
能登島沿岸を悠々と泳ぐイルカの群れ=2020年9月、七尾湾【北陸新幹線で行こう!北陸・信越観光ナビ】
●「稼ぎ時」夏休み2割減
福井県内の海水浴場で野生イルカに人がかまれる被害が相次いだ影響で、七尾市能登島で行われているイルカと泳ぐ観光プログラムにキャンセルが続出している。「危なくないのか」との問い合わせが多数寄せられ、申し込みが平年比2割減となる事業者も。能登島沖にイルカがすみ着いて20年余り。今では島の観光の目玉となっており、関係者は「稼ぎ時の夏休みに大打撃だ」と風評被害を嘆いている。
能登島沿岸部では2001年に雄雌2頭がすみ着いて以来、徐々に数を増やし、現在は17頭が群れで生活している。遊覧船から眺めるイルカウオッチングや、一緒に泳ぐイルカスイムを営む事業者は4社あり、東京の御蔵島や小笠原諸島と並んで全国でも有数のイルカ観光スポットとして知られる。
一方、福井県内の海水浴場では今年5月以降、海水浴客が野生イルカにかまれてけがをしたり、体当たりされて肋骨(ろっこつ)を折るなど被害が10件以上確認されている。今月1日にも福井市の海岸で20代男性が近づいて来たイルカをなでた後、ふくらはぎや手の甲などをかまれる被害に遭った。
福井の「かみつきイルカ」は全国ニュースとなり、能登島の「能登島マリンリゾート」では「危険はないのか」「かまないのか」といった問い合わせが相次いだ。7月以降、8件ほどキャンセルがあり、夏休み中の申込数は平年より2割減ったという。例年、この時期はイルカとの遊泳を楽しむ多くの親子連れでにぎわうが、坂下さとみ代表は「今年は子どもが来なくなってしまい寂しい」と声を落とした。
同じくイルカ観光を営む民宿「山水荘」でも7、8月は約100件の予約があった中で、10件ほどがキャンセルになったという。オーナーの石田直人さんは「隣の県なので心配するお客さんも多い。今後も同様の被害が起こらないか心配だ」と気をもんだ。
●これまで被害なし
能登島観光協会などによると、島のイルカスイムにはインストラクターが同伴しており、観光客に対しては「手を出して触ろうとしない」「食事中は近づかない」などのルールを定めている。こうしたルールを守れば、けがをすることはなく、能登島ではこれまで一度も人的被害は発生していないという。
谷口和義会長は「問い合わせがあった時は能登島で事故は起きていないことを説明し、誤解がないようにしている」と話す。坂下さんは「私たちはお客さんの命を預かる覚悟を持ってやっている。安心して能登島に来てほしい」と呼び掛けた。
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