浜松に続き、7/29に行われた「きこえる・シンポジウム 2012 夏」東京編をお送りします。会場はここ数回恒例となっている、下北沢 WORKSHOP LOUNGE "SEED SHIP" 。今回はゲストに、神戸を本拠地として活動するNPO法人プラス・アーツの永田宏和さんをお迎えして、「地震ITSUMO講座」を開講していただきました。
僕らが永田さんをお呼びしようと思ったのは、永田さんが企画をして2007年に出版された「地震イツモノート」という本を、以前からよく読んでいたからでした。
「1995年に阪神淡路大震災を経験しました。その瞬間は何もできませんでした。布団をかぶって『やめてーっ』て叫びましたね。誰かがやってるわけじゃないのに。それから10年経って、神戸市から要請されたあるプログラムを制作するにあたって、半年間、当時のことについて徹底的に聞き取り調査をしたんですね。170人くらいの被災者の方に、お話を聞いたりアンケートを取ったりしながら。その結果、被災地で本当に役立つ話というのが聞けたので、これを本にして皆さんに知ってもらおうと思いました。
まず『95%の法則』というのがあります。5%の人が消防や自衛隊に助けられてて、95%の人が家族や近所の人、もしくは通りすがりの人に助けられている。だから近所付き合いしておかなければ駄目なんです(笑)。それから避難所では、地震が起こって一週間くらいまではとても仲がいいんですよ。同じ傷を負った助け合える同士ですから。でも一週間経つとケンカが始まるんです。物資が届くんですね。人って、何もないときは分かち合うんですけど。それでもやがて落ち着いてくると、周囲の被害にあらためて目が向いて、自分のことで精一杯だったのが他人のことを考えられるようになる。非常事態のなかでもし『正解』があるとすれば、それはみんなで作り上げていくものなんですね。」
永田さんが代表を務めるプラス・アーツは、「イザ!カエルキャラバン!」という防災イベントを2005年から行っており、子どもでも積極的に参加できる「楽しい防災」として新たな潮流を生み出しています。
「カエルのキャラクターがいるんですが、ちょっと工夫するだけで、子供たちが何度も行列になって防災をやってくれて。最初はふざけているように見えたのか、消防の人に結構怒られたんですよ。でも普通にやっても人は来ないんで。自主的に学んで復習してるわけだから、こんなに教育効果が高い題材はないんです。その結果、今では僕が神戸の消防のコンサルティングをしてるんですよ。
クリエイターと協力して、防災のゲームなども幾つか作っています。東日本大震災以後は、『レッドベア サバイバルキャンプ』というプログラムも始めました。地震が起きて何もなくなったときに、木と木を擦り合わせて火をおこせるか、たくさんの料理が作れるか、テントを張れるか、ロープワークができるか。技が出来るとそのたびに『技バッチ』がもらえるので、みんな一生懸命になってます。」
永田さんは無印良品で防災アドバイザーを担当していて、8月中旬から9月まで「ITSUMO MOSHIMO 2012」というキャンペーンをやっているそうです。今年は大切な人に防災グッズを送ろうというテーマで展開しています。「イザ!カエルキャラバン!」は10/6&7に東京・豊洲のガスの科学館で、日本最大規模の防災イベントとして行われるとのこと。どちらもぜひチェックしてみてください。
今後30年以内に首都圏で70%の確率で起こるといわれている、首都直下型地震についてもお聞きしました。
「あらためて地震のメカニズムを知ってください。陸にも海にも、下には岩盤、つまりプレートがあります。分厚い板のようなものですが、それぞれがひしめき合っている真ん中に日本列島があります。海のプレートは1年に10センチくらい動き、陸のプレートというのはあまり動きません。ぶつかってひしめき合うとき、海のプレートの方が質量が重いので、下に潜って引きずり込まれ、湾曲していきます。そのとき陸のプレートが耐えられなくなって、ポキポキと折れていったりするのですが、これを内陸活断層型といいます。阪神淡路大震災はこちらなんです。そうではなくて、耐えられなくなってドーンと跳ね返るタイプが、東日本大震災のプレート境界型。実は、地震にはそのふたつしかないのです。
首都直下はどちらだと思いますか。跳ね返る方なんです。しかも首都の真下でおこるから怖い。東北の地震は、震源が沖合130キロと陸地からは離れていましたから、津波は凄かったけど揺れで倒れたというのはそんなに聞かないですね。
地震の揺れの大きさは、規模(マグニチュード)、震源からの距離、その場所の地盤の状態によって決まります。平野部は地盤がゆるいので、大阪も名古屋も東京も、残念ながら揺れが増幅される傾向にあります。ひどく大きく揺れることは理解しておいたほうがいいですね。阪神淡路大震災はマグニチュード7.3、震源の深さは16キロと浅かったのですが、どちらも近いのではないかと言われています。」
永田さんはこの日何度も「怖いですよね。でもそのままにしません。その出口、つまり対策を今日はちゃんとやります。」と仰っていました。対策=防災、とりわけ防災グッズのことについて、次回たっぷりお届けします。