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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第68回 持続可能なパーム油認証の最新動向

  • 2009年9月10日

第67回 特集/持続可能なパーム油〜実践に向けた可能性と課題
持続可能なパーム油認証の最新動向
RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)顧問
M.R.チャンドランさん

無断転載禁じます

世界にとってのパーム油の重要性

 スーパーマーケットで販売されている商品の7割がパーム油やその派生物を含んでいる製品です。アブラヤシから効率的に採取できるパーム油は、大豆や菜種油などより10倍以上の生産性を持ち、栽培に必要な土地は少なく済みます。
 インドネシア、マレーシアでは、アブラヤシの栽培が拡大し、世界の87%を占める主要な生産国となっています。タイ、コロンビア、ナイジェリア、エクアドル、パプアニューギニアも生産していますがまだ少量です。ブラジルなどはアブラヤシの栽培を増やそうとしています。
 パーム油は世界の150以上の国で食糧、そしてエネルギーの供給源として消費されています。栄養面、健康面での有益性もありますし、代替燃料源であり生産性が非常に高い油です。
 1996〜2007年の10年間のパーム油の消費量を比較すると、14%から27%に大きく伸びています。同じ10年間の世界人口の伸び15%に対して、油脂の消費量は54%も伸びています。パーム油の貿易は160%上昇し、供給量も1,700万tから3,800万tへと大きく伸びました(表)。GDP、人口、そして植物油の消費量が一番大きく伸びているのは中国、インドネシア、メキシコ、ブラジル、インドなど人口の多い途上国です。
 世界の油脂需要はこれからどうなるのか。世界保健機関(WHO)の予測では、2020年に世界人口は78億人になり、一人あたりの標準油脂摂取量は30kgに、2億3,400万tの生産量が必要になると予測しています。2005年の生産量1億4,900万tと比較すると、生産量を8,500万t増加しなければなりません。
 それをどこでまかなうかというと、生産効率が良くて生産性が高いアブラヤシとなります。世界の油脂需要を後押ししているのが中国、インドなど途上国の経済成長です。パーム油の生産はそれら需要に応えるために今後急増すると思われます。

10年間の人口と需要の変化
  1996/1997 2001/2002 2006/2007 10年間の
増加率
人口 58億人 63億人 67億人 15%
油脂消費量 9,980万t 1億2,070万t 1億5,360万t 54%
パーム油の供給量 1,700万t 2,500万t 3,800万t 123%
パーム油の取引量 1,170万t 1,860万t 3,030万t 159%
バイオディーゼルの生産量 - - 1,000万t  


なぜ持続可能なパーム油か?

 一部のNGOが、森林の破壊など環境劣化を起こしたのはパーム産業であると非難しています。こういう問題にしっかりと取り組まなければ大きな打撃を与えることになりますし、一般消費者はそれを目の当たりにするでしょう。現在の消費者は、非常に敏感で意識が高いため、外食産業、小売業者も消費者の声に反応し、よりしっかりとした形での管理が求められています。
 原生林が広がっていた森に開発が進めば、野生生物が動き回るための回廊もありません。洪水が起きたらアブラヤシ農園そのものも破壊されてしまうでしょう。これは無責任な開発だと言えると思います。
 では、なぜ持続可能なパーム油なのか? まずアブラヤシの栽培における社会的問題があります。土地の所有権に絡む対立、労働者の権利と条件、そして小規模の自作農家の処遇をどうするか——という問題があります。それから環境における問題。森林、気候変動、生物多様性の消失にどのように取り組むのか。何百万人もの人たちがパーム油に依存して生活しています。100万人以上が労働者として関わり、300万人以上の小さな自作農家があります。
 持続可能なパーム油に関する円卓会議(RSPO)は、当初7人のメンバーによって2003年に設立されました。複数のステークホルダーが参加し、持続可能なアブラヤシ製品の発展と利用を国レベルではなくて世界基準で推進しようと考えました。土地所有者や農場労働者、そして自作農家の権利を尊重しています。そして新しいアブラヤシ農園を作るために高い保護価値のある原生林を犠牲にしないということを決めています。
 持続可能なパーム油とは八つの条件にあったものと定義しています(表)。(1)透明性(2)合法性(3)経済的実行可能性(4)ベスト・プラクティス(5)環境的責任(6)コミュニティに対する責任(7)グリーンフィールドの開発(責任ある新規栽培)(8)継続的な改善です。これが持続可能なパーム油認証の基礎となります。また、39の基準があり、さらに国ごとの法律に沿って解釈した基準が、インドネシアの場合ですと139あります。行動指針も会員向けにつくっており、独立した認証機関も設けられています。そしてサプライチェーンそのものの認証システムもあります。
 現在RSPOには360の会員がいます。アブラヤシの栽培者、パーム油の加工業者、取引関係者、銀行や投資家もメンバーになっています。会員のほとんどが加工業者や取引業者です。
 認証を受けた農場は現在収益を上げています。これは大変重要なポイントです。認証を受けるためにはコストもかかるため、それに対するプレミアムを受けています。去年の9月2日に初めての取引が完了しました。12の認証団体があり、認証されたのは35万haになります。四つのサプライチェーンの認証システムが運用中で、150万tのRSPO認証されたパーム油の供給が可能になりました。
 今後のRSPOの抱負については、まずは認証済みの油の供給量を増やすことです。そして、それに対する認証済みの油の需要を増やし、さらにRSPOのメンバーも増やしていくことです。日本からも中国からもそしてインドからもより多くの人に会員になってもらいたいと思っています。また、政府にも参加してもらいたいと思っていますし、小さな自作農家への啓蒙活動も進めたいと思っています。
 先のことになりますが、2009年末までに300万tが認証済みになる予定です。これは世界の総供給量の約8%になります。最終的な目標は世界で作られているパーム油がすべて持続可能な方法で生産されることです。

RSPOの原則と基準(P&C)
原 則 基準の数
1.透明性に対するコミットメント 2
2.適切な法規制の順守 3
3.長期の経済的・財政的実行可能性に対するコミットメント 1
4.栽培者及び加工業者による適切なベスト・プラクテイスの利用 8
5.環境的責任及び天然資源と生物多様性の保全 6
6.被雇用者及び個人、栽培者と加工業者によって影響を受けるコミュニティーに関する責任ある配慮 11
7.責任ある新規栽培の開発 7
8.主要な活動地域における継続的な改善を行うコミットメント 1
総数 39


(グローバルネット:2009年3月号より)

 

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