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Vol.76 レコーディング解剖

  • 2015年1月29日

 僕は今、5年ぶりのオリジナル・フルアルバム完成に向け、レコーディングを続けています。ここ数年、映画「らくごえいが」のサウンド・トラックや武蔵野美術大学でのライブ盤、南三陸ミシン工房のチャリティ・アルバムをリリースしていたものの、純粋に歌ものの書き下ろし曲を集めたアルバムは、2010年の夏以来、制作していなかったんです。リスナーの皆さんにはお待たせしてしまいました。

 どんな風にレコーディングをすすめているかということを、きちんと書いたことがないと思うので、この機会にご紹介します。僕のレコーディング作業のほとんどは、防音施行をしている自宅のスタジオで行います。以前はおもに都内の商業スタジオで録音していたのですが、こうやって自宅にスタジオを持つミュージシャンが最近は増えてきました。好きなように時間が使えるうえ、初期費用さえ賄えば使用するたびに払うスタジオ料金が抑えられるので、とても便利です。その代わり、マイクやプリアンプなど様々な機材をそろえ、時代に合わせてアップデートしていく必要もあります。

 今回はシンプルなバンドスタイルの編成になっていますが、いわゆる「せーの」で録る一発録りではなく、パートごとに分けてひとつずつ重ねていきます。まずはドラム。これは全曲、自分で叩きます。自宅スタジオの中にドラムをセッティングするのですが、すべてを置くスペースがないので、大きなバスドラムは省略して、その代わりフットペダルをひとつ置きます。トリガーというセンサーが付いたペダルが最近になって発売されたのですが、これを踏むたびにパソコンからバスドラムの音を再生することが出来るんです。おかげで省スペースで済むようになりました。

ドラムセット

 ドラムを録音したら、ベースとギターの出番。どちらも自分で弾くこともありますが、ベースはHARCOバンドの伊藤健太くんにお願いすることが多く、録音の際は我が家に来て弾いてもらいます。ほかにもバイオリンやヴィオラ、フルート、サックスといった、いろいろな楽器のミュージシャンを自宅スタジオに招くこともあるのですが、普段はひとり作業をもくもくと続けて鬱屈になりがちなので、これがなによりの救い。新鮮な風を吹き込んでくれるのは嬉しいですね。

HARCOバンドの伊藤健太くん

 ギターはHARCOバンドの石本大介くんが多くを演奏します。石本くんの自宅でも録音ができるので、いつもデータだけを持って訪ねていきます。こんな風に出張レコーディングの機会も多いのですが、そこに録音機材がないときには、ある程度の機材を持って行って録音を行います。ホームレコーディングを基本にすることは、それと同時にいつでもどこでも、そこがスタジオになるようにフレキシブルに対応することも肝心です。

HARCOバンドの石本大介くん

 ピアノなどの鍵盤楽器は、自宅スタジオで自分で演奏します。ピアノは、我が家のアップライトピアノで。本当はグランドピアノを弾きたいのですが、これまた置くスペースがないので我慢。しかし、試行錯誤を続けているうちに満足できる音が録れるようになり、むしろ今ではアップライトピアノの音の方が自分に合っているような気もしてきました。なるべくピアノの弦にマイクを近付ける「オンマイク」で録った方が良い音が録れるので、下の写真のようにマイクスタンドでピアノを囲うのですが、弾くときと弾き終わったあと、ジャングルジムのようにそこをすり抜けて行くのがいつも大変です(笑)。

マイクスタンドでピアノを囲う

 最後は歌とコーラス。これも自分で録音まですべて行います。主旋律の歌をふたつ重ねる「ダブルトラック」にすることが多いのですが、テイクをいくつも重ねてから選び、気に入ったふたつのトラックにまとめています。このマイクのメーカーはドイツ製のNEUMANN(ノイマン)。高価ですが商業スタジオにも必ず置いてあり、歌ったままの素直な声が録れるお気に入りの1本です。

NEUMANN(ノイマン)

 さて、そんな僕のアルバムは、今年2015年の春に発売予定です。発売日が決まったらまたお知らせしますので、完成したあかつきには、ぜひ聴いてみてください。TwitterFacebookでも、随時レコーディング・レポートをしていますので、そちらもぜひ!




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