしい友人ではありません。ダメな自分をズバッと言い当て、励まし、凛と支えてくれる大切なパートナーなんです。

パートナー

 人生を重ねながら少しずつ変わっていく、私の音色を聴いていただくべくコンサートがこの秋もたくさんあります。

 あなたの心の音色にも耳を澄ましてみてくださいね♪

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