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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第72回 持続可能な地域づくりに求められる自治体マンの元気力(上)

  • 2010年1月14日

特集/持続可能な地域づくりに求められる自治体マンの元気力(上) [座談会]持続可能な地域をつくる元気力〜環境自治体マンの本音エッセー<最終回>

(座談会参加者)
遠藤 由隆さん(滋賀県野洲市市民協働推進課、前まちづくり政策室)
小林 敏昭さん(長野県飯田市地球温暖化対策課)
村上 奈美子さん(山形県高畠町住民生活課環境推進室)
遠藤 由隆さん
遠藤 由隆さん
小林 敏昭さん
小林 敏昭さん
村上 奈美子さん
村上 奈美子さん
(進行)
GN編集部

元気力とは何なのか?
誰のための元気なのか?

GN編集部 4年にわたる連載の中で元気な自治体職員の実践例がたくさん出ていました。ごみ処理の有料化を含む改革を進めるため、600回の説明会を開催した、100人の職員一人ひとりに声をかけて地域計画づくりに関わってもらったなど。こういう職員の存在が地域を変えるきっかけをつくったのだと思います。また、人づくり、地域を熟知することなどが、自治体と地域住民との交流の秘訣であることも見えてきました。
 皆さんは自治体職員の元気力をどのように理解していますか。

 

小林 多くの自治体に行きいろいろな職員と交流することよって自分たちの力やレベルを感じています。「元気」というと抽象的になりますが、自治体には変わった面白い職員がいるな!というのが率直な感想です。連載の第1回目で書かせてもらいましたが、「その人たちに共通しているものは何か」「その人たちの元気の源は何か」が連載を続ける中で見えてくるのではないかと考えました。
 しかし、「元気力」も本音で書いて欲しいと求めると「本音なら受けないよ」という職員もいたのではないでしょうか。背景には、本音を書くと組織内でブレーキがかかるという心配があったのでしょう。そのような制約の中で、リレーエッセーに登場した元気マンはほんの一部で、他にもすごい人がたくさんいるはずです。

 

遠藤 私は地域政策を進める中で、どちらかと言えば地域の人びとの中に身を置き、地域から学びました。役所内部での政策形成では地域になじまないところがあるので、外に出て市民の声を取り上げる形をとってきました。組織のしばりがあるとなかなか動けません。今まで上司が市長ということでできたことなのかもしれません。
 現場が政策形成の中心ですから、外でも組織内でも全部本音です。ただ、内部では外とつなぐ仕組みがないので、何をする必要があるのかが非常にわかりづらい構造になっています。そこで具体的な政策を地域で続けるためのNPOなどをつくったりして、役所が動かないとできないというのではなく、なくてもできるようなシステムづくりを始めています。

村上 元気というのは、「誰のため、何のために仕事をするのか?」が、頭ではなく心でわかれば、勝手に体が動き出すことではないかと思います。  私が環境のポジションにいるこの8年間で部署名が4回変わっています。公害苦情に対応する環境衛生係から、環境基本条例や計画ができた時は環境対策室になり、その後エコタウン推進室に名称が変わりました。しかしエコタウンは町民にわかりにくいと環境推進室になり、異動はないのですが、辞令だけはたくさん受けました。それだけ環境は日々変化しているのだと思います。

編集部 自治体職員に感じるのは問題意識を自分のテーマとして、解決に向けての強い意欲を持っている人がいることです。組織に安住し、じっとしていても組織人としてはやっていける。小林さんと遠藤さんの自治体マンとしての取り組みを聞くと、アプローチの仕方は違っても、同じ理想を具現化しようとしているように思います。村上さんはもう少ししなやかに弾力的に取り組まれている印象を持ちました。皆さんが自分のこととして取り組んでいるエネルギーを、多くの自治体マンが共有できたら、大きなパワーになるのではないでしょうか。

役所を変える
組織を変えるには

小林 地方へ行けば行くほど役所は、大きな存在です。組織も大きいだけになかなか手強いものです。そういう役所を、中にいる本当に優秀な職員が変えることができたら、その地域も変わるはずです。だから、変えていくには何らかの仕掛けや人が必要です。
 もちろんそんなことをしなくても、組織を飛び出して変えている人もいます。組織というトータルで、すごい力を発揮できるようにするには何が必要かを常に考えています。まだできませんけれど。

編集部 役所の中に自分の仲間づくりというか、同じ志を持った人間づくりについてはあまり考えないのですか。役所の中だけでなくて、外にも仲間がいれば心強いのではないでしょうか?

遠藤 同じような人ばかりつくるのは気持ち悪いですね。そもそも、つくるのではなく、地域で勝手に育つ仕組みがないといけないのではないかと思っています。どこの組織でもそうだと思いますが、その時代や、その時の体制などさまざまな状況の中で自由に解釈して、やるべきことが進められる職場や地域であったらいいなと思っています。大体1%くらい賛同する職員がいればやってこられましたので、変えることはできるのではないかと思います。

村上 まだ社会は男性社会ですし、私の役所の中でも管理職の女性は一人もいません。私がさまざまなことをやり始めたら、後輩が「そんなことをやってもいいのですか?」と心配しました。やはり組織の中にずっといると、何かアイデアを考えついても実行しようと思えない仕組みになっているのではないかと感じます。
 高畠町は人口2万6,000人です。役所はまち一番の大企業ですから、高い給料をもらっている職員への反感のようなものもあるのですが、こちらが本気で飛び込めば本気で応えてくれる人がたくさんいるのです。
 それから、役所は毎年同じことを繰り返しがちです。同じことをやれば同じ結果しか出ないのに、違う結果を求めて同じことをやるのはおかしいのではないかと思って、管理職の会議の持ち方などさまざまな提案はしているのですが、ことごとく採用されていません。小林さんに会って「組織の中で組織を変えよう」という話を聞いた時に、私ももう少し組織の中に目を向けて、変える努力をしようと思いました。

小林 遠藤さんはずっと政策部門にいましたけれど、行政の組織には管理部門や窓口などルーチンワークのような業務もあります。新しいものが多く、課題を前に進めていくという政策部門は注目が集まり、楽しいかもしれませんが管理部門でもちょっとした視点・工夫で楽しくなることはたくさんあるのではないでしょうか。
 私も環境課から下水道の経理に異動した時に、数字ばかりの資料をスクラップして見やすくしたりすることも、結構やりがいもあり、楽しい仕事でした。しかし、役所は、異動してしまうと縁やつながりが途切れてしまいがちですが、自分のやりたいことはNPO活動や今までのネットワークの中で実現できるものなのですね。

編集部 遠藤さんのような人は組織の中では異端児ですよね。民間にもいますよ。わがままを通してしまう人。そして周囲は遠藤さんを生かすためにはこれしかないだろうと思うのでしょうね。良い上司に恵まれた可能性もあるかもしれませんが、やはり自分の努力でしょうね。結果も残しているのだと思います。でも遠藤さんがおっしゃった1%の仲間では組織を変えるのはちょっと大変で、やはりもっと多くの仲間づくりが必要なのではないですか。

遠藤 気持ちの問題でして、とりあえず1%あったら頑張れると思います。20%なければだめだと思わず、1%あれば動き出してみようと思うのです。

村上 組織の中や外に、一人でも理解者がいると頑張れますね。

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